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親族間での事業承継トラブル事例
はじめに
多くの中小企業では、社長の子どもなど親族を後継者に据えて事業を継続する「親族内承継」が主流とされています。しかし、家族ならではの感情的対立や、兄弟姉妹間での遺留分問題、会社の経営理念の違いなどによって、承継がスムーズに進まないケースが後を絶ちません。本記事では、親族間で起こりがちな事業承継トラブル事例を紹介し、どのように解決・予防すべきかを解説します。
Q&A
Q1. 親族内承継でよくあるトラブルとは?
- 兄弟姉妹の間で株式の分割がもめる
- 後継者のリーダーシップ不足で従業員や取引先が不安
- 先代経営者と後継者が経営方針で対立し、権限移譲が進まない
- 他の相続人が遺留分を主張し、事業用資産の分配に反発
Q2. 兄弟のうち特定の一人だけが後継者になるのはアリですか?
もちろん可能ですが、他の兄弟が遺留分や公平性を理由に不満を表すケースが多いです。分配をめぐるトラブルを回避するため、代償金を用意したり、遺言書で事前調整を行うなどの配慮が必要です。
Q3. 親族経営だと感情的な衝突が多い印象です。どうやって緩和できますか?
事業承継契約や株主間契約などで、意思決定プロセスや株式譲渡条件を明確に定めるのが有効です。また、弁護士などの第三者が入ると、客観的視点で中立に調整でき、感情的対立を抑えやすいです。
Q4. 親族間トラブルを未然に防ぐ具体的な方法は?
- 早期からの情報共有(後継者候補や株式分配案を家族で話し合う)
- 遺言書の作成(遺留分に配慮して公平感を出す)
- 株主間契約(後継者の経営権を確立しつつ、他の親族の取り分も明記)
- 弁護士など専門家の関与(法的根拠と客観的データで説得力をもたせる)
解説
事例1:後継者への株式集中が兄弟間で対立
【状況】
家族経営のA社。社長が長男を後継者に指名し、株式を集中しようと計画。しかし、次男と長女が「父の財産を独占するのか」と反発。
【問題点】
- 兄弟姉妹が同じく相続人であり、株式をどう分割するかで意見相違
- 従業員や取引先は長男就任を受け入れているが、親族の不満が解消されない
【解決策】
- 遺言書で長男に主要株式を譲る一方、次男・長女に代償金を支払う
- 株主間契約で「経営は長男が行う」と決めつつ、他の兄弟の権利を一部保障
- 弁護士が仲介し、遺留分対策や配当方針をまとめた事業承継契約を締結
事例2:先代と後継者の衝突による権限移譲が進まない
【状況】
創業社長が高齢だが、経営実権を強く握り、新社長(長女)に権限を委譲しない。結果、従業員が「どっちに指示を仰げばいいのか」と混乱。
【問題点】
- 先代の経営理念と後継者の新方針が食い違い、社内で権力が二重化
- 取引先も「方針が安定しない」と不安を抱く
【解決策】
- 事業承継契約で先代の顧問的立場や退任時期を明確化
- 経営上の決定権限を後継者に一元化し、先代はアドバイザリー役に徹する
- 従業員への周知を徹底し、新社長が正式な決裁者であることを明示
事例3:遺留分侵害額請求で事業資産が分割されそうになる
【状況】
長男を後継者にして会社株式を集中する遺言書があったが、二男・三女が遺留分侵害額請求を主張。会社の主要株式を金銭換価しなければならない恐れが出た。
【問題点】
- 会社株式が分割されて経営権が揺らぐリスク
- 現金が少なく、代償金を支払えないと会社が不安定化
【解決策】
- 生前贈与で長男に株を一部移転、同時に二男・三女にも相応の資産を渡す
- 遺留分を見越して代償金の準備をしておき、相続時に速やかに支払う
- 弁護士が遺言書を作成し、遺留分対策として不公平感を減らす工夫
トラブル未然防止策
- 事業承継計画書の作成
5年・10年先を見据えた株式移転、役職移行、相続対策などをまとめる - 早期からの親族会議
親族が顔を合わせ、将来的な事業方針や株式分配を議論 - 専門家チームの編成
弁護士、税理士などを交えた総合的なサポート
弁護士に相談するメリット
- 親族間の感情対立を法的アプローチで整理
感情論になりがちな家族問題を法律的根拠と客観的データで説得 - 株式や資産分配の契約書作成
事業承継契約や株主間契約でルールを明確化 - 遺言書や遺留分対策
生前贈与や遺留分対策を踏まえ、将来の紛争を最小化 - 税理士など他士業との連携
相続税や贈与税、会社の財務分析などもワンストップで対応
まとめ
親族間の事業承継トラブルは、感情面と財産面の両軸で衝突するケースが多く、長期化すると会社運営に悪影響を及ぼします。以下の対策が重要です:
- 早期に後継者を決定し、適性や意欲を確認
- 株式分割や遺留分対策を契約書や遺言書で明文化
- 先代経営者と後継者の役割分担を明確化し、従業員や取引先に周知
- 弁護士を含む専門家との連携で法務・税務リスクを未然に防ぐ
もし事業承継で親族同士が対立しそうな気配がある場合は、お早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所へ相談し、適切な解決策を検討しましょう。
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事業承継での後継者選定の注意点
はじめに
誰が会社を継ぐのか。事業承継において最も重要な問題の一つが後継者選定です。親族内承継では、子どもが必ずしも経営適性を持っているとは限らず、外部からの招聘(M&A含む)も視野に入れる必要があります。後継者選びに失敗すると、せっかくの会社を存続できず、従業員や取引先にも大きな影響を及ぼすことになりかねません。
本記事では、後継者選定の際の注意点と、どのようにベストな後継者を見つけ、円滑に事業を引き継ぐかを解説します。早めの人材育成や親族以外の人材活用など、多角的な視点を持つことが成功のカギです。
Q&A
Q1. 親族内承継のメリットとデメリットは?
