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遺言がある方へ

1 遺言がある場合のフローチャート

2 遺言書の存否の確認

相続の問題が発生した場合には、まず被相続人が遺言を遺しているかどうかを確認する必要があります。

被相続人が遺言書を遺していることを、周囲の方に伝えていないこともありますので、お手元にない場合であっても、まずは一度探してみていただけるでしょうか。

遺言書は、相続人以外の第三者(親しい知人や弁護士等の専門家、金融機関等)に預けられていることもあります。

また、銀行の貸金庫に預けられていることもあります。

なお、公正証書遺言であれば、当該遺言に利害関係を持つ方の求めがあれば、公証人役場から検索することが可能です。

【貸金庫の開扉】

被相続人が契約した金融機関の貸金庫に、遺言書や相続財産が明らかになる資料が保管されていることがあります。

相続開始後、相続人が貸金庫の開扉を求めるためには、共同相続人全員が実印をもって銀行で定められた書式に署名する必要があることが一般的です(但し、金融機関によっては手続が異なることがありますので、事前にお問い合わせする方がよいでしょう。)。

なお、相続人全員が開扉に合意しない場合には、金融機関は貸金庫の開扉には通常応じません。この場合にも、公証人に開扉点検の嘱託をし、事実実験公正証書を作成してもらう方法を金融機関に申し入れることで、解決できることもあります。

【遺言の検認】

公正証書遺言の場合を除き、遺言書の保有者は、相続開始後遅滞なく家庭裁判所に検認の請求をしなければなりません(民法1004条1項・2項)。

検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言執行前に遺言書を保全し、後日の変造や隠匿を防ぐために行う手続です。遺言が有効かどうかを確定するものではないことにご注意ください。

検認手続は、相続人全員に通知の上で行われますので(但し、相続人全員が出席する必要はありません)、相続人全員の住所を調査する必要があります。

3 遺言書の種類

遺言書には、遺言者の事情に応じて、以下の7つの種類があります。

このうち、主に問題となる遺言書は、「普通方式」の①自筆証書遺言(民法968条)、②公正証書遺言(民法969条、969条の2)、③秘密証書遺言(民法970条〜972条)になります。

この3つの遺言書の方式を比較すると、以下のようになります。

普通方式

方式

筆者

証人・立会人

署名・押印

検認

自筆証書遺言

遺言者

不要

遺言者

必要

公正証書遺言

公証人

証人2人以上の立会

遺言者・証人・公証人

不要

秘密証書遺言

限定なし

公証人及び証人2人以上の前に提出

遺言者、封紙につき公証人・遺言者・証人

必要

4 遺言書の効力の確認

(1) 形式的要件の確認

ア 自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言の場合、民法968条の要件(全文の自書、日付の記載、氏名の記載、押印)を備えている必要があります。

自筆証書遺言では、他の相続人から、筆跡が被相続人本人のものではないと言われることもあります。裁判で筆跡の同一性を判断するためには、筆跡鑑定を行うことになりますので、ほかに被相続人が書き記した物(手紙、日記等)がないか、確認しておく必要があります。

イ 公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合、「2名以上の証人の立会い、遺言者による遺言の趣旨の口授、公証人の筆記と読み聞かせ又は閲覧、遺言者及び証人の承認、署名、押印」が必要とされます。

このように、公正証書遺言は、公証人の面前で作成されるものですから、一応は形式的な要件が備わっているものと考えられます。

もっとも、口授の存否については争いになることがあり、「口授がなかった」として遺言書を無効とした例もあります。

(2) 実質的要件の確認

次に、遺言書の実質的要件を確認する必要があります。

いずれの形式の遺言書であっても、遺言書の作成当時、遺言者が、自分がしようとしている遺言の内容やその意味を理解できる意思能力(遺言能力)を備えていることが必要です(民法963条)(=「実質的要件」)。

形式的要件を備えた遺言書があったとしても、実質的要件を欠けば、この遺言書は無効となります。

但し、形式的要件を備えている以上、この遺言書を無効とするためには、遺言無効確認訴訟を提起しなければなりません

遺言能力を争った裁判は数多く、公正証書遺言であってもその効力を否定した裁判例は少なくありません。

遺言能力の点でお悩みであれば、まずはご相談ください。

5 遺言執行者の選任

遺言執行者とは、遺言者が亡くなり、遺言の効力が生じた後にその内容を実現する事務を行う権限を持つ者です。

遺言者は、遺言によって遺言執行者を指定することもできますが(民法1006条)、被指定者はこれを承諾することも拒絶することもできます(民法1007条)。

遺言執行者を必要とするのに、遺言者の指定がなされていなかったり、被指定者が遺言執行者への就職を拒絶した等で現に遺言執行者がいなかったりしたときには、利害関係人(相続人、相続債権者、受遺者等)の請求によって家庭裁判所がこれを選任します(民法1010条)。

申立人は遺言執行者候補者を挙げることができますが、家庭裁判所は、遺言によって利益を受ける者との間柄等を考慮し、執行者を選任します(家事審判規則125条・83条1号参照)。

6 遺留分を侵害される相続人の確認

遺留分制度とは、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の承継を一定の法定相続人に保障する制度です。

遺留分権を有する相続人を、遺留分権利者と言います。

遺留分権利者は、被相続人の配偶者、子、直系尊属であり、子の代襲相続人も、被代襲者である子と同じ遺留分を持ちます。一方、兄弟姉妹には遺留分はありません(民法1028条)。

遺留分の割合は、民法で以下のように定められています。

① 直系尊属のみが相続人である場合

被相続人の財産の3分の1が遺留分である(民法1028条1号)。

② それ以外の場合

被相続人の財産の2分の1が遺留分である(民法1028条2号)。

ア 配偶者のみの場合

イ 直系卑属のみの場合

ウ 配偶者と直系卑属の場合

エ 配偶者と直系尊属の場合

これを整理すると、遺留分権利者と遺留分の割合・遺留分率は、以下のようになります。

【遺留分権利者と遺留分の割合】

相続人

遺留分

配偶者の遺留分

配偶者以外の遺留分

配偶者

1/2

1/2×1=1/2

直系卑属

1/2

1/2×1=1/2

直系尊属

1/3

1/3×1=1/3

兄弟姉妹

配偶者+直系卑属

1/2

1/2×1/2=1/4

1/2×1/2=1/4

配偶者+直系尊属

1/2

1/2×2/3=1/3

1/2×1/3=1/6

配偶者+兄弟姉妹

1/2

1/2×1/2=1/4

1/2×1/2=1/4

 

【参考事例①:配偶者と子2人が相続人の場合】

配偶者:1/2(遺留分割合)×1/2(法定相続分)=1/4

子 A:1/2(遺留分割合)×1/2×1/2(法定相続分)=1/8

子 B:1/2(遺留分割合)×1/2×1/2(法定相続分)=1/8

 

【参考事例②:配偶者と子2人(うち子Bは非嫡出子)が相続人の場合】

配偶者:1/2(遺留分割合)×1/2(法定相続分)=1/4

子 A:1/2(遺留分割合)×1/2×2/3(法定相続分)=1/6

子 B:1/2(遺留分割合)×1/2×1/3(法定相続分)=1/12

*非嫡出子の遺留分は嫡出子の1/2になります。

 

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