はじめに
遺留分侵害額請求をする場合、まずは任意交渉によって相手と話し合うことが一般的です。しかし、交渉で折り合いがつかなかったり、相手が取り合わない場合には、裁判所での調停を活用することが有効な手段となります。調停では、第三者(調停委員)が間に入り、公平な立場で合意形成をサポートしてくれます。
本記事では、裁判所で行う遺留分調停の進め方をわかりやすく解説し、調停に必要な書類や期日の流れ、スムーズに合意を得るためのポイントをまとめます。自力で話し合うのが困難な場合、ぜひ調停を検討してみてください。
Q&A
Q1. 遺留分調停はどこに申し立てますか?
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てるのが基本です。場合によっては財産が所在地が絡むこともあるため、事前に管轄を確認しましょう。
Q2. 調停は必ず利用する必要がありますか?
遺留分請求は直接交渉で解決することもできます。しかし、交渉が難航した場合は家庭裁判所の調停を利用するとスムーズです。調停を経ずに訴訟を提起することも可能ですが、多くの場合は調停前置が選択されます。
Q3. 調停はどれくらいの期間がかかりますか?
ケースバイケースですが、3カ月~半年程度で決着することが多いです。複雑な財産評価や強い感情対立があると、さらに長期化(1年以上)するケースもあります。
Q4. 調停で合意できなければどうなる?
調停が不成立になると、民事訴訟(訴訟手続き)を検討することになります。最終的には裁判所が強制的に遺留分侵害額を決定する形となります。
解説
遺留分調停の申し立て手続き
- 申立書の準備
- 家庭裁判所のHPや窓口で「遺留分侵害額請求調停申立書(家事事件手続用)」の書式を入手
- 申立書には相続人の情報、相続財産の概要、遺留分の侵害内容などを記載
- 添付書類の整備
- 被相続人の戸籍謄本(出生~死亡)、相続人の戸籍や住民票
- 遺言書の写し(ある場合)、財産目録、評価資料(不動産評価証明、通帳残高証明など)
- 生前贈与の事実を証明する契約書や振込明細(特別受益)
- 家庭裁判所への提出・費用
- 申立時に収入印紙(手数料)や郵便切手を納付
- 書類一式を窓口または郵送で提出し、受理される
- 第1回調停期日の指定
- 裁判所から呼び出し状が届き、申立人および相手方が調停期日に出頭
調停期日の流れ
- 調停委員による事情聴取
- 原則として個別に話を聞く(斡旋方式)
- 遺留分計算の根拠や財産評価を確認し、当事者の主張を整理
- 相互理解と合意形成
- お互いの言い分を調整し、合意できるポイントを探る
- 必要ならば追加資料の提出や補足説明が求められる
- 複数回の期日
- 1回で決着しない場合は数回の期日を設定。
- 調停成立または不成立
- 成立すれば調停調書が作成され法的拘束力が生まれる
- 不成立の場合は訴訟移行を検討
スムーズに合意を得るポイント
- 事前準備(書類・評価)
不動産や預貯金の評価を明確化し、相手方への説明をしやすくする - 感情的にならない
調停委員がいるので、冷静に法的根拠を示しながら落としどころを探る - 柔軟な提案
金銭一括払いが難しければ分割払い案、または他の資産を渡すなど多角的に検討 - 弁護士の活用
法律や判例に基づいた適切な主張と、戦略的な交渉が可能
調停不成立後
- 訴訟(民事裁判)
別途訴訟として争う道もあるが、最終的に判決により金銭支払いが命じられる場合も
弁護士に相談するメリット
- 申立書や添付書類の不備回避
不十分な記載や誤った評価があると、調停がスムーズに進まない - 論点整理と戦略的交渉
法的根拠(特別受益や寄与分など)を整理し、調停委員にわかりやすく主張 - 感情的対立を緩和
弁護士が代理人として出席し、冷静かつ客観的に話を進めることで解決しやすく - 調停不成立後の訴訟対応
同じ弁護士がそのまま訴訟に移行してサポート可能
まとめ
裁判所での遺留分調停は、任意交渉が失敗したときに第三者の力を借りて合意形成を図る有効な手段です。以下の流れを押さえましょう。
- 家庭裁判所への申立書提出:被相続人の最後の住所地が基本管轄
- 調停期日:調停委員が斡旋し、合意を目指す。必要なら複数回開催
- 調停成立or不成立:成立なら調停調書、不成立なら訴訟へ
- 弁護士のサポート:書類作成、論点整理、交渉・調停代理を行い、トラブルを最小限に
遺留分請求には1年の短期消滅時効があるため、スピード感が重要です。交渉がうまくいかない場合は、お早めに調停を申し立てて解決を目指すのが賢明です。ぜひ、弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家にご相談いただき、法的バックアップを得ながら話を進めてください。
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