相続における『寄与分』とは?その意義・要件・活用法

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はじめに

相続問題は、事業承継を考える企業経営者や一般のご家族にとって、重要な関心事です。その中でも「寄与分」という制度は、被相続人(亡くなった方)の財産形成や維持に特別な貢献をした相続人に対し、相続分を調整する役割を果たします。本稿では、寄与分の基本的な考え方、具体的な類型、判断要件、そして弁護士に相談するメリットなどを解説します。

Q&A

ご質問

うちは代々小さな製造業を営んできた家族企業なんですが、先代社長である父が亡くなって相続が発生しそうなんです。父の財産は、私をはじめ家族みんなで会社を支えてきたことで維持・拡大できた部分も大きい気がします。

こうした家族の貢献は、相続の際、きちんと評価してもらえるのでしょうか?特別に相続分が増える制度があると聞いたことがあるのですが、それは『寄与分』というものなのでしょうか?

回答

ご質問ありがとうございます。

ご指摘の『寄与分』とは、相続において特別な貢献を行った相続人の相続分を調整する制度で、家業への労働参加、被相続人への資金援助、長期にわたる介護・看護など、通常期待される範囲を超えて被相続人の財産維持や増加に寄与した場合に認められます(民法第904条の2)。

本稿では、寄与分が認められる典型的なケースや、その判断基準、法的根拠、そしてこうした問題に直面したときに弁護士に相談する意義について解説します。

寄与分とは何ですか?

「寄与分」とは、相続人の中に被相続人の財産形成や維持に特別の貢献をした人がいる場合、その貢献度合いに応じて相続分を増やすことができる仕組みです。民法第904条の2に定められ、その趣旨は、通常の家族的援助を超える貢献を行った相続人の公平な評価にあります。

寄与分が認められる典型的な類型はありますか?

寄与分が認められやすい類型として、以下の3つがよく挙げられます。

  1. 家業従事型
    被相続人が生前に行っていた事業(例えば農業、商店、製造業等)に、相続人が長期間にわたり労務提供を行い、その結果として被相続人の財産が維持または増加した場合。
  2. 財産給付型
    被相続人の不動産購入や事業拡大に必要な資金を相続人が拠出し、そのおかげで被相続人の財産が増加または維持できた場合。
  3. 看護療養型
    被相続人が介護・看護を必要とする状況で、相続人が長期間、負担の大きい介護・看護を行い、結果的に被相続人の暮らしや財産維持に特別な支えを提供した場合。

これらはいずれも、民法第904条の2に基づいて認められうる類型です。

家業従事型とは具体的にどのようなケースですか?

家業従事型の場合、単なるお手伝いを超え、相続人が家業の運営維持に実質的な役割を果たし、被相続人の財産形成に貢献したと評価できるケースが想定されます。たとえば、被相続人が営んでいた農場や商店で、相続人が長年にわたり通常の従業員以上の働きを無償、または著しく低い報酬で担い、その結果、事業が継続・拡大し、被相続人の財産が増えたような場合が典型例です(民法第904条の2)。

財産給付型とはどのような場合に該当しますか?

財産給付型は、被相続人が財産を取得・維持する際に、相続人が直接資金を出して援助したケースに当てはまります。たとえば、被相続人が不動産を購入する際に、相続人が購入代金の一部を拠出した結果、その不動産が被相続人の財産として維持・増加した場合です。こうした貢献は通常期待される範囲を超えた援助として評価され、寄与分が認められうる可能性があります(民法第904条の2)。

看護療養型はどのような場合を指しますか?

看護療養型は、被相続人が介護・看護を要する状態にあり、相続人が長期間にわたり、負担の大きい介護・看護、生活支援を行うことで被相続人が他人に依存する費用を削減し、その財産減少を防いだり、生活の質を保ったりできた場合が該当します。これも、民法第904条の2によってその特別な貢献が考慮されます。

寄与分が認められるための要件や条件はありますか?

寄与分は「特別の寄与」があった場合に認められます(民法第904条の2)。具体的には、次のような点が考慮されます。

  • 通常期待される範囲を超える貢献
    単なる家族の手伝い程度ではなく、明らかに負担が大きい、または通常の家庭関係を超えたレベルの労務提供・財産援助・看護行為であることが必要です。
  • 継続性・重要性
    貢献が一時的なものでなく、長期にわたって継続的に行われた場合に、より高く評価される傾向があります。
  • 対価性の有無
    貢献に見合う十分な対価(給与や報酬)を生前に被相続人から受け取っていた場合、寄与分は認められません。ただし、受け取った対価が貢献度に比べて著しく低い場合は、差額分について寄与分が考慮されることもあります。

いずれにせよ、最終的には各事案の具体的事情を総合的に判断して決まります。

具体的な事例で、寄与分が認められないケースはありますか?

たとえば、家業に従事していた相続人が、市場相場並みの給与や報酬を受け取り、すでにその労務提供に見合う対価を十分に享受していた場合には、寄与分として認められることは困難です。また、短期的な手伝いや、家族としてごく普通に行う程度の介助程度では寄与分は成立しません。

解説

ここまでのQ&Aで、寄与分の基本的な考え方や認められる類型、要件などを確認しました。「寄与分」は、相続人間の公平を図るための重要な制度であり、特に中小企業や家業を継承しているご家庭では、被相続人の財産維持・増加に寄与した特定の相続人が、適正な評価を受けるために用いられます。

実務上、寄与分を主張するには、

  • 貢献を示す資料(出資金を示す証拠、勤務実態を示す記録、看護に費やした時間や内容のメモなど)
  • 寄与行為と財産増加・維持の因果関係
  • 他の相続人との交渉・調整

などが必要になることが多く、スムーズな相続手続には専門家の助言が有益です。

弁護士に相談するメリット

相続において寄与分を主張する、あるいは他の相続人から寄与分を求められる場面では、弁護士に相談することが大きなメリットになります。

  1. 適正な評価と法的根拠の整理
    寄与分が成り立つかどうか、どの程度認められるかは事案ごとに異なります。弁護士は民法第904条の2などの法的根拠を踏まえ、主張を裏付ける証拠収集方法や、説得的な交渉戦略を提示します。
  2. 紛争防止・解決の円滑化
    相続人間での話し合いが感情的な対立を招き、紛糾することも少なくありません。弁護士が中立的な視点で関与することで、関係者全員が納得しやすい解決策を模索でき、紛争の長期化を避けられます。
  3. 手続の効率化と安心感
    適切な専門家のサポートがあれば、家庭裁判所での調停や審判など、必要に応じた手続を踏む場合でも、必要な書類や立証方法が明確になり、手続全体が円滑に進みます。また、弁護士の関与によって、依頼者は精神的な負担を軽減し、安心感を得ることができます。

まとめ

寄与分は、被相続人の財産維持・増加に特別な貢献をした相続人にとって、公平性を確保するための制度です。民法第904条の2を根拠に、その認定には「通常期待される範囲を超えた貢献」や「対価を受けていないこと」などがポイントになります。家業への長期的な労働参加、不動産取得資金の提供、介護・看護への多大な労力提供といった具体例を通じて理解できるようにしました。

実務上は、各相続人の関わりや対価状況の把握、証拠資料の整備、適切な交渉が欠かせません。こうした手間や争いを避けるためには、弁護士への相談が有益です。専門家のアドバイスを受けることで、相続問題をより公正かつ円滑に解決する一助とな李ます。

解説動画のご紹介

相続問題についてさらに理解を深めたい方は、以下の解説動画も参考にしてください。寄与分を含む相続全般の知識が整理され、映像を通じてわかりやすく学ぶことができます。


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