配偶者の相続権と相続割合

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はじめに

相続では、配偶者が常に相続人になるという特別な地位が法律で定められています。結婚は単なるパートナーシップではなく、法律上の戸籍関係を生じさせる重要な制度であり、配偶者には他の相続人とは異なる特有の優遇が与えられているのです。

しかし、「配偶者だからどんな場合も自由に財産を引き継げる」というわけではありません。たとえば、子どもがいるとき・いないとき、あるいは親や兄弟姉妹が相続人になる場合などで、配偶者の取り分は変動します。

本記事では、配偶者の相続権と相続割合を中心に、具体的な事例や留意点を交えながら解説します。

Q&A

Q1. 法律上の配偶者とは?

民法上の婚姻関係(戸籍上の結婚届)が成立している相手のことです。内縁や事実婚、同性パートナーシップは、法律上の「配偶者」には含まれないため注意が必要です。

Q2. 配偶者は常に相続人になるのですか?

はい、民法の規定で常に相続人となります。被相続人が子を持っているかどうか、あるいは親や兄弟姉妹が存命かどうかに関係なく、配偶者は必ず相続人となります。

Q3. 配偶者の相続分はどのように決まりますか?

法定相続分として、下記のように定められています。

  • 子がいる場合:配偶者1/2、子の合計1/2
  • 直系尊属(親)がいる場合:配偶者2/3、直系尊属1/3
  • 兄弟姉妹がいる場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

Q4. 財産をすべて配偶者に譲ることはできないの?

生前に遺言書で配偶者にすべて譲る旨を記載することは可能ですが、遺留分の問題が生じる場合があります。子や直系尊属には遺留分が認められるので、法律上最低限の取り分を請求されるリスクがあるのです。

Q5. 別居中や離婚調停中の場合でも配偶者は相続人ですか?

法律上まだ婚姻関係が継続しているならば、実質的に離婚状態でも配偶者として相続権を有します。正式に離婚が成立していない限り、相続発生時には相続人になる点に注意が必要です。

解説

配偶者の相続割合

1)配偶者と子が相続人の場合

  • 配偶者の相続分:1/2
  • 子の相続分:1/2(子が複数いる場合は1/2を等分)

2)配偶者と直系尊属(親)が相続人の場合

  • 配偶者の相続分:2/3
  • 直系尊属の相続分:1/3(親が複数人いる場合は1/3を等分)

3)配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

  • 配偶者の相続分:3/4
  • 兄弟姉妹の相続分:1/4(兄弟姉妹が複数なら1/4を等分)

配偶者短期居住権・配偶者居住権

  • 配偶者短期居住権
    2020年(令和2年)の相続法改正で新たに設けられた制度で、相続開始後、一定の期間は配偶者が引き続きその住居に居住できる権利です。
  • 配偶者居住権
    配偶者が亡くなった夫(妻)の持ち家に住み続けられるようにするための権利。財産を分配する際、不動産の評価額を抑えつつ、配偶者が住む家を確保できるメリットがあります。

相続税の軽減措置

  • 配偶者に対する相続税の軽減
    一定の要件を満たせば、配偶者が取得した財産について相続税が大幅に減額される(もしくは実質ゼロになる)制度があります。具体的には「配偶者の法定相続分」または「1億6千万円」のいずれか大きい方まで、相続税がかからないという取り扱いです。

内縁・事実婚の配偶者問題

  • 内縁関係では相続権なし
    いくら長年生活を共にしていても、法律上は「婚姻していない」ため、法定相続人とはなりません。生前贈与や遺贈の活用が重要となるケースです。
  • 遺言書の活用
    内縁のパートナーに財産を残したい場合には、遺言書作成が必要となります。

配偶者が相続放棄する場合

  • 放棄のメリット・デメリット
    被相続人に多額の債務がある場合、配偶者が相続放棄を選ぶこともあり得ます。しかし、放棄するとプラスの財産も受け取れないため、慎重な判断が必要です。
  • 家庭裁判所での手続き
    相続放棄は相続開始を知った時から3カ月以内に家庭裁判所に申述します。

弁護士に相談するメリット

  1. 相続分に応じた適切な遺産分割案の作成
    配偶者には特別な権利や税制上の優遇が存在しますが、他の相続人との兼ね合いで円満に解決するには、法的知識に基づく調整が必要です。弁護士が仲介することで合意形成をスムーズに進められます。
  2. 配偶者居住権の設定・活用
    住宅に引き続き住む意思が強い配偶者にとっては、配偶者居住権をどのように設定するかが重要です。登記手続きや評価額の調整を含め、専門家の助言があると安心です。
  3. 相続放棄や限定承認のサポート
    遺産のマイナス面が大きい場合、放棄や限定承認などの手続きを検討する必要があります。弁護士なら、リスクを総合的に評価してアドバイスを提供できます。
  4. 遺言書の作成支援
    生前に「配偶者にどの程度財産を残すか」を決めておきたい場合、弁護士を通じて法的に有効かつ無用なトラブルを招かない遺言書を作成できます。

まとめ

配偶者は法律上、常に相続人として優遇された地位にありますが、「絶対にすべての財産を自動的に獲得できる」わけではありません。

  • 子どもがいる場合は1/2
  • 親がいる場合は2/3
  • 兄弟姉妹がいる場合は3/4

上記の法定相続分をベースに、場合によっては遺留分や配偶者居住権、相続税軽減制度などさまざまな法律上の権利・制度が絡んできます。

家族構成や財産状況によって、配偶者の取り分をめぐるトラブルも起きやすいため、不安があれば早めに専門家へ相談しましょう。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、配偶者側・他の相続人側どちらの立場でも、法的な視点から最適な解決を目指すお手伝いをいたします。


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