- メリット
家族の血縁・信頼関係があり、従業員や取引先が受け入れやすい - デメリット
子や親族に経営能力がなければ事業が行き詰まるリスク。相続税負担など税務面の問題もあり
Q2. 親族外の後継者を探す場合、どんな方法がある?
主に、
- 社内の役員・従業員(MBO)
- 外部からの招聘(業界出身者やプロ経営者)
- M&A(他社や投資家に売却)
などが挙げられます。
Q3. 後継者選定で企業が考慮すべきポイントは何ですか?
- 経営スキルやリーダーシップ
- 会社の理念や文化への理解度
- 従業員・取引先からの信頼感
- 株式譲渡、相続税などの経済面
- 健康状態や年齢、覚悟
が重要となります。
Q4. 後継者選定でよくある失敗例は?
- 経営能力が不足する子息を安易に社長に就任させ、業績悪化
- 社内外の反発で、後継者が孤立し短期間で辞任
- M&Aで買い手とミスマッチが起こり、従業員離職や取引先撤退
などが典型です。
解説
後継者選定の基本プロセス
- 会社の理念・ビジョンの明確化
どのような方向性で会社を存続・発展させたいかをオーナー自身が整理 - 候補者リストアップ
親族内(子、配偶者、兄弟など)、社内(役員・従業員)、外部(専門家・投資家) - 適性・スキルの評価
経営能力、リーダーシップ、人脈、会社の価値観への適合性 - 面談・試用期間
実務を少しずつ任せ、従業員や取引先の反応を確認 - 最終決定と育成計画
決定後も一定期間は先代と並走し、ノウハウや人脈を引き継ぐ
親族内承継と親族外承継の比較
- 親族内承継
- メリット:
血縁で円滑に引き継ぎやすい、会社の伝統・理念を保ちやすい - デメリット
経営スキル不足のリスク、他の親族との遺留分問題など
- メリット:
- 親族外承継
- メリット
経営プロを招くことで業績アップの可能性、適性のある後継者を広く探せる - デメリット
従業員や取引先の抵抗、コミュニケーションコスト、M&Aの失敗リスク
- メリット
後継者育成と引き継ぎのステップ
- 実務経験を積ませる
経営者候補に財務・人事・営業などの部門をローテーション勤務させ、全体を理解 - 徐々に役職を上げる
部長→取締役→代表取締役とステップを踏む - 社内外への周知
従業員総会、取引先への挨拶、経営計画説明など - 先代との交替時期明確化
いつ社長を交代するか、株式移転スケジュールを事前に発表
トラブル防止の具体策
- 明文化
後継者選定の合意内容を株主間契約や事業承継契約として書面化 - 従業員・取引先への説明
不安や反発を和らげるため、計画的に情報を開示し協力を得る - 株主や親族との調整
遺言書を作成し、遺留分や相続税対策を早期から行う - 弁護士・税理士・コンサルタントの活用
法務・税務・経営全方位からサポートを受け、スムーズに進める
弁護士に相談するメリット
- 後継者選定時の利害調整
親族内で意見対立がある場合、弁護士が法的根拠を示しながら仲介 - 株式譲渡や贈与契約書の作成
後継者への株式集中を進めるうえで、契約内容を明確化し紛争回避 - 遺言書や遺留分対策
相続時にトラブルにならないよう法的に公平感を保つ支援 - 取締役会や労務管理
代表交代時の会社法手続き、就業規則の見直しなど総合的にサポート
まとめ
後継者選定は、事業承継の成否を左右する重要なステップです。以下のポイントを押さえてください。
- 親族内承継か親族外承継かを早期に判断
- 候補者の経営適性、会社の理念への理解、従業員・取引先の納得度をチェック
- 株式移転や役員交代など法的手続き、税務面の対策も並行して計画
- 弁護士の活用で契約書(株主間契約、事業承継契約)を整備し、トラブルを防ぐ
先々のスムーズな経営継続のため、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。後継者の育成・選定から契約書の整備、周囲への説明等をサポートいたします。
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会社契約と事業承継契約の重要性
はじめに
事業承継をスムーズに進めるためには、単に株式を引き継ぐだけでは不十分です。会社の経営権、役員構成、取引先との契約関係、ノウハウや知的財産など、多角的な視点で契約を整理し、明文化しておく必要があります。特に、会社契約や事業承継契約を活用することで、当事者間の権利義務を明確にし、後からの紛争を防止する効果が期待できます。
本記事では、会社契約と事業承継契約の重要性を取り上げ、事業承継で押さえるべき契約のポイントやメリットを解説します。会社規模を問わず、大切な事業の未来を守るためにぜひご一読ください。
Q&A
Q1. 会社契約とは何ですか?
会社の内部ルールや外部取引について、契約書で明文化したものを指します。定款だけでなく、株主間契約、経営者間契約、取引先との契約など、企業運営に必要な法律関係を整理した各種契約書が広義の「会社契約」と言えます。
Q2. 事業承継契約はどのような内容ですか?
後継者が経営権を引き継ぐ際、株式譲渡や役員交代、競業避止義務、ノウハウ移転などをまとめた契約を「事業承継契約」と呼ぶことがあります。法的には複数の契約要素(売買、贈与、業務委託など)が複合的に含まれる場合が多いです。
Q3. なぜ契約書が重要なのでしょう?
口頭の約束では後から解釈が違うなどトラブルが起こりやすいです。契約書で明確な条項を定めておけば、当事者間の認識差を最小化し、紛争や訴訟を未然に防ぎやすくなります。特に事業承継は利害関係が複雑なので、契約書による予防法務が不可欠です。
Q4. 弁護士に依頼すると何がメリットですか?
