はじめに
事業承継を円滑に進めるためには、後継者選定や株式移転の計画だけでなく、必要な書類をきちんと揃え、法的に整合性のある状態を作り上げることが重要です。特に非上場企業では、株主間契約や事業承継契約、遺言書などの整備がないまま承継を行い、後からトラブルになるケースも少なくありません。
本記事では、事業承継に必要な書類をリストアップし、作成・取得方法と注意点を解説します。会社規模や承継方式(親族内承継、M&A等)によって必要書類は異なりますが、基本的なポイントを押さえて計画を滞りなく進めましょう。
Q&A
Q1. 事業承継に必要な主な書類は何ですか?
大まかには、
- 会社法関連: 定款、株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録など
- 契約書関連: 株式譲渡契約、事業承継契約、株主間契約、秘密保持契約など
- 相続・税務関連: 遺言書、遺産分割協議書、相続税申告書、事業承継税制の適用申請書など
- 労務・取引先関連: 就業規則、雇用契約書、取引契約書、保証契約書など
- 各種登記・許認可書類: 代表取締役変更登記、許認可の変更手続きなど
Q2. 株主間契約や事業承継契約は必須ですか?
法的に必須ではありませんが、後継者への経営権集中や他の株主との関係を明確化し、将来の紛争を防止するために有効です。特に親族間や複数の株主がいる場合は契約書を結ぶメリットが大きいです。
Q43 弁護士はどのように書類作成を手伝ってくれますか?
弁護士は、会社法や相続法などの法的観点から、契約書や議事録のドラフトを作成し、不備がないかチェックします。株主間での合意事項を反映し、トラブルを未然に防ぐ明確な書面を整えることができます。
解説
会社法関連書類
- 定款
会社の基本ルール。事業承継を機に事業目的や株式譲渡制限、取締役構成などを見直すことが多い - 株主名簿・議事録
株主総会や取締役会の決議で代表取締役変更、取締役選任などを確定し、その議事録を登記申請時に添付 - 登記申請書
代表取締役交代、商号・本店移転などの変更がある場合に法務局に提出
契約書関連
- 株式譲渡契約書
後継者へ株式を売買または贈与する際の価格や支払い方法などを定める - 事業承継契約
後継者が引き継ぐ業務範囲やノウハウ移転、競業避止義務などを包括的に規定 - 株主間契約
他の株主との間で経営権をどう扱うか、議決権行使の制限、配当方針などを取り決める
相続・税務関連書類
- 遺言書
親族内承継の場合、株式の集中や他の相続人への配慮を明文化 - 遺産分割協議書
相続人が複数いる場合、株式分配や代償金の支払いなどを定める - 相続税申告書
相続税の期限(死亡から10カ月以内)を守り、必要添付書類(株式評価資料など)を整理 - 事業承継税制の適用申請書
中小企業の納税猶予を利用する場合、計画認定書や雇用維持報告書なども求められる
労務・取引先関連書類
- 就業規則・雇用契約書
後継者就任で組織再編が起きる場合、労働条件変更に関わる規定を整える - 取引契約書の変更
代表者変更や保証人変更が必要となる契約を再締結する場合がある - 金融機関との契約書
融資、根保証、抵当権設定など、代表交代に伴う変更や連帯保証人の切り替え
弁護士に相談するメリット
- 書類の一元管理と作成サポート
株式譲渡契約、遺産分割協議書、株主間契約、就業規則変更など、一括でリーガルチェック - 法令遵守と不備の防止
会社法・相続法・税法など多角的な視点で規定を整え、後からの無効リスクを最小化 - 紛争予防
親族間や従業員との間でのトラブルが発生しそうな場合、事前に契約書へ盛り込む条項を設計 - スムーズな登記手続きと税務連携
代表取締役変更登記、事業承継税制の書類整備などを税理士と連携し、効率的に進行
まとめ
事業承継に必要な書類は、会社法関連(定款・議事録など)、契約書関連(株式譲渡契約・事業承継契約)、相続・税務関連(遺言書・相続税申告書・事業承継税制書類)、労務・取引先関連(就業規則・取引契約書)など多岐にわたります。以下の点を意識して進めましょう。
- 必要書類をリストアップし、時系列で作成・取得
- 株主・親族・従業員・取引先を対象に、それぞれの合意形成や書類整備を念入りに
- 法的リスクを見落とさないため、弁護士に早めに相談して書類をチェック
- 税理士など他士業と連携し、相続税・事業承継税制のメリットも活用
後継者や社員が安心して業務を引き継げるよう、十分な書類整備を心がけましょう。トラブルを未然に防ぐためにも、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。
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