死後事務委任契約のトラブル事例

はじめに

死後事務委任契約は、亡くなった後に必要となる葬儀や役所手続き、遺品整理などの事務を生前に信頼できる第三者に委任する制度です。しかし、どんな契約にもリスクはつきもので、事前に想定外のトラブルが起こることもあります。契約内容が曖昧だったり、報酬・費用負担に関する取り決めが不十分だったりすると、受任者と遺族の間で紛争が起きる可能性もあります。

本記事では、死後事務委任契約のトラブル事例をいくつか紹介し、それらを回避するためのポイントを解説します。大切な死後の手続きを円滑に進めるために、契約締結時点での準備を怠らないようにしましょう。

Q&A

Q1. 死後事務委任契約で起きやすいトラブルは何ですか?

  1. 報酬や費用の不透明さ
    受任者が高額な費用を請求し、遺族が納得しない
  2. 契約範囲が不明確
    葬儀はしてくれたが、遺品整理は対象外だったなど
  3. 遺族との衝突
    受任者の行動に遺族が「そんな意図ではなかった」と反対
  4. 契約解除や変更が必要になったときの手続き不備

Q2. どうすればトラブルを回避できますか?

  • 契約内容を具体的に書面化し、担当業務や報酬額を明確にする
  • 公正証書で作成すると、内容の証拠力が高まり安心
  • 遺族や相続人への連絡方法も契約に明記
  • 弁護士など専門家に依頼し、契約条項の整合性を確認

Q3. 報酬が高額すぎるという問題はよくありますか?

はい、受任者が高額な料金を請求する事例は実際にあります。葬儀や遺品整理の費用だけでなく、受任者の「手数料」や「管理費用」などが不透明だと紛争の原因となります。契約時点で報酬額や支払い方法を詳細に定めるのが重要です。

Q4. 親族がいるにもかかわらず、死後事務委任契約でトラブルになるケースは?

親族が契約内容を知らず、受任者が勝手に手続きを進めたと主張する例があります。たとえば葬儀の規模や遺品の処分方法など、親族の意向と相反すると感情的な対立を引き起こします。親族への情報共有や同意を得ておくことが大切です。

解説

トラブル事例1:費用負担の不透明さ

【状況】
単身のAさんが生前に専門業者Bと死後事務委任契約を締結。ところがAさんが亡くなった後、Bが葬儀費用や遺品整理費用以外に「管理費」など高額な請求をし、Aさんの遺族が「そんな費用は聞いていない」と抗議。

【問題点】

  • 契約書に「費用は別途実費請求」とだけ書かれ、具体的な金額や上限が定められていなかった
  • 遺族が費用負担の責任を負うのか、Aさんの遺産から支払うのかも曖昧

【回避策】

  • 契約時点で費用項目と金額上限を明示
  • 支払い方法(遺産から引き落とすのか、生前に預託するのか)を明記
  • 葬儀や遺品整理の相場を参考に「追加費用には事前連絡を要する」条項を入れる

トラブル事例2:契約範囲の誤解

【状況】
Cさんが死後事務委任契約で「葬儀と役所手続き」を依頼。ところが受任者Dは「住居の賃貸解約・退去立ち合いは契約外」と拒否。Cさんの兄弟が「部屋の片付けまでやってくれると思っていた」と主張し紛争化。

【問題点】

  • 委任契約の対象範囲が「葬儀・埋葬・役所手続き」までしか書かれていなかった
  • D側が住居の片付け・解約まで引き受ける追加料を要求

【回避策】

  • 契約書に具体的な業務リスト(葬儀、埋葬、公共料金解約、遺品整理、賃貸解約など)を列挙
  • 範囲外の業務が発生した場合に、どう協議・費用負担するかを明記

トラブル事例3:親族との衝突

【状況】
Eさんが親族に内緒で知人Fと死後事務委任契約を締結。Eさん死後、FがEさんの希望どおり密葬を行ったが、親族が「普通に葬儀を出してお別れしたかった」と猛反発し、Fを責める事態。

【問題点】

  • 親族が契約の存在を知らず、死後の手続きに参加できなかった
  • 希望や情報の共有がないままFが強行した形に

【回避策】

  • 親族がいる場合、契約内容をできる限り共有しておく
  • 密葬や特異な葬儀形式を希望するなら、親族の気持ちに配慮し、妥協点を探す
  • 受任者にも「遺族への連絡義務」を契約で課す

契約解除や変更でのトラブル

  • 契約途中で受任者を変えたい
    新たな契約を結ぶ際の引継ぎや既存契約の解除が円滑にできず争いに
  • 報酬精算
    受任者が既に準備行為をしており、その費用を誰が負担するか
  • 公正証書の再作成
    私署証書なら比較的容易だが、公正証書の場合は公証人との調整が必要

弁護士に相談するメリット

  1. 契約書のリスク分析
    どんな項目が曖昧か、報酬・費用の算定方法が明確かなどリーガルチェック
  2. トラブル未然防止
    親族間の調整や受任者との交渉を行い、後で紛争にならないよう事前に修正
  3. 契約解除・変更のサポート
    別の受任者に依頼したい場合や契約内容を見直す場合、円滑に手続きを進める
  4. 死後事務と遺言書の整合性
    財産処分(遺言書)と死後事務(委任契約)を連動させて矛盾なく作成

まとめ

死後事務委任契約は、単身者や親族に負担をかけたくない方にとって有用な制度ですが、トラブルが発生するリスクもあります。
主なトラブルとしては、

  1. 報酬・費用の不透明
  2. 業務範囲の誤解
  3. 親族との衝突
  4. 契約解除や変更に伴う問題

これらを回避するには、具体的な契約書の作成、報酬負担の明確化、親族や受任者との情報共有が欠かせません。最終的には、弁護士のサポートを受け、公正証書で契約を作成すると安心です。

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