弁護士は、会社法・民法・労働法など多岐にわたる法律を踏まえ、漏れのない契約書を作成できます。トラブルリスクを洗い出し、具体的な条項で対策し、後継者や株主、従業員が安心して次のフェーズに進める契約を整備してくれる点がメリットです。
解説
会社契約で整備すべき項目
- 定款の見直し
- 事業目的、株式の譲渡制限、取締役会の有無などを現実の事業実態に合わせる
- 株主間契約
- 大株主同士で議決権行使や株式売買の条件、競業避止を定める
- 事業承継で後継者に株を集中させるための優先交渉権や売却価格のルール
- 取引先との基本契約
- 主要な取引先や仕入先との契約書を見直し、後継者交代に伴う影響を明確化
事業承継契約の主要ポイント
- 株式譲渡・贈与の条件
- 譲渡価格、支払い方法、代償金の有無など
- 相続税や贈与税の対策も考慮
- 経営権と役員構成
- 代表取締役を後継者に変更する時期、取締役辞任のタイミング、株主総会決議などの手順
- ノウハウ・知的財産の移転
- 商標権や特許権、秘密情報の保護をどう扱うか
- 競業避止義務を設定し、先代が退任後に競合となるリスクを防ぐ
- 従業員の継続雇用・待遇
- 後継者交代で労働条件を維持する契約を社員と結ぶかどうか
契約締結の流れ
- 事前相談・合意形成
- オーナー経営者と後継者(親族内 or 外部)で大筋の合意
- 弁護士や税理士が財務・法務面のリスクをチェック
- ドラフト作成
- 弁護士が事業承継契約や株主間契約の案文を起案
- 当事者間で修正交渉
- 契約締結・署名捺印
- 定款変更や役員変更が必要な場合は、株主総会決議・登記申請を行う
- 事業承継の実行
- 株式譲渡・譲渡対価の支払い、ノウハウ移転のスケジュールなどを順次実施
トラブル防止のための注意点
- 家族間の口約束を避ける
特に親族承継の場合、口頭合意だけでは後継者周りや兄弟の遺留分問題で紛争化する - 株式売買価格や支払い方法を明記
後継者に資金がない場合は分割払い、代償金など契約で明確化 - 経営者保証の解除・切り替え
銀行の保証人が前代表のままだとリスクが残るため、後継者との交渉が必要 - 秘密保持条項
自社のノウハウや顧客情報が外部に漏れないよう、退任者に対する秘密保持・競業避止を契約で定める
弁護士に相談するメリット
- 抜け漏れのない契約書作成
会社法や商法、税法などの専門知識をフル活用し、万全な内容に - 利害調整と説得力
オーナーと後継者、株主、従業員など多数の当事者を説得する際、法的根拠に基づき公平感を示せる - 紛争予防
曖昧な取り決めを排除し、将来の争点をあらかじめ契約に盛り込む - 専門家ネットワーク
税理士や社会保険労務士とも連携し、ワンストップで対応
まとめ
事業承継を円滑にするうえで、会社契約や事業承継契約を整備することは重要です。以下のポイントを意識しましょう。
- 定款や株主間契約など会社内部ルールを最新化し、経営権移行を明確に
- 事業承継契約で株式譲渡、競業避止、ノウハウ継承など具体的条件を定める
- 従業員・取引先への周知や、相続税対策も含めた総合的アプローチ
- 弁護士を活用し、法的リスクを未然に防止
オーナー経営者がスムーズにバトンを渡すためにも、弁護士法人長瀬総合法律事務所へお気軽にご相談ください。各専門家とも連携しながら、会社の未来を支える最適な契約スキームを構築いたします。
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株式の相続と分割方法
はじめに
被相続人が自社株式や上場株式を保有していた場合、相続が始まるとその株式を誰がどのように承継するかが大きな争点となります。特に非上場会社の株式は評価額が不透明で、相続税も含めて複雑な問題を引き起こしがちです。そこで本記事では、株式の相続と分割方法について、上場・非上場株式の違いや相続税評価の基本、分割パターンなどを解説します。
Q&A
Q1. 上場株式と非上場株式の相続で何が違うの?
上場株式は相続開始時の時価(終値など)を基に評価しやすく、分割もしやすい傾向にあります。非上場株式は市場価値がなく、株式の評価方法(類似業種比準方式など)が複雑で、経営権の問題なども絡むため、相続争いが起こりやすいです。
Q2. 非上場株式はどのように評価しますか?
税務上の評価方法として、原則「類似業種比準方式」や「純資産方式」などが使われます。会社の規模や事業内容によって細かな計算式があり、税理士や弁護士と連携しながら行うことが多いです。
Q3. 株式を分割する際の方法は?
一般的には、
- 現物分割
株式をそのまま相続人に配分 - 換価分割
株式を売却して現金化し、分配 - 代償分割
ある相続人が株式を取得し、他の相続人に代償金を支払う
などが考えられます。非上場株式の場合、売却が困難なため代償分割が多用されることが多いです。
Q4. 事業承継に絡む株式相続は特別な問題がありますか?
