はじめに
死後事務委任契約は、委任者が生前に契約し、死後に発生する諸手続きを受任者に委任する制度です。しかし、契約を結んだ後に「やはり別の人にお願いしたい」「契約内容を変更したい」といった事情が生じることもあるでしょう。そうした場合、どのように契約を解除または修正できるのかを理解しておかないと、誤った手順で不備を引き起こす可能性があります。
本記事では、死後事務委任契約における契約解除の方法と、その際に気を付けるポイントを解説します。契約を安全かつスムーズに解除・変更するための基本知識としてご参照ください。
Q&A
Q1. 死後事務委任契約は途中で解除できますか?
はい、委任契約は当事者がいつでも解除できるのが原則です(民法の規定)。ただし、公正証書で結んでいる場合には、解除の手続きも含めて書面化や通知方法を慎重に行う必要があります。
Q2. 契約解除の方法は?
一般的には、
- 解除の意思表示(書面、内容証明郵便などで通知)
- 受任者への連絡(必要書類や預託金の返還方法を協議)
を踏む形になります。
Q3. 解除時に違約金や損害賠償は発生しますか?
原則として、委任契約はいつでも解除が可能ですが、受任者が契約に基づいて準備をしていた費用や損害があれば、実費や損害賠償を請求される可能性はあります。契約書で違約金の条項を定めている場合もあるため、内容を確認してください。
Q4. 契約内容を一部変更したい場合は、どうすればいいでしょう?
追加契約(変更契約)を締結し、元の契約と矛盾しないよう条項を更新する形が一般的です。公正証書であれば、公証人に変更契約を公正証書化してもらう方法もあります。
解説
解除の基本ルール
- 任意解除
- 民法では、委任契約は当事者がいつでも解除できると規定
- ただし、一方的に解除する際、相手方が損害を被ったなら補償が必要な場合あり
- 受任者側からの解除
受任者も正当な理由があれば契約をやめられる。ただし、委任者が不利益を被らないように配慮する義務がある
具体的な解除手順
- 解除意思の伝達
口頭だけでなく、書面(内容証明郵便など)で意思表示を行い、受任者(契約相手方)に確実に通知 - 預託金や書類の返還
受任者に預けていた契約書原本、資金などをどう返還するか協議 - 変更契約(全面解除ではなく一部変更の場合)
新たな契約書を作り、旧契約との関係や改定箇所を明確に
注意点・リスク
- 損害賠償・実費精算
受任者が既にいくつか手続きを準備していた場合、経費負担や労力に対する補償が必要かもしれない - 契約書の条項確認
事前に「解除する際は〇日前までに通知」といった条項があることも - 後任の受任者
既存の契約を解除するなら、代わりに他の専門家や親族と新たに契約を結ぶなどの手配を並行して進めたほうが良い - 口頭合意の不安定性
書面化を怠ると、後で「解除は無効」「聞いていない」と揉めるケースがあるため、必ず書面で残す
契約解除後の対応
- 新たな契約先の確保
死後事務を任せる先が必要な場合、別の受任者と契約を結び直す - 書面やパスワードの回収
受任者に預けていた重要書類やSNSアカウント情報などを引き取る - 家族や関係者への連絡
以前の契約が解除になった旨を必要に応じて説明
弁護士に相談するメリット
- 契約書条項の精査
解除条項や違約金の有無などを確認し、適切な解除手続きを設計 - 書面化と通知代理
内容証明郵便などで解除意思を正式に伝える際、弁護士が代理して確実に送付 - 損害賠償トラブルを防ぐ
受任者が費用や手間をかけていた場合の清算方法を法的に適正に調整 - 再契約のサポート
新たな受任者を選ぶ場合、契約書作成や公正証書化を再度サポート
まとめ
死後事務委任契約は、委任者(本人)が亡くなる前に締結しておく契約ですが、何らかの理由で途中で解除(または一部変更)したい場合も考えられます。以下に注意して進めましょう。
- 民法上、委任契約はいつでも解除できる(ただし補償問題に留意)
- 書面(内容証明など)で解除の意思を通知し、後から「聞いていない」と言われないようにする
- 受任者が既に動いていた場合、実費精算や損害賠償が発生する可能性がある
解除後に別の受任者と新たな死後事務委任契約を結ぶ場合は、その旨も計画的に進めると良いでしょう。困ったときは弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談いただき、トラブルリスクを最小化した契約解除手続きを行ってください。
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