はじめに
相続が発生した際、相続財産にはプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。このため、相続人は財産を受け継ぐかどうかを慎重に判断する必要があります。場合によっては、相続放棄という選択が有効です。しかし、相続放棄をした場合、相続財産がどのように扱われるのかを理解しておかなければ、判断を誤ってしまうおそれもあります。本記事では、弁護士の立場から相続放棄とその後の財産の処理について解説します。
相続放棄に関するQ&A
Q:相続財産を放棄すべき場合とは?
A:相続財産において、借金や負債が預金や不動産などの資産を上回る場合、相続放棄を選択することが一般的です。また、遠方の不動産を管理するのが難しい場合や、管理コストが過度にかかる場合、特定の相続人に財産を集中させたい、あるいは他の相続人との争いを避けたいという場合にも、相続放棄が考えられます。
Q:相続放棄を行う前に、相続財産は正確に調査する必要がある?
A:相続財産のすべてを把握していなくても、相続放棄は可能です。ただし、相続放棄をするか迷っている際には、財産調査を行い、プラスとマイナスの財産を正確に把握することが重要です。財産の全体像を把握することで、適切な判断ができるようになります。
Q:相続放棄後の相続財産の管理は?
A:相続放棄をした後でも、相続財産を他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでは、適切な管理を行う義務があります。相続放棄後に財産を隠匿するなどの不適切な行為が発覚すると、相続放棄が無効となる場合があるため、注意が必要です。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が被相続人から受け継ぐはずの財産や負債を放棄する手続です。民法第915条に基づき、相続放棄の申述は、相続が発生したことを知った日から3か月以内に行う必要があります。この3か月の期間を「熟慮期間」と呼び、相続財産の全体像を把握するための時間として設けられています。
相続放棄の申述は、家庭裁判所に対して行います。相続放棄が認められると、その相続人は最初から相続人ではなかったものとみなされ、相続に関する一切の権利と義務を免れます(民法第939条)。ただし、相続放棄を行った場合でも、相続財産の管理に関して一定の義務が残ることがあります。
相続放棄の効果
相続放棄が認められると、相続人は相続財産に関する権利と義務を一切持たなくなります(民法第939条)。これにより、負債の返済義務から解放される一方で、相続財産の分配や管理にも関与できなくなります。
相続放棄が有効となった場合、その相続分は他の相続人に移ります(民法第939条)。相続放棄を行う相続人が複数いた場合、全員が放棄した場合には、その相続分は次順位の相続人に移ります。次順位の相続人も相続を放棄することができ、その場合、さらに次の順位に相続権が移ります。
相続放棄後の相続財産の扱い
相続放棄をした後でも、放棄した相続人は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、財産の引き渡しまでの間、相続財産を適切に管理する義務があります。具体的には、相続放棄を行った後でも、相続財産が他の相続人または相続財産清算人に渡るまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存する責任が生じます(民法第940条)。
また、相続放棄をした相続人が財産を隠すなどの行為を行った場合、その放棄は無効となる可能性があります(民法第921条3号)。相続放棄を行う際は、他の相続人との協力のもと、円滑に財産の引き渡しを行うことが求められます。
相続財産清算人の選任が必要となる場合
相続放棄により、相続人がいなくなった場合、相続財産は「相続人不存在」として扱われます。この場合、家庭裁判所が相続財産清算人を選任することになります(民法第952条)。相続財産清算人の役割は、相続財産を整理し、債務の返済や相続財産の処分を行うことです。
相続財産清算人が選任された場合、その人物は相続財産のすべてを管理し、債権者やその他の利害関係者に対して適切な対応を行います(民法第952条)。相続財産が残っている場合は、最終的に国庫に帰属することになります(民法第959条)。
弁護士に相談するメリット
相続放棄やその後の手続きについては、法律的な知識が必要となる場面が多くあります。たとえば、相続財産の調査、負債の精算、相続放棄後の管理など、専門的な対応が求められる場合には、弁護士のサポートが有効です。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続問題に関する豊富な知識と経験を持つ弁護士が、依頼者の状況に応じた的確なアドバイスを提供します。複雑な相続手続においても、安心して任せられるパートナーとして、円滑な解決を目指します。
まとめ
相続放棄は、借金などの負債が多い場合や、遠隔地の不動産管理が難しい場合などに有効な選択肢です。しかし、その後の相続財産の管理や、相続財産清算人の選任など、放棄後にも注意が必要な手続きが存在します。
相続に関する問題や不安がある場合は、専門的な知識を持つ弁護士に相談することを強くお勧めします。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、相続に関するお悩みに対して、適切な解決策を提供します。
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