事業承継の場合、会社の経営権を誰が握るかが大きな問題です。また、非上場会社だと自社株評価が高額になると相続税負担が大きくなり、事業継続が危うくなることがあります。そのため、事前に株式の移転計画や相続税対策を行うことが重要です。
解説
株式相続の基本
- 相続税評価
- 上場株式:相続開始日(死亡日)の終値や一定期間の平均株価などで評価
- 非上場株式:類似業種比準方式、純資産方式などを駆使して算出
- 相続税申告
- 株式を含む遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えれば相続税申告が必要
- 法定相続分と遺言書の有無
- 遺言書があればその指定が優先。ただし遺留分に注意
分割方法とポイント
- 現物分割
- 相続人ごとに株数を割り振る
- 非上場株式で議決権が分散すると、経営方針が不明確になるリスク
- 換価分割
- 株式を売却し、現金化したうえで分配
- 上場株式は売却が容易だが、非上場だと売却先を探すのが難しく時間がかかる
- 代償分割
- 後継者が株式を全取得し、他の相続人に代償金を払う
- 事業承継で多用される手法だが、代償金を用意するために資金調達が必要になる
事業承継を含む非上場株式の対応
- 後継者への株式集約
- 経営権を安定させるため、後継者が過半数以上の株式を取得するのが一般的
- 株式評価額の軽減対策
- 中小企業向け事業承継税制の特例など、納税猶予や免除制度を活用
- 贈与税・相続税の負担を抑えるスキームを検討
- 遺留分対策
- 親族が多い場合、子どもたちの遺留分が発生し、後継者に株式を集中しにくい
- 遺言書で公平感を保ち、代償金を支払う仕組みを整える
手続きの注意点
- 名義変更・証券会社手続き
上場株式は証券会社での相続手続きが必要(戸籍、遺産分割協議書などが要る) - 非上場株式の議決権行使
相続手続き完了まで、誰が株主として決議に参加するのか問題となる場合がある - 相続税申告と納税
申告は死亡から10カ月以内、分割が未定なら未分割申告+後日更正の請求
弁護士に相談するメリット
- 株式評価と分割方法の提案
税理士や公認会計士とも連携し、上場・非上場株式の評価額を確定。最適な分割案を示唆 - 遺言書や遺留分対策
事前に遺言書を作成し、後継者に株式を集中させる際の法律面でのサポート - 株主間の紛争回避
兄弟姉妹が株を巡って争う場合、弁護士が調整役となり、代償分割や譲渡契約を円滑に - 相続税対策
事業承継税制の特例利用をはじめ、税理士と協力して納税負担を軽減するプランを構築
まとめ
株式の相続では、上場株式か非上場株式かで対応が大きく異なります。特に事業承継が絡む非上場株式は、経営権や相続税負担、遺留分問題などが複雑に絡み合うため、早期から専門家と計画を立てるのがベストです。以下のポイントを押さえましょう。
- 株式の種類(上場・非上場)や評価方法を把握
- 遺産分割方法:現物分割・換価分割・代償分割などを検討
- 事業承継:後継者へ株式を集中させる場合、遺留分や納税対策が必須
- 弁護士に相談:法務・税務・経営の視点から総合サポート
株式相続や事業承継でお悩みの方は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。税理士や会計士と連携し、円滑な株式移転と紛争予防をサポートいたします。
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事業承継の基礎知識と準備の進め方
はじめに
中小企業や家族経営の会社で、後継者不在が深刻な課題となっています。事業承継は、後継者の選定から株式や資産の引き継ぎまで、法務・税務・経営など多角的な準備が必要です。「そろそろ引退を考えているが、息子に会社を継がせるのか、それとも外部の人材を呼ぶのか」「株式をどのように分配するか」――こうした問題に直面した際、早期からの計画的対策が不可欠と言えます。
本記事では、事業承継の基礎知識と、具体的にどのように準備を進めていくべきかを解説します。会社の将来を円滑にバトンタッチするためのポイントを押さえ、後継者と従業員や取引先との信頼関係を円満に維持しながら進める方法を学びましょう。
Q&A
Q1. 事業承継とは何ですか?
企業オーナーや代表者が経営権や資産、ノウハウを後継者に引き継ぐことを指します。自社株式の移転や役員の交代、債務保証の引き継ぎなど、多方面にわたる手続きが必要になります。
Q2. 事業承継でよくある失敗例は?
代表的には、
- 後継者選びが遅く、代表が病気や高齢で突然引退
- 株式や資産の分割が不明瞭で、相続争いや税務リスクが発生
- 従業員や取引先への周知不足で取引関係が悪化
などが挙げられます。
Q3. 事業承継の準備にはどれくらい時間がかかりますか?
一般的に、3~5年程度かけて計画的に進めるのが望ましいとされています。後継者の育成や株式移転、金融機関との交渉などを考えると、さらに時間を要するケースもあります。
Q4. 弁護士に依頼すると何が変わる?
弁護士は、会社法・相続法などの観点から、事業承継に伴う法的リスクを分析し、株式の分割方法や遺言書の作成、契約書の整備などをサポートできます。トラブルを未然に防ぐだけでなく、後継者との合意形成もスムーズに進められるでしょう。
解説
事業承継の種類
- 親族内承継
- 現経営者の子や親族を後継者とする。血縁を基盤に従業員や取引先が納得しやすい反面、子に経営能力がない場合はリスク
- 親族外承継(M&Aなど)
- 社内の役員や従業員に引き継ぐMBO、または外部企業や投資家に売却(M&A)
- 経営スキルを持つ外部人材に託すことで事業拡大が見込めるが、従業員や取引先の理解が不可欠
- 公的支援制度の利用
- 中小企業庁や各都道府県の事業承継ネットワークなどの相談窓口
準備のステップ
- 後継者選定
親族内か外部かを判断し、後継者の経営能力や意欲を確認 - 株式・資産の把握と移転計画
自社株式の評価、分割、遺言書作成などの相続対策 - 経営権の継承と実務引き継ぎ
代表権の移動、役員変更登記、取引先や金融機関との対応 - 従業員・取引先への周知
信頼関係を保ちつつ、スムーズにバトンタッチするためのコミュニケーション
事業承継で重要なポイント
- 株式の集約
- 複数の親族や役員が株を分散していると、意思決定が複雑化
- 後継者が過半数を握るなど、経営権を明確に
- 相続税・贈与税対策
- 自社株評価が高額になると、相続税負担が大きい
- 税理士や弁護士と連携し、贈与や遺言、特例制度を駆使
- 事業用資産・不動産の処理
- 事業で使う不動産や設備は、会社所有か個人所有かを整理
- 債務保証や担保など金融機関との協議も必要
- 外部専門家の活用
- 弁護士、税理士、経営コンサルタント、不動産鑑定士などの連携
失敗を防ぐための心構え
- 早めの着手
経営者が元気なうちから準備すれば選択肢が広がる - 情報共有
