相続放棄・限定承認

【相続放棄とは】

相続放棄とは、相続人が遺産の相続を放棄することを言います。

相続財産の中には、債務のように相続人にとって不利なものもあることから、相続の負担から相続人を解放するため、相続放棄という制度が設けられたとされています。

また、実際に相続放棄が行われる例としては、債務を承継しないようにする場合以外にも、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退する場合などもあります。

 

【相続放棄の効果】

1 効力

相続放棄が家庭裁判所に受理されると、申述人ははじめから相続人とならなかったものとして取り扱われます(民法939条)。

この結果、相続放棄がなされると、他の共同相続人の相続分が増加したり、新たに相続人となる者が現れたりします。

この場合、特に注意しなければならないこととしては、被相続人に債務があった場合、相続放棄の結果、新たに相続人となった者も相続放棄をする必要があるという点です。

 

2 訴訟の受継

被相続人を当事者とする相続財産に関する訴訟(例:被相続人を被告とする貸金返還請求訴訟等)の係属中に被相続人が死亡した場合、相続放棄をした相続人は、はじめから相続人とはならなかったものとみなされるため、訴訟も承継しないことになります。

この場合、相続放棄をしない相続人のみが承継するということになります。

 

3 相続放棄後の相続財産の管理

なお、相続放棄の申述人は、相続放棄後も、新たに相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまでは、相続財産を管理しなければなりません(民法940条)。

 

【相続放棄の手続】

1 申述人

被相続人の推定相続人(民法887~890条)。

複数の推定相続人がいる場合であっても、各推定相続人は単独で相続放棄を申述することができます。

 

2 申述先

相続が開始した地を管轄する家庭裁判所

 

3 申立時期

自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(民法915条1項本文)。但し、例外があることにご注意ください。

 

4 審判

相続放棄の申述を家庭裁判所に提出すると、相続放棄を受理するか、却下するか審判が出されることになります。

 

【限定承認とは】

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済するとの留保をつけた承認を言います(民法922条)。

相続人は、自分の意思で、相続財産を承認するか放棄するかを決めることができますが、限定承認は、相続財産が債務超過となっているか明らかではなく、相続放棄が適当かどうか判断できない場合や、債務超過が明らかであっても、家業の承継等のため相続財産の一部を買い取りたい場合等にメリットがある制度と言えます。

もっとも、実際には、限定承認の利用件数は、相続放棄と比較して、非常に少ない状況です(限定承認889件、相続放棄166、463件。最高裁平成23年司法統計)。

 

【限定承認の効果】

1 有限責任

相続人は、原則として、相続により被相続人の全債務を承継することになります(民法896条)。

ですが、限定承認の申述をした相続人は、相続によって得た財産の範囲内で債務又は遺贈を弁済すれば足りますから、その責任は有限となります。

もっとも、限定承認は、被相続人の債務を被相続人の積極財産の範囲に減少させる効果はありませんから、仮に限定承認の申述をした相続人が自己の固有財産から弁済したとしても、返還を求めることはできません。

 

2 相続人の被相続人に対する権利義務の効果

相続人は、被相続人の一身専属的な権利義務を除いてその一切の権利義務を承継するため、原則として、相続人と被相続人の権利義務関係は混同により消滅することになります。

もっとも、相続人が限定承認をした場合には、相続人の責任が有限責任である関係上、相続人の被相続人に対する権利義務は消滅しなかったものとみなされます(民法925条)。

したがって、被相続人に対する相続人の権利義務は、他の相続債権者や相続債務者と同様の立場で、権利を実現し、義務を負うことになります。

 

【限定承認の手続】

1 申立権者

相続人(民法922条)。

但し、相続人が数人あるときは、共同相続人全員が共同して申し立てる必要があります(民法923条)。

 

2 管轄

相続が開始した地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法201条1項)。

 

3 申立時期

自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(民法915条1項本文)。但し、例外があることにご注意ください。

 

4 審判

限定承認の申述を家庭裁判所に提出すると、限定承認を受理するか、却下するか審判が出されることになります。

 

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