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知っておきたい遺言書の撤回方法:適切な手続きとポイント

2024-10-18
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知っておきたい遺言書の撤回方法:適切な手続きとポイント

Q: 以前作成した遺言書の内容を変えたいのですが、どうやって撤回すればよいのでしょうか?

A: 遺言書は、人生の変化に伴って見直しが必要になることがあります。例えば、家族関係の変化や財産状況の変動などで、以前の遺言書が現状に合わなくなる場合があるでしょう。このような場合、遺言書を撤回することができますが、撤回には適切な手続きが求められます。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの形式があり、それぞれの形式に従った撤回方法があります。本稿では、それぞれの形式に基づく撤回方法と注意点について解説し、遺言書を撤回する際に考慮すべきポイントもご紹介します。

遺言書の撤回方法とは?

自筆証書遺言の撤回方法

自筆証書遺言とは、遺言者が全て自分の手で書き上げた遺言書です。この形式の遺言書を撤回するには、同じく自筆で「○○年○○月○○日付の自筆証書遺言を撤回する」と記載し、署名と印を押した書面を作成する必要があります。また、自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言や秘密証書遺言の形式で撤回することも可能です。自筆証書遺言の一部だけを変更することもできますが、その際には変更箇所を手書きで修正し、修正箇所に署名と印を付ける必要があります。変更が加えられた部分は明確に記録されなければならないため、「○○頁○○行目○○字削除、○○字加筆」といった具合に詳細を記載しなければなりません。

公正証書遺言の撤回方法

公正証書遺言は、公証人が遺言者の意向を聞き取って作成し、公証役場で保管される信頼性の高い遺言書です。この形式の遺言書を撤回するには、新たな公正証書遺言を作成するか、他の形式の遺言書を作成することで撤回できます。ただし、公正証書遺言の撤回には注意が必要です。公証役場に保管されている原本を破棄することはできないため、新たに作成した遺言書を提出することが重要です。また、内容を変更したい場合も、新たな遺言書を作成し直す必要があります。

秘密証書遺言の撤回方法

秘密証書遺言とは、遺言書の内容を秘密にしたまま遺言の存在だけを公証人に確認してもらう形式です。この遺言書の撤回は、他の形式での撤回も可能ですが、封印されている遺言書を変更することはできません。そのため、内容を変えたい場合は、新たに遺言書を作成する必要があります。

撤回が推定される場合とは?

特定の状況下では、遺言書をわざわざ撤回する手続きを行わなくても、撤回されたとみなされる場合があります。例えば、異なる内容の遺言書を新たに作成した場合、後から作成された遺言書の内容が優先され、前の遺言書は撤回されたと見なされることがあります。これにより、前の遺言書の効力はなくなり、新しい遺言書のみが有効となります。また、遺言内容に関わる財産を処分した場合、その処分により遺言の内容と矛盾することになり、遺言が撤回されたと見なされることがあります。

遺言書を破棄した場合の影響は?

遺言者が遺言書を意図的に破棄した場合、破棄された部分に関しては、その遺言が撤回されたとみなされます。遺言書を破棄する方法は、遺言書の形式によって異なります。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、シュレッダーにかけたり燃やしたりするなど、完全に破棄することが求められます。特に、自筆証書遺言に関しては、法務局での保管が可能であり、保管された遺言書を撤回するには法務局への出頭が必要です。この際、保管を撤回した遺言書は遺言者に返還されるため、確実に廃棄することが重要です。

一方、公正証書遺言の場合、遺言書の原本は公証役場に保管されているため、手元にある謄本を破棄しても遺言の効力に影響はありません。公正証書遺言を撤回する場合は、新たな遺言書を作成し、古い遺言書の謄本を処分することで、誤解を避けることができます。なお、遺言書の原本は一定期間公証役場に保存されるため、削除を依頼することはできません。

違う遺言形式への変更は可能か?

遺言書を撤回する際、異なる形式の遺言書を作成することは可能です。例えば、自筆証書遺言を撤回し、新たに公正証書遺言を作成することができます。このような変更は、遺言書の内容をより適切に反映させるために行われます。ただし、形式を変更する際には、新たな遺言書が法律の要件を満たしていることを確認する必要があります。要件を満たさない遺言書は無効となり、前の遺言書が有効なままとなる可能性があります。そのため、遺言書を変更する際は、専門家の助言を受けることが望ましいといえます。

弁護士に相談することの重要性

遺言書の撤回や新たな作成にあたっては、法的な要件を満たすことが極めて重要です。形式を誤ると、せっかく作成した遺言書が無効になってしまうリスクがあります。弁護士に相談することで、遺言書が法律的に有効であるかどうかを確認し、確実に遺言者の意思を反映させることができます。さらに、遺言書を作成する際には、財産の評価や相続人間の調整も必要となりますが、これらの業務を弁護士に依頼することも可能です。弁護士のサポートを受けることで、相続に関するトラブルを未然に防ぐことができ、遺言者の意思を尊重した円滑な相続が実現します。

まとめ

遺言書の撤回は、法律に定められた形式に従って行う必要があります。不適切な撤回は、遺言書が無効になるリスクを生じさせ、遺言者の意思が反映されない可能性があります。遺言書を確実に撤回し、新たな遺言を有効に作成するためには、専門家のサポートを受けることもご検討ください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、遺言書の作成や撤回に関するご相談を受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。


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相続財産に借金があるかを確認する方法とチェックポイント

2024-10-17
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はじめに 

相続の際、遺産にはプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。そのため、相続人は借金の有無を早急に確認し、相続放棄や限定承認といった対策を検討する必要があります。本記事では、相続財産に借金があるかどうかを調べる方法や、借金が発覚した場合の対処法について解説します。

Q&A

Q1: 親が亡くなった後、借金が残っているかどうか不安です。どのように確認すればよいですか?