従業員や取引先、金融機関に計画的に情報を開示し、不信感を防止 - 書面化・契約書整備
株式譲渡契約や遺言書など、法的根拠を明確に - 専門家に相談
難解な会社法・相続税法を踏まえ、最適な承継プランを立案
弁護士に相談するメリット
- 法的リスク回避
遺留分問題、相続人間の対立、株式紛争などを防ぐ - スムーズな承継計画の立案
会社法や税法の観点を踏まえ、後継者や株式移転を円滑に - 必要書類の作成・チェック
株式譲渡契約、遺言書、定款変更、取締役会資料などを作成 - 対外説明・交渉サポート
取引先や金融機関、従業員への説明支援や契約交渉を代理
まとめ
事業承継は、企業の将来を左右する重大プロジェクトです。以下のステップを押さえておきましょう。
- 後継者の選定:親族か、社内外か、M&Aか
- 株式・資産の移転計画:相続や贈与、遺言書による対策
- 経営実務の引き継ぎ:新旧経営者間でノウハウ共有、従業員や取引先への周知
- 税務・法務対策:相続税、贈与税、会社法上の問題を専門家と検討
早めに取り組むことで、家族間の争いや取引先の不安を軽減でき、円満なバトンタッチが実現しやすくなります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、税理士等とも連携し、事業承継をトータルサポートいたします。
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未成年者の相続放棄における注意点
はじめに
相続人の中に未成年者が含まれる場合、借金などのマイナス財産があるなら相続放棄を検討したい状況もあり得ます。しかし、未成年者には法律上行為能力に制限があるため、親権者や特別代理人を通じて手続きを行う必要があるなど、通常の相続放棄とは異なる注意点があります。
本記事では、未成年者の相続放棄について、どのように手続きを進め、どこに気を付けるべきかを詳しく解説します。未成年のお子さんが相続人となっている場合に備え、正しい知識を身につけてください。
Q&A
Q1. なぜ未成年者だと親権者が代わりに手続きできるの?
民法上、未成年者は法定代理人(親権者)による代理行為が必要です。相続放棄のような重要な法律行為も、親権者が子の代わりに申述するか、特別代理人が選任されるかして進めます。
Q2. 親権者が借金を負う場合、利害相反になりませんか?
たとえば、親と子が共同相続人で、親は相続を継続し、子は放棄したいというとき、利害相反の恐れがあります。その場合、裁判所に特別代理人を選任してもらい、未成年者の相続放棄手続きを行う必要があります。
Q3. 手続き期限(3カ月)は同じですか?
はい、未成年者であっても、相続の開始を知った時から3カ月という熟慮期間は同じです。ただし、親や特別代理人が手続きを把握していないと過ぎてしまう危険があるので注意が必要です。
Q4. 特別代理人ってどうやって選任されるの?
家庭裁判所に特別代理人選任の申立を行い、裁判所が客観的に見て適切な代理人を選任します(親族や弁護士など)。利害相反の状況があるときに用いられる方法です。
解説
未成年者の相続放棄における基本フロー
- 相続開始後、親権者が財産を調査
借金や保証債務の有無を確認 - 親権者が代理で相続放棄申立
原則として、親が子の代理人となり、家庭裁判所へ申述 - 利害相反があれば特別代理人を選任
親や法定代理人が相続を希望し、子どもには放棄をさせたいなどの状況が典型 - 家庭裁判所の審理
不備がなければ受理通知書が発行され、未成年者も相続放棄が成立
利害相反の具体例
- 親は相続の継続を希望、子は放棄したい
借金とプラス財産が入り混じり、親が単純承認をする一方で子には負債を負わせたくない場合 - 相続財産を巡る意見の違い
子どもの取り分が少ないまたは借金のみといった状態で、親の意思と衝突 - 親が債権者
親が故人に金銭を貸していたなどの状況で、子が相続人になると利害がぶつかる
手続きで注意すべきポイント
- 法定単純承認のリスク
子が放棄を選ぶ場合でも、親や代理人が財産を処分すると、放棄が無効になる - 期限管理(3カ月)
親や代理人がうっかり遅れると、未成年者も放棄できなくなる - 書類の正確性
未成年者の戸籍、親権者の戸籍や住民票、利害相反状況を示す書類など - 特別代理人選任が必要かどうか
親が同時に相続人となっており、相続方法が異なる場合に注意
実務上の流れ(例)
- 親権者が子の代理で相続放棄を申述
特に利害相反がなければ、これで手続き可 - 利害相反の恐れがある場合
裁判所に特別代理人を選任してもらい、その代理人が子の相続放棄を申述 - 申述受理
照会書が届けば回答し、問題なければ受理通知書が交付 - 放棄後の財産使用に注意
子がいる家庭であっても、放棄した財産の処分はNG
弁護士に相談するメリット
- 利害相反の有無判断
親が代理できるか、特別代理人が必要か、弁護士が法的に判定 - 書類整備と短期決着
未成年者の戸籍関係、家庭裁判所申立書などを迅速に作成 - 相続人全体の状況把握
親を含めた家族全員の相続状況を整理し、トラブルを避ける - 財産調査と法定単純承認の回避
不要な処分行為を防ぐアドバイスで、子の放棄を確実に成立
まとめ
未成年者が相続放棄を行う場合は、親権者または特別代理人が手続きを進め、家庭裁判所の許可を得る必要があります。特に留意すべき点は以下のとおりです。
- 利害相反の確認
親が単純承認を選ぶ一方で子が放棄を希望するなど矛盾があれば、特別代理人を選任 - 3カ月の熟慮期間
未成年者であっても期限は同じ。親や代理人がしっかり管理 - 処分行為の禁止
放棄前後に故人の財産を積極的に使うと放棄が無効 - 弁護士のサポート
書類作成から利害相反の判断、財産調査などをトータルにサポート
もし未成年の子が相続人として借金を背負う可能性があるなら、早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家へご相談ください。家族全体の状況を踏まえ、最適な相続方法をご提案いたします。
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相続放棄が有効にならないケースの具体例
はじめに
「相続放棄の手続きは済ませたはずなのに、いざ後になって借金を請求されてしまった…」そんな事例が起こる原因の一つに、「相続放棄が実は有効ではなかった」という場合があります。相続放棄には3カ月の期限や処分行為の禁止など、いくつかの要件があり、1つでも満たしていないと最終的に「法定単純承認」となり、放棄が無効化してしまうのです。
本記事では、相続放棄が有効にならないケースの具体例をいくつか挙げながら、その原因と対策を解説します。「もう放棄したから大丈夫」と安心していても、思わぬ落とし穴があるかもしれません。
Q&A
Q1. 相続放棄が無効になるパターンとして、具体的にどんな行為がありますか?
