はじめに
「なるべく費用をかけずに、まずは自分で遺言書を書いてみたい」という方にとって、最も気軽に作成できるのが自筆証書遺言です。2019年以降の法改正によって一部の要件が緩和されたこともあり、利用を検討する人が増えています。しかし、書式の不備で無効となるリスクが高いことも事実です。
本記事では、自筆証書遺言を作成するときに押さえておきたい基本ルールや注意点、実際の作成手順をわかりやすく解説します。大切な遺言書を有効なものにするためにも、ぜひご覧ください。
Q&A
すべて手書きしないと無効になるのでしょうか?
本文・日付・署名部分は手書きが必須です。ただし、財産目録に限ってはパソコン等で作成することが2019年の改正以降、認められました。プリントアウトした目録にはページごとに署名押印が必要です。
封印は絶対に必要ですか?
自筆証書遺言に封印は必須ではありませんが、保管上の観点から封筒に入れて封印しておく方が望ましいです。また、仮に封印した場合は、家庭裁判所での検認時に相続人の立ち会いのもと開封することになります。
いつでも書き直しはできますか?
はい、できます。ただし、新旧の遺言が同時に存在すると紛らわしくなるため、書き直した後は古い遺言書を破棄するか、「これ以前の遺言を撤回する」と明記しておくのが一般的です。
自筆証書遺言にも保管制度があると聞きましたが?
法務局の遺言書保管制度を利用することができます。これにより、保管された遺言書は原則として検認が不要となるため、相続人の手続き負担が軽減されます。
解説
自筆証書遺言の作成要件
- 全文・日付・氏名を自書
ボールペンや万年筆など消えない筆記用具で書き、鉛筆は避けるべきとされています。日付は「令和○年○月○日」という具体的な書き方が必要です。 - 押印
認印でも構いませんが、実印を使う方が望ましいです。 - 訂正時のルール
訂正には場所を示し、日付と署名・押印が必要です。二重線を引いただけでは無効になる場合があるため、注意が必要です。
保管方法と検認手続き
- 自筆証書遺言は、遺言者自身で保管する場合、紛失や改ざんのリスクがあります。
- 遺言者が亡くなった後、自宅などから発見された自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続きが必要です。
- 遺言書保管制度を利用すれば、法務局での保管が可能となり、検認手続きが不要になります。ただし、遺言が複数存在した場合など、別の問題が生じるケースはありますので、弁護士等と相談した上で利用の可否を検討すると安心です。
よくある無効パターン
- 日付の書き方が曖昧
「令和○年○月吉日」などの記載は無効リスク大。 - 本文や署名の代筆
法律上、本人自書が必須なので、代筆してしまうと無効になります。 - 財産の特定が不十分
「預金○○円を長男に」と大まかに書くだけでは、どこの金融機関のどの口座か特定できず、トラブルの原因になりやすいです。
弁護士に相談するメリット
- 有効性の確保
専門家がチェックすることで、方式を誤ったり日付の書き方を誤ったりするリスクが格段に下がります。 - 内容の公平性・合意形成サポート
自筆で書く場合、つい感情的になり、親族間トラブルを生む内容を残してしまうこともあります。弁護士の視点からアドバイスを受ければ、公平な内容に近づけることができます。 - 将来的なトラブル回避
自筆証書遺言は検認が必要だったり、保管制度の活用可否など、作成後も手続きが発生する場合があります。弁護士なら、相続が発生した際の流れも踏まえて指導できるため、事前にトラブルを回避しやすいです。
まとめ
自筆証書遺言は、費用がほとんどかからない反面、形式の厳格さや保管のリスクなど、注意点も多く存在します。せっかく遺言書を用意しても、無効になってしまっては意味がありません。法務局の保管制度の導入によって少し利用しやすくなったものの、不備があればやはり無効のリスクは残ります。
自分だけで書こうとせず、迷ったら早めに弁護士へ相談してみるのがおすすめです。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、自筆証書遺言の下書き段階からサポートし、後々の検認や遺言執行にも対応できます。
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遺言書に関する基本知識や、自筆証書遺言の書き方について、動画解説も用意しています。文字だけではわかりにくい記載例や注意点を図解で解説していますので、併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。
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