相続財産の範囲と評価方法

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はじめに

相続が始まると、まず「どの財産が相続対象に含まれるのか」という疑問が浮かびます。銀行口座や不動産、株式など、明確に価値が分かりやすいものだけでなく、動産や権利関係に属する財産まで、実は広範囲にわたります。さらに、各財産をどのように評価するかは遺産分割や相続税の計算において非常に重要です。

本記事では、相続財産となるものの具体例と、その評価方法の基本を分かりやすく解説します。遺産分割や相続税申告をスムーズに進めるためにも、正確な財産調査と評価が欠かせません。

Q&A

Q1. 相続財産にはどのようなものが含まれますか?

預貯金や不動産、株式などの有価証券、動産(自動車・貴金属など)、著作権などの無形財産も含まれます。一方、故人の一身専属的な権利義務(扶養請求権など)は相続の対象になりません。

Q2. 不動産の評価はどのように行われるのですか?

相続税申告のための評価は「路線価方式」や「倍率方式」で行われますが、実際の売買や遺産分割では「時価」を基準にすることも多いです。状況に応じて不動産業者や専門家の査定を利用します。

Q3. 借金や債務も相続財産に含まれるのでしょうか?

はい、債務も相続財産に含まれます。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も合わせて相続の対象となりますので、相続放棄や限定承認を検討するケースもあります。

解説

相続財産に含まれる主な項目

  1. 金融資産
    預貯金、株式、投資信託、保険解約返戻金など
  2. 不動産
    土地や建物(居住用・賃貸用)、借地権など
  3. 動産
    自動車、宝石、骨董品、美術品など
  4. 権利関係
    著作権、商標権、特許権、ゴルフ会員権など
  5. 債務
    借金、未払いの医療費や家賃、保証債務なども含まれる

相続財産に含まれないもの

  • 一身専属的な権利
    生命保険金の受取人が「相続人」とされている場合でも、受取人固有の財産になる場合があります(契約形態による)。ただし、受取人が「被相続人本人」になっている場合は相続財産になります。
  • 年金受給権や扶養請求権
    公的年金の権利や扶養を受ける権利は一身専属とみなされるため、相続財産には含まれません。

評価方法の基本

  1. 不動産の評価
    • 相続税評価
      国税庁の路線価や固定資産税評価額、倍率方式を利用。
    • 遺産分割での時価評価
      不動産会社の査定や実際の売買価格に基づく。
  2. 株式や有価証券の評価
    • 上場株式
      相続開始日の終値、または前後数カ月の平均株価など複数の方式から有利な値を選ぶ。
    • 非上場株式
      会社の純資産価額方式や類似業種比準方式による評価。
  3. 預貯金の評価
    相続開始時点の残高+経過利息を加味する。
  4. 動産の評価
    車や宝石は中古市場での時価を参考に査定。骨董品や美術品は専門鑑定人の評価が必要な場合も。

相続税申告と遺産分割の評価の違い

  • 相続税評価
    国税庁が定める評価基準に従って算出し、相続税額を計算する目的で用いられる。
  • 遺産分割の評価
    相続人間で公平に分割するために用いられる。実際には「時価」や「将来的な売却価格」を参考にすることが多いが、相続人同士で合意すれば任意の評価方法でも可能。

注意点

  • 財産漏れの発覚
    後になって見つかった財産があると、遺産分割協議のやり直しや相続税の修正申告が必要になる。
  • 評価時期のズレ
    相続税の申告期限(10カ月)までに価格が変動するケース(株価や不動産)もある。どの時点を基準に評価するかをしっかり確認する必要がある。
  • 複雑な財産の調整
    中小企業の事業承継や、大量の不動産などが絡む場合は専門家のサポートが必須。

弁護士に相談するメリット

  1. 財産調査のサポート
    弁護士は銀行や法務局への照会、戸籍収集などを通じて、財産の漏れがないか丁寧に調査できます。
  2. 評価方法の選定アドバイス
    相続税評価・時価評価など、ケースに応じてどの方式が有利かや、相続人間での調整方法などを法的観点から提案。
  3. 遺産分割協議の交渉
    評価額の違いや債務の扱いで意見が割れても、弁護士が交渉や調停・審判で代理活動を行い、公平な解決を図ります。
  4. 相続税申告での他士業連携
    税理士や不動産鑑定士と連携し、総合的なサポートを提供することで、トラブルやミスを最小限に抑えます。

まとめ

相続財産には、預貯金や不動産、株式、動産など多岐にわたる項目が含まれます。さらに、マイナスの財産(借金や保証債務)も含まれる点を見落とさないようにしましょう。正確な調査と評価ができてこそ、円滑な遺産分割協議や相続税申告が可能となります。

  • 相続財産の範囲を正確に把握する
  • 各財産の評価方法を理解し、目的(相続税申告か遺産分割か)によって使い分ける
  • 専門家の助言を得て、公平かつ合理的な分割案を検討

財産の内容が複雑なほど、弁護士や税理士といった専門家のサポートが欠かせません。お困りの際は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。


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