主に、
- 3カ月の熟慮期間を過ぎている
- 相続財産を処分した(車を乗り続ける、預金を引き出すなど)
- 裁判所の書類不備や回答の不正
などが挙げられます。
Q2. 葬儀費用の支払いは「処分行為」にあたるのでしょうか?
通常、葬儀費用の支払いは「相続財産を積極的に使用した行為」には当たらないとされることが多いです。あくまで「保存行為」と見なされる可能性が高いです。ただし、故人の口座から無断で大きな金額を引き出すなど、内容によっては問題になる場合もあります。
Q3. 「相続放棄申述受理通知書」をもらっても大丈夫では?
受理通知書があっても、その後に処分行為が判明した場合など、最初から放棄が無効だったとされる可能性があります。受理通知はあくまで家庭裁判所が書面審査した結果であり、後から不正や事実の錯誤が見つかる場合もあるということです。
解説
具体例1:3カ月を過ぎてから申述
【状況】
被相続人が亡くなって4カ月後、借金の督促状が届き、そこで初めて負債の存在を知った。慌てて相続放棄を申し立てたが、既に3カ月を過ぎているため却下。
【原因】
- 熟慮期間の延長申し立ても行わず、放置
- 「相続の開始を知った時」から計算するため、死亡を知った日から3カ月経っている
【対策】
- 借金が疑われる場合、なるべく早く調査し、熟慮期間内に動く
- やむを得ない事情があれば家庭裁判所に延長申立を検討
具体例2:相続放棄後に車を使用
【状況】
相続放棄を申述し、受理もされたが、故人名義の車をそのまま日常使いしていた。後日、債権者から「処分行為があった」と指摘され、裁判所が法定単純承認とみなして放棄が無効化。
【原因】
- 車の使用は積極的な処分行為に当たると判断
- 保存目的ではなく、個人的利益のための利用
【対策】
- 放棄を決めたら、財産を使わない・売らない・貸さない
- やむを得ない保管・保存行為にとどめる
具体例3:裁判所への不正申告
【状況】
相続放棄申述書に記載していた内容に虚偽があり、後で発覚。たとえば、故人の預金を既に引き出して使っていた事実を隠していた。発覚後、裁判所が「最初から放棄は無効」と判断。
【原因】
- 財産処分の事実を隠していた
- 申立書・照会書に虚偽の回答をしていた
【対策】
- 正直に事実を申告し、誤りがあれば裁判所へ訂正申告
- 弁護士に相談し、危うい行為がないかチェックしてもらう
その他の注意点
- 保管・保存と処分の線引き
「葬儀のために使用」等が問題ないと判断される場合もあるが、金額や手続き次第でリスクがあります - 共有状態での使用
他の相続人が単純承認した場合でも、自分が放棄したなら財産には関与しない - 裁判所からの照会に対する誠実な回答
曖昧に答えると後でトラブル化しやすい
弁護士に相談するメリット
- 法定単純承認リスクを未然に防ぐ
放棄前後の注意点をアドバイスし、無効化を防止 - 正確な申立書作成と期限管理
3カ月ルールをしっかり守り、書面不備を回避 - 戸籍や財産確認のサポート
必要書類をもれなく収集し、放棄条件をクリアするための調査 - 万一の紛争対応
相続人間で「放棄が有効か否か」争いが起きた場合、弁護士が法的に主張を整理
まとめ
相続放棄が無効になるケースとして代表的なのは、
- 3カ月の熟慮期間超過
- 放棄前後の財産処分行為
- 裁判所への不正申告
などです。以下のポイントを押さえて、せっかくの放棄が無効化しないよう注意しましょう。
- 相続人の死亡を知ったら早めに借金調査
- 期限内(3カ月)に家庭裁判所へ申述(延長が必要なら申立を)
- 放棄後は財産を使わない
- 裁判所へは正しい情報を提供
迷う場合や状況が複雑な場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所など専門家へ早めに相談し、手続きの安全性を確保することをおすすめします。
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限定承認が難しいケースの対応策
はじめに
「プラスの財産の範囲内でしかマイナスを負わない」というメリットがある限定承認ですが、実際には相続人全員の同意が必要といったハードルや、手続きの煩雑さから「思ったように利用できない」ケースが多々あります。特に相続人が多数いる場合や、家族間の意見がまとまらない場合は、限定承認が難しいと判断されることもあります。
本記事では、限定承認が難しいケースでどのような対応策があるか、代替案や手続きの進め方を解説します。借金の存在が不確定で悩んでいる方や、相続人全員の合意が得られず困っている方は参考にしてください。
Q&A
Q1. どんな場合に限定承認が難しくなるの?
主に、
- 相続人の中に反対者がいる(全員の同意が得られない)
- 手続きが複雑で時間が足りない(3カ月の熟慮期間が過ぎそう)
- 財産調査が難航し、目録を正確に作れない
などの状況で限定承認が困難になることがあります。
Q2. 相続人が多数いる場合、どうすれば合意を取りやすい?
弁護士が間に入り、限定承認のメリット(負債がプラスを上回った場合のリスク回避)を説明したり、全員が得する可能性を説得材料にするなどが考えられます。また、早めに財産評価を行い、「これなら限定承認でメリットがある」と数値化することで合意を得やすくします。
Q3. 限定承認ができないとき、他にどんな選択肢がありますか?
