動産の相続と名義変更の流れ

はじめに

相続財産といえば不動産や預貯金を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、動産も重要な財産のひとつです。自動車や貴金属、美術品、骨董品など、高額になる動産を相続した場合、その扱いに困るケースもあります。さらに、名義変更が必要になる動産もあるため、正しい手続きの流れを把握しなければなりません。

本記事では、動産の相続における基本的な考え方や、名義変更の手順、注意点を解説します。相続が始まり、動産の扱いに不安を感じている方はぜひ参考にしてください。

Q&A

Q1. 動産とは具体的にどのようなものを指しますか?

民法上は「不動産以外の有体物」を指し、代表的な例として自動車、船舶、貴金属、骨董品、美術品、家財道具などが挙げられます。証券類(株式や預金通帳など)は動産とはやや異なる扱いですが、形ある物であれば基本的に動産です。

Q2. 動産にも名義変更は必要ですか?

すべての動産に名義変更があるわけではありませんが、自動車や船舶など登録制度がある動産は名義変更手続きが必要になります。宝石や家電製品などは基本的に所有者の名義登録がないため、相続人の間で誰が取得するか合意すれば問題ありません。

Q3. 動産の相続税評価はどう行われますか?

自動車であれば中古車市場の査定や下取り価格、美術品や骨董品なら専門鑑定士の査定額、貴金属なら相場価格などを参考にします。相続税申告が必要な場合は、公正な評価額を算出できる第三者に依頼することがあります。

Q4. 相続人で話し合って動産の評価額や分配が決まらない場合はどうする?

他の相続財産と同様、家庭裁判所の調停・審判を利用する方法があります。鑑定人を立てて評価額を判断してもらい、それを基に分配案を作成するケースも珍しくありません。

解説

代表的な動産の相続手順

  1. 自動車
    • 相続人を確定し、遺産分割協議書で「自動車は○○が取得する」と決定
    • 自動車検査証(車検証)の名義変更(移転登録)を運輸支局で行う
    • 必要書類:遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書、自動車検査証など
  2. 船舶
    • 小型船舶やプレジャーボートなどは、所管庁(日本小型船舶検査機構など)で名義変更手続きを行う
    • 不動産と同じく「誰が相続するか」を遺産分割協議書で定める必要がある
  3. 貴金属・美術品・骨董品
    • 特定の登録手続きはないが、相続人間での評価・分割が争点になることが多い
    • 相続税申告の際には専門鑑定の評価額を基にする場合がある

名義変更の注意点

  • 法定相続分だけで勝手に名義変更できる?
    相続財産の分割は遺産分割協議で全員の合意を得なければなりません。一部の相続人が勝手に手続きを進めるとトラブルの原因になります。
  • 未成年の相続人がいる場合
    特別代理人を選任するなど、手続きが複雑になるケースがあるため要注意。
  • 共同相続人が多い場合
    車やボートを共有名義にすることは可能ですが、後々の売却や管理が複雑化しやすいです。

評価と分割の方法

  1. 現物分割
    • たとえば「自動車は長男、美術品Aは次男、骨董品Bは長女」といった形で分ける
    • 動産に強い愛着がある場合や、それぞれが希望する物を取得する場合に有効
  2. 換価分割
    • 動産を売却して現金化し、相続人で分割する方法
    • 評価額に相続人全員が納得すれば公平になりやすい
  3. 代償分割
    • ある相続人が動産を取得し、その代わり他の相続人に代償金を支払う方法
    • 高額な美術品などを特定の相続人が取得する際によく用いられる

トラブル事例

  • 評価額への不信感
    「実際はもっと高く売れるはずだ」「業者との裏取引があるのでは」といった疑念が生じ、感情的対立に発展
  • 名義変更を放置
    自動車の名義が故人のままで、交通違反の通知が故人宛に届く、保険手続きができないなどの問題が起きる
  • 共有名義での共同使用
    車を共有名義にしてしまい、使用ルールや維持費の負担をめぐって親族間で揉める

弁護士に相談するメリット

  1. 遺産分割協議書の作成サポート
    動産の分割方法を明確に記載し、将来的な紛争を避けるために必要な条項を整えます。
  2. 評価額の決定と交渉
    相続人間で意見が対立する場合、鑑定人の紹介や交渉の代理など、弁護士が中立の立場で調整役を担います。
  3. 家庭裁判所での対応
    調停や審判に進んだ場合、弁護士が代理人として書類作成や主張立証を行い、依頼者の権利を守ります。
  4. 他士業との連携
    名義変更で必要な専門手続き(自動車の場合は行政書士、鑑定評価の場合は鑑定士など)も、弁護士がネットワークを活かしスムーズに連携できます。

まとめ

動産の相続は、一見すると「単に物を引き継ぐだけ」と思われがちですが、名義変更や評価額の算定など、注意すべきポイントが多く存在します。特に自動車や船舶などは登録制度があり、書類不備や同意不足でトラブルに発展しやすいため、以下の点に留意しましょう。

  1. 相続人全員の合意を得て、遺産分割協議書に反映
  2. 必要な名義変更手続きを怠らない
  3. 評価額をどうするか、換価または現物で分割するかを明確に

動産相続で迷ったときは、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。遺産分割協議から手続き代理まで、円滑に相続を進めるためのサポートをいたします。

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