不動産が絡む遺産分割のトラブル事例

はじめに

相続財産の中でも特に不動産は、評価額が大きいだけでなく共有名義売却の可否など多くの要素が絡み合うため、遺産分割で最もトラブルが多い領域と言えます。不動産をめぐる争いが長期化すると、固定資産税修繕費を誰が負担するかで新たな対立が生じるなど、問題が拡大するケースも珍しくありません。

本記事では、不動産が絡む遺産分割の具体的なトラブル事例を紹介し、それをどのように解決できるのかを解説します。相続が始まって不動産処分や共有に悩まれている方は、ぜひ参考にしてください。

Q&A

Q1. どんな不動産が特にトラブルになりやすいの?

典型的には自宅不動産(親と同居していた子がいる場合など)や売りにくい土地(農地や山林)など。また、共有名義が複数代にわたり放置されているケースでは、相続人の数が膨大になり協議が難航しがちです。

Q2. 「共有」で相続しておけば安心では?

一見公平に見える共有相続ですが、維持管理費の分担将来の売却手続きなど、後々の手続きで全員の合意が必要になるため、紛争リスクが高いのが実情です。共有は極力避けるのが実務のセオリーといえます。

Q3. 評価を巡って相続人が対立している場合は?

不動産鑑定士に正式な鑑定評価を依頼するか、複数の不動産会社に査定を依頼して平均値を取り、客観的データで説得する方法があります。裁判所の調停・審判でも鑑定人が選任されるケースがあります。

Q4. 共有状態の不動産を勝手に売却できる?

共有名義の場合、共有者全員の同意がなければ処分(売却)できません。1人が勝手に契約しても無効になります。また、一部共有者が合意してくれないと売れず、長期化する例もあります。

解説

以下では、不動産が関係するために遺産分割トラブルが長期化してしまうケースを想定事例としてご紹介します。

トラブル事例1:自宅を巡る対立

【事例】

被相続人と同居していた長女が「今後もこの家に住み続けたい」と主張。一方で、遠方に住む長男や次女は「売却して現金を分配してほしい」と要望。合意に至らず対立が激化。

【問題点】

  1. 長女は「長年介護してきたから寄与分がある」と主張
  2. 他の相続人は「自宅の評価額が大きいので現金化しないと公平にならない」と反発
  3. 同居続行と売却の意思が衝突

【解決策】

  • 不動産評価書を用いて家の価値を算定
  • 長女が家を単独相続し、代償金を他の相続人に支払う
  • 寄与分を一部認め、代償金を減額する形で合意

【ポイント】

客観的評価+寄与分考慮という妥協案で感情面と公平性を両立

トラブル事例2:共有名義のまま放置

【事例】

父が亡くなり、子ども3人で実家の土地建物を共有相続。その後、長男が実質的に住み続けたが、固定資産税は誰が払うのか明確でなく、次男や長女との間で不満が募った。

【問題点】

  1. 共有者の一人(長男)が占有している状態で、賃料管理費の負担が不透明
  2. 将来売却したいと思っても全員の合意が必要
  3. 兄弟間の関係が悪化

【解決策】

  • 弁護士の助けを得て協議を再度実施
  • 不動産を長男が単独相続し、代償金を他の兄弟に支払う方法を採用
  • 固定資産税や維持費も長男が今後負担する形で合意

【ポイント】

共有名義は管理責任や売却の同意などでトラブルが多いため、早期に抜本的解決を

トラブル事例3:農地や山林が売れない

【事例】

被相続人が大量の山林・農地を所有していたが、需要がなく売却不能。固定資産税や管理費用だけかさむ状況で、相続人全員が「こんな土地いらない」と押し付け合い、協議決裂。

【問題点】

  1. 市場価値が極端に低く、事実上売れない
  2. 共同相続人全員が取得を拒否し、協議が不成立

【解決策】

  • 弁護士が調査し、自治体やNPOなどに譲渡できないか模索
  • 相続放棄も検討されたが、他にプラス財産があるため却下
  • 最終的に審判へ進み、裁判所が法定相続分どおり共有と決定。将来問題があれば共有物分割訴訟など別途対応

【ポイント】

売却不可能な不動産は管理放棄のリスク大。義務化された相続登記や管理費用負担が今後の争点になる

問題を予防・解決するための戦略

  1. 専門家の助言
    不動産の鑑定評価や税理士の助言により、公平な分割案を提示
  2. 共有を避ける
    できれば単独相続や代償分割を使い、共有状態を最小限に
  3. 自治体・NPOとの連携
    山林や農地を有効活用してくれる団体を探し、譲渡や貸与を検討
  4. 早期の話し合い
    相続開始後に時間が経つほど、固定資産税などが負担になり、感情的対立が深刻化

弁護士に相談するメリット

  1. 不動産の評価や相続税も視野に入れた分割案
    税理士や不動産鑑定士と連携し、より適切な分割方法を提案
  2. 紛争解決のノウハウ
    過去事例を踏まえた交渉技術で、当事者の感情対立を緩和
  3. 家庭裁判所での代理
    調停・審判になった場合でも、弁護士が代理人として意見を整理し、スムーズな手続きをサポート
  4. 維持管理の相談にも対応
    売却困難な山林や農地の活用策、共有物分割訴訟なども一括で支援

まとめ

不動産が絡む遺産分割は、評価や処分方法、共有状態などから多くのトラブルを生み出しがちです。以下の点を意識して対策することで、スムーズな解決に近づけます。

  1. 客観的評価(鑑定・査定)
    不動産の価値をはっきりさせ、対立を和らげる
  2. 共有状態は回避
    できるだけ単独相続や代償分割で整理
  3. 売却できない不動産の管理策
    行政や専門家との連携を模索
  4. 専門家に早めに相談
    弁護士がまとめ役となり、税理士や鑑定士との連携でトータルサポート

もし不動産の相続でお悩みであれば、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。最適な分割案の立案から紛争解決までをサポートいたします。

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