主な代替手段として、
- 相続放棄:借金リスクを完全に排除。ただしプラス財産も受け取れない
- 単純承認:通常の相続。負債が上回ると自己資産で返済する羽目になる
- 相続人間での話し合い:一部遺産を売却するなどして借金を返し、残りを分配する
などがあります。
Q4. 仮に相続人がバラバラの選択肢を取ることはできる?
限定承認は相続人全員が同意しなければならないため、1人でも反対すればできません。その場合、個別に相続放棄や単純承認を選択する方法はあります。最終的には相続放棄組と承認組に分かれることも起こり得ます。
解説
ケース1:相続人の一部が反対
- 意見対立が理由で限定承認ができない
- 兄は限定承認を希望、妹は相続放棄を希望、母は単純承認の意向などバラバラ
- 対応策
- 弁護士が家族会議をサポートし、「限定承認で全体としてどのくらい財産が残るか」を試算
- それでも合意が得られない場合、各自で相続放棄や単純承認を選択する
- メリット・デメリット
- 妥協案として「一部が放棄、残りが単純承認」で遺産を整理する可能性も
ケース2:財産調査が難航、時間不足
- プラスとマイナスの把握に時間がかかる
- 海外資産や多数の金融機関口座がある、借金の証拠が散在
- 対応策
- 弁護士が迅速に金融機関や債権者へ照会
- 家庭裁判所に熟慮期間の延長を申し立てる
- 延長が許可されればさらに時間を確保し、財産目録を完成させたうえで限定承認を申述
ケース3:手続きコストが高い
- 公告、債権者対応などが面倒
- まとめて行う労力と費用が相続人の合意を得にくい要因
- 対応策
- 結果的にプラスが残らないなら相続放棄のほうが簡易
- プラス財産が確実に多いなら単純承認でいいとの意見も
- 弁護士の提案
- 「限定承認でどのくらい残るか」をシミュレーションし、事前に費用対効果を検討
代替案:相続放棄や部分売却
- 相続放棄
- 借金を回避するには確実だが、プラス財産もゼロ
- 個別選択できる(自分だけ放棄するなど)
- 単純承認しつつ、一部財産を売却し負債を清算
- 大きな借金を、不動産売却で返済可能なら問題は解決
- 限定承認ほどのメリットはないが、手続きは簡易
弁護士に相談するメリット
- 早期の財産把握と選択肢提示
借金・保証債務などを網羅的に調査し、限定承認の可否や相続放棄のメリットを比較 - 相続人間の合意形成支援
反対意見がある場合、弁護士が法的根拠と数値シミュレーションで説得力を高める - 期限内の段取り
延長申立や書類作成を弁護士が進め、3カ月ルールをクリア - 費用対効果の検討
限定承認にかかる手続きコストと、残る財産を比較し、最適解を提案
まとめ
限定承認は、有力な相続選択肢ですが、以下の理由で難しいケースも多いのが現状です:
- 相続人全員の合意が得られない
- 財産調査が大変で、期限(3カ月)に間に合わない
- 手続きや費用がかかりすぎる
そうした場合、相続放棄や単純承認、あるいは不動産の売却による負債返済などの代替策を考慮することになります。迷ったときは、弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家へ相談し、財産や負債の詳細を踏まえた最適な戦略を立てることもご検討ください。
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相続放棄に必要な弁護士のサポート内容
はじめに
故人が多額の負債を残していた場合や、自分にとってメリットのある財産がほぼない場合、相続放棄を選択することで負債を回避できる可能性があります。しかし、相続放棄の手続きには期限(3カ月)や書類の整備、そして事前に財産調査を行う必要があり、不備があれば却下や法定単純承認になってしまうリスクもあります。本記事では、相続放棄をスムーズに進めるために弁護士が提供できるサポート内容を解説します。
Q&A
Q1. 弁護士が相続放棄でどんな役割を果たしますか?
主に、
- 借金や保証債務などの調査
- 家庭裁判所への申立書や添付書類の作成・提出
- 期限管理(3カ月)
- 他の相続人や債権者とのコミュニケーション
などを代行・サポートしてくれます。
Q2. 自分で相続放棄をやろうと思えばできなくはないですか?
可能ですが、財産調査や書類不備があると却下のリスクもあります。特に、被相続人の保証人になっていたケースや、隠れた債務があるケースでは専門知識が求められます。ミスを防ぐため弁護士に依頼するメリットは大きいです。
Q3. 弁護士に依頼した場合、費用はどれくらいかかるのでしょう?
一般的には、相続放棄1件あたり数万円~10万円程度の報酬が目安です。ただし、債権者との交渉が必要な場合や、財産調査が複雑な場合は追加費用が発生する場合もあるため、事務所ごとに見積もりを確認しましょう。
Q4. 弁護士のサポートがあれば時効を逃さずに済みますか?
