はじめに
Q: 高齢の家族が遺言書を作成したいと話していますが、自筆で書くのが難しいことや、施設に入所していて公証役場に行けないなど、様々な事情があります。どのように進めれば良いでしょうか?
A: 高齢者が遺言書を作成する際には、身体的・精神的な制約や法律的なリスクを考慮し、適切な方法を選ぶことが重要です。特に、自筆証書遺言が難しい場合は公正証書遺言の活用を検討する、公証人や弁護士の出張サービスを利用する、さらに遺言の有効性を確保するための証拠を準備するなど、いくつかの対策が必要です。本記事では、遺言書作成の基礎知識から高齢者特有の留意点、解決策までを解説します。
遺言書とは
遺言書は、遺言者の意思を相続に反映させるための重要な法的文書です。遺言がない場合、相続財産は民法に定められた法定相続割合に従って分配されますが、遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されます。
遺言書には主に以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言
遺言者がすべてを手書きで作成するもの。近年では法務局で保管する制度も利用できます。 - 公正証書遺言
公証人が作成する遺言で、法的に最も信頼性が高い形式です。 - 秘密証書遺言
遺言内容を秘密にしたまま公証役場で保管する形式。ただし利用頻度は少なめです。
高齢者が遺言書を作成する場合、これらの形式のどれを選ぶかで、作成手順や準備すべき事項が異なります。
高齢者が遺言書を作成する場合の留意点
1. 身体的な制約
高齢者の中には、手が不自由だったり視力が低下していたりして、自筆証書遺言を作成するのが困難な方も多くいます。自筆証書遺言は全文を自書する必要があるため、身体的な制約がある方にはハードルが高い形式です。
2. 精神的な健康状態
遺言が有効であるためには、作成時点で遺言者が判断能力を有していることが求められます。高齢者の場合、認知症などにより判断能力が低下している場合には、遺言の効力が争われるリスクがあります。
3. 移動の困難さ
高齢者が公証役場や法律事務所へ出向くことが難しいケースもあります。特に入院中や施設に入所中の場合、外出ができないことが大きな障壁となります。
4. 遺言の内容が相続人間のトラブルの原因となる可能性
特定の相続人に財産を集中させる内容の遺言は、他の相続人の不満を招き、遺言の有効性が争われることがあります。
5. 成年後見人がついている場合
成年後見人がついている方は、基本的に遺言書を作成できません。ただし、民法第973条に基づき、公正証書遺言であれば一定の条件下で作成可能です。
高齢者が遺言書を作成する場合の対策
1. 公正証書遺言の活用
身体的制約や自筆が難しい場合は、公正証書遺言を検討するのが最善です。公証人が遺言書の作成をサポートし、ご本人は内容を確認して署名・押印するだけで済みます。また、署名ができない場合でも、公証人が本人の意思を確認したうえで代筆や代印を行うことができます(民法第968条)。
2. 出張サービスの利用
移動が困難な場合、弁護士や公証人の出張サービスを利用することが可能です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、ご自宅や施設への出張を柔軟に対応しています。公正証書遺言の作成時には、公証人も現地に出向く手配ができます。
3. 判断能力を証明する証拠の準備
遺言の有効性が争われないよう、作成時点で判断能力が十分にあったことを証明する証拠を準備しましょう。以下の方法が有効です。
- 診断書の取得
主治医から作成時点の健康状態に関する診断書を取得します。 - 録音や録画
遺言作成時の様子を記録することで、本人の意思が明確であったことを証明できます。
弁護士に相談するメリット
高齢者が遺言書を作成する際、弁護士に相談することで以下のメリットがあります。
- 法的リスクの回避
弁護士は遺言の形式や内容が法律に適合しているかを確認し、後々の無効リスクを防ぎます。 - 専門的なサポート
遺言の内容が法定相続人の遺留分を侵害していないか、相続人間の争いを防ぐためにどのような配慮が必要かなど、専門的なアドバイスを提供します。 - 迅速かつ柔軟な対応
公正証書遺言の作成、公証人の手配、診断書取得のサポートなど、一連の手続きをスムーズに進めます。
まとめ
高齢者が遺言書を作成する際には、身体的・精神的な制約を考慮しながら、法的に有効で争いのない内容に仕上げることが重要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、高齢者の遺言書作成を総合的にサポートしています。公正証書遺言の活用、出張対応、判断能力の証明支援など、様々な課題に対応可能です。
遺言書作成に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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