はじめに
「自分の遺産を、できるだけ確実に希望どおりに分配したい」と考える方が増えています。遺言書にはいくつか形式がありますが、中でも公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成するもののため、形式上の不備による無効リスクが低く、紛失や改ざんのリスクもほぼありません。費用はほかの形式と比べてかかるものの、「どうしても遺言内容を確実に実現したい」という方におすすめの方法です。
本記事では、そんな公正証書遺言の基本的なメリットと具体的な作成手続きを解説していきます。ご家族の将来を守るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
Q&A
公正証書遺言を作るのにどれくらいの費用がかかりますか?
公証役場に支払う手数料は、遺言内容や財産額などによって異なります。一般的には、遺産総額が大きいほど手数料が高くなる仕組みです。また、証人2名を用意する必要があり、専門家に証人を依頼する場合は別途謝礼が必要になることがあります。
公正証書遺言はどうやって保管されるのでしょうか?
原本は公証役場で厳重に保管されます。作成した本人は「正本」と「謄本」を受け取りますが、仮に紛失してしまっても原本は残っているため、復元・再発行が可能です。紛失や改ざんのリスクがきわめて低いのが公正証書遺言のメリットです。
病気や高齢で公証役場に行けない場合でも作成できますか?
可能です。公証人に自宅や病院へ出張してもらい、そこで作成する方法があります。ただし、出張料などの追加費用が発生します。体が不自由な場合でも口述で意思を伝え、公証人が文章を作成してくれるため、遺言を残すことは可能です。
公正証書遺言があれば、絶対に遺産分割の争いは起きませんか?
公正証書遺言は形式面での無効リスクをほぼ排除できるものの、内容自体に大きな偏りや不公平感がある場合、遺族間でのトラブルは起こり得ます。ただし、公正証書という公的な裏付けがある分、「形式が無効になる」という論点で争われるリスクはほぼありません。紛争リスクを最小限に抑えるには、弁護士などの専門家と相談しながら、公平性や遺留分なども考慮した内容にしておくことが重要です。
解説
公正証書遺言の作成メリット
- 形式面での無効リスクがほぼない
公証人が法律に則って作成を進めるため、遺言書の方式不備による無効は原則発生しません。 - 紛失・改ざんリスクの低減
公証役場に原本が保管され、遺言者本人が持つ正本や謄本を仮に紛失しても再発行が可能です。 - 立証が容易
公証人という第三者の関与があるため、あとで「筆跡が違う」「書いた時に意思能力がなかったのでは」などの争いが起こりにくいです。
具体的な作成手続きの流れ
- 公正証書遺言のドラフト作成
事前に遺言内容をまとめたメモや、遺産の一覧表を準備します。弁護士に相談しながら作成するケースも多いです。 - 必要書類の準備
- 遺言者の実印・印鑑登録証明書
- 戸籍謄本(本人確認・相続人の確認用)
- 固定資産税評価証明書(不動産の評価額確認用)
- 預貯金通帳の写しなど、その他必要に応じて収集
- 公証人との打ち合わせ・証人の確保
遺言作成時には証人が2名必要です。公証人役場で証人を手配してもらう、あるいは自分で親族以外の2名を用意することも可能です。 - 公証役場での作成・署名押印
公証人にドラフトを読み上げてもらい、内容に問題がなければ署名と押印をします。ここで作成された原本は公証役場で保管され、本人は正本と謄本を受け取ります。 - 作成後の保管・定期的な見直し
公正証書遺言を作成したあとでも、状況が変われば再作成できます。保管場所や、定期的な内容の見直しも忘れずに行いましょう。
弁護士に相談するメリット
- 内容の妥当性と公平性をチェック
一方的な内容であったり、遺留分を無視した分配などをすると、後で相続人同士の争いに発展しやすいです。弁護士はそのようなリスクを事前に指摘・修正してくれます。 - 書類収集や手続きの負担軽減
公正証書遺言にはさまざまな書類が必要ですが、弁護士に依頼すればスムーズに収集・準備を進められます。 - 複雑な事例に対応できる
事業や不動産が多い場合、遺留分の問題や税金対策なども考慮する必要があります。弁護士は税理士や司法書士と連携し、複合的な問題にも対応可能です。
まとめ
公正証書遺言は費用面では他の方式よりも負担がかかりますが、形式の不備や紛失の心配がほとんどないため、「確実に遺志を残したい」「紛争をできるだけ避けたい」と考えている方におすすめの方法です。高齢や病気などで公証役場に行けない場合でも出張作成が可能なので、あきらめる必要はありません。
将来の相続トラブルを回避するためにも、弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家に一度ご相談いただくと、より適切なアドバイスやサポートが受けられます。
リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル
相続問題について解説した動画を公開しています。公正証書遺言の具体的な手続きや、ほかの遺言方式との比較などについても詳しく取り上げています。ぜひ、動画で視覚的に理解を深めていただければと思います。
長瀬総合のメールマガジン
当事務所では、セミナーのご案内や事務所からのお知らせなどを配信するメールマガジンを運営しています。登録は無料で、配信停止もいつでも可能です。
初回無料|お問い合わせはお気軽に
相続問題のその他のコラムはこちら