弁護士は3カ月の熟慮期間を意識してスケジュール管理を行うので、期限オーバーのリスクを大幅に減らせます。加えて、家庭裁判所への熟慮期間延長申立が必要な場合も、その手続きをしっかり進めることができます。
解説
借金や負債の調査サポート
- 金融機関やクレジット会社への照会
弁護士が委任状をもとに、故人の借入状況やカードローン残高を調査 - 連帯保証の有無
保証人になっていた場合、債権者が請求してくる可能性を把握 - 税金や公共料金の未払い確認
税務署、市区町村の税務窓口に問い合わせて滞納がないか調べる
家庭裁判所申立書類の作成・提出
- 相続放棄申述書
- 正確な被相続人の情報、申述人の情報を記載
- 戸籍や住民票などを添付
- 期限内申立
- 弁護士が期限を管理し、迅速に提出
- 追加資料対応
- 照会書が届いた場合、弁護士が回答を作成し、送付する
期限(3カ月)や処分行為のリスク回避
- 処分行為の説明
- 相続放棄前に故人の預金を引き出す、車を使用すると放棄が無効になるリスクあり
- 弁護士が事前に注意喚起
- 熟慮期間延長の申立
- 負債状況が把握しきれないとき、正当な理由があれば延長を裁判所に申立て
家族間の調整と債権者対応
- 他の相続人への説明
自分だけ放棄することを伝え、後々のトラブルを防ぐ - 債権者への通知
放棄が受理された後でも、債権者から請求が来ることがあるが、弁護士が対応し「相続放棄」を主張
弁護士に相談するメリット
- 専門家による安全な放棄手続き
書類の不備や期限超過がなく、家庭裁判所でスムーズに受理される - 財産・債務状況の的確な調査
保証債務や連帯保証など見落としがちを事前把握 - 処分行為の回避アドバイス
相続放棄が無効化しそうな行為を未然に防止 - ストレス軽減
親族間トラブルや債権者対応など、煩雑なコミュニケーションを弁護士が代行
まとめ
相続放棄を成功させるためには、
- 借金や保証債務の有無を徹底的に調査
- 家庭裁判所への申立書類を正確に作成
- 3カ月の熟慮期間を厳守
- 放棄前に財産を処分しない(使用しない)
といった点が重要です。こうした手続きをスムーズかつ安全に進めるためには、弁護士のサポートが有益です。特に負債内容が不明確だったり、他の相続人と協議が必要な場合には、早期に弁護士へ相談するとよいでしょう。
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限定承認の流れと必要書類一覧
はじめに
相続では、プラスの財産だけでなく、負債や保証債務といったマイナスの財産も引き継ぐ仕組みがあります。もし、不動産などプラスの財産をある程度確保したいが、負債がどれくらいあるか分からず不安、という場合には、「限定承認」が選択肢となります。限定承認を行えば、相続によって得た財産の範囲内でしか負債を負わないため、大きな借金を背負い込むリスクを抑えることが可能です。
しかし、限定承認は手続きが複雑で、相続人全員の同意が必要などの注意点があります。本記事では、限定承認の具体的な流れと必要な書類を解説します。
Q&A
Q1. 限定承認のメリットは何ですか?
もしプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない状況でも、プラスの範囲内で負債を負うことができ、マイナスが大きく上回った場合、その超過分は支払わなくて済みます。さらにプラス財産が負債を上回れば、その差額は相続人が取得できます。
Q2. 相続人が複数いる場合、個別に限定承認はできる?
相続人全員の同意が必要です。一人でも反対すれば限定承認はできず、単純承認か相続放棄になるという点が相続放棄と大きく異なります。
Q3. どこに申立てを行うのでしょう?
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、限定承認申述書を提出します。必要書類を揃えて、3カ月の熟慮期間内に行う必要があります。
Q4. 必要書類は相続放棄と同じですか?
基本的に似ていますが、相続財産目録(プラスとマイナス財産を一覧化)が追加で必要となります。また、相続人全員が同意することを証明する書類や、戸籍謄本、住民票なども相続放棄と同様に揃えます。
解説
限定承認の流れ
- 相続人全員の協議・合意
マイナスの財産の有無や規模を把握し、全員が「限定承認を選ぶ」ことで合意する - 財産目録の作成
プラスの財産(不動産、預金、株式など)と、マイナスの財産(借金、保証債務など)を一覧にまとめ評価額を記載 - 家庭裁判所への申立て
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「限定承認申述書」を提出
- 戸籍や住民票、財産目録など必要書類を添付
- 審理・照会
- 書類の不備や疑問点があれば裁判所から連絡が来る
- 問題なければ限定承認が受理される
- 公告と債務弁済
- 限定承認が認められたら官報公告を行い、債権者に名乗りを上げてもらう
- プラス財産を使って債務を弁済し、残余があれば相続人で分配
必要書類一覧
- 限定承認申述書
- 家庭裁判所のHPや窓口で入手
- 相続人全員が署名・押印
- 被相続人の戸籍(除籍)謄本
- 出生から死亡まで連続したもの
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 相続関係を確認
- 財産目録
- 不動産→登記簿謄本、固定資産税評価証明書
- 預金→通帳コピー、残高証明書
- 負債→借用書、債権者情報
- 同意書(相続人が複数の場合)
- 全員が限定承認に同意している旨を示す書面
注意点・難易度
- 全相続人の同意
1人でも反対なら限定承認不可 - 期限(3カ月の熟慮期間)
財産目録作成や相続人同士の合意形成に時間がかかる - 相続税優遇が使えない
小規模宅地等の特例など、一部の相続税軽減制度が利用不可 - 公告・債権者対応
官報公告を行い、名乗り出た債権者とのやり取りが発生 - 弁護士・税理士・鑑定士との連携
必要書類や評価が複雑になるためプロのサポートが望ましい
弁護士に相談するメリット
- 迅速な財産調査
弁護士が金融機関や関連機関に照会を行い、負債や保証の存在を網羅的に確認 - 正確な財産目録作成
不動産や株式などの評価を税理士や不動産鑑定士と連携して算出 - 書類不備防止
期限内に必要書類を漏れなく揃え、申述書を正確に作成 - 官報公告や債権者対応
限定承認後の公告や債権者との弁済交渉を弁護士が代行 - 他の相続人との調整
全員が同意するための合意形成をサポート
まとめ
限定承認は、
- プラスとマイナス財産のどちらが大きいか分からない
- 一部財産は相続しつつ、マイナスを超える負担を回避したい
といった状況で検討される制度です。
手続きのポイントは以下のとおりです:
- 相続人全員の同意が必須
- 3カ月の熟慮期間内に家庭裁判所へ申述
- 財産目録を正確に作成し、添付書類を揃える
- 受理後、公告と債権者対応が必要
手続きが複雑で時間も限られますので、迷ったら弁護士にご相談ください。調査・書類作成・合意形成まで一貫してサポートし、あなたの相続における最適解を導きます。
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