A1: 相続財産に借金があるかどうかを確認するためには、まず家の中にある書類や通帳を確認し、借金の契約書や督促状を探すことが第一歩です。また、消費者金融や銀行の個人信用情報機関に対して情報開示請求を行うことで、亡くなった方の借金の詳細を調べることが可能です。借金が発覚した場合は、相続放棄などの対策を速やかに検討する必要があります。

Q2: 借金が多い場合、相続放棄を考えた方が良いと聞きましたが、本当ですか?

A2: はい、その通りです。借金が相続財産より多い場合は、相続放棄を検討することが重要です。相続放棄を行うことで、相続人は借金を負担することを避けられます。ただし、相続放棄の期限は原則として被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内ですので、早急に対応する必要があります。専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。

借金があるか調べる方法

1. 家の中の書類等の確認

亡くなった方が借金をしていた場合、その契約書が家の中に残っていることがあります。また、通帳の履歴からも借金の返済状況が確認できる場合があります。これらの書類を確認することで、借金の有無を調べることができます。

2. 個人信用情報の開示請求

銀行や消費者金融からの借金については、専門の信用情報機関が管理しているため、これらの機関に情報開示を請求することで借金の有無を確認できます。代表的な機関には以下があります。

株式会社日本信用情報機構(JICC)
消費者金融からの借金に関する情報が一元管理されています。 
https://www.jicc.co.jp/

株式会社シー・アイ・シー(CIC)
クレジット会社からの借金に関する情報が管理されています。
https://www.cic.co.jp/

一般社団法人全国銀行協会
銀行からの借金に関する情報が管理されています。
https://www.zenginkyo.or.jp/

3. 全ての債務を調べるのは困難な場合もある

個人間の借金や、書類が不十分な場合は、その情報を管理している機関がないため、調査が難しくなります。このような場合は、専門家の助けを借りることもご検討ください。

弁護士に相談するメリット

相続放棄や借金の確認手続には専門的な知識と迅速な対応が求められます。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関する豊富な経験をもとに、適切なアドバイスとサポートを提供しています。また、戸籍の収集や信用情報の開示請求など、煩雑な手続きも代行いたします。相続財産に借金があるかどうか不安な方は、お早めにご相談ください。

まとめ

相続財産に借金が含まれているかを確認することは、相続手続きにおいて重要です。家の中の書類確認や信用情報機関への問い合わせを通じて、借金の有無を早急に把握することが求められます。万が一、借金が発覚した場合は、相続放棄などの対応を迅速に行う必要があります。相続に関する不安や疑問がある方は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。


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相続財産における不動産調査の重要性とその具体的方法

2024-10-16
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相続財産(不動産)の調査方法と注意点

はじめに

相続において、不動産の調査は非常に重要です。しかし、被相続人(亡くなられた方)が所有していた不動産をすべて把握することは、思ったよりも難しい場合があります。不動産の見落としがあれば、相続手続が不完全となり、後日再度の手続が必要になることもあります。本稿では、不動産の相続調査の方法について、具体的な手順や注意点を中心に解説いたします。

Q&A

Q: 被相続人が複数の不動産を所有していた場合、どのようにその全体を把握すればよいのでしょうか?

A: 被相続人が複数の不動産を所有していた場合、まず固定資産税納税通知書を確認することが一般的です。この通知書には、被相続人が所有する不動産の一覧が記載されており、その内容を基に不動産の全体像を把握することができます。しかし、固定資産税納税通知書だけでは、すべての不動産を網羅しているとは限りません。たとえば、固定資産税が課税されない不動産や、被相続人が過去に相続した先代名義の不動産が含まれていない場合があります。そのため、名寄帳(固定資産課税台帳記載事項証明書)を市町村役場で取得し、これらの不動産も含めた調査を行うことが重要です。また、専門家に調査を依頼することで、見落としを防ぐことができます。

1.不動産調査の重要性

被相続人が自宅以外にも不動産を所有している場合、その全体を正確に把握することが相続手続をスムーズに進めるために必要です。不動産が一部でも調査から漏れてしまうと、相続手続が不完全となり、後日再度の手続が必要になる恐れがあります。たとえば、固定資産税が課税されない不動産や、先代名義の不動産が見逃されると、相続人間でのトラブルや手続きの遅延を引き起こす可能性があります。これを防ぐために、不動産調査は細心の注意を払って行うべきです。

2.固定資産税が課税されない不動産の存在

固定資産税納税通知書には、固定資産税が課税される不動産のみが記載されますが、固定資産税が課税されない不動産も存在します。例えば、公衆用道路やため池、低価値の水路などは課税対象外であり、納税通知書には記載されません。こうした不動産も相続手続の際には確認しておく必要があります。これを見落としてしまうと、重要な不動産が相続手続から漏れてしまう可能性があります。特に、自宅への唯一の入り口が公衆用道路であった場合、その道路が相続手続に含まれなければ、後に問題が生じることになります。このような事態を避けるためにも、名寄帳(固定資産課税台帳記載事項証明書)を取得し、課税されない不動産も含めた全体の調査を行うことが重要です。

3.不動産の名義の確認

多くの方は、固定資産税納税通知書によって、被相続人が所有する不動産を把握します。この通知書には、被相続人名義の不動産がすべて記載されていますが、ここで注意が必要なのは、先代名義の不動産の存在です。先代名義の不動産も相続財産に含まれ、遺産分割の対象となります。しかし、先代名義の不動産については、被相続人名義の固定資産税納税通知書とは別に通知書が届くため、見落とされがちです。このため、不動産調査の際には、先代名義の不動産にも十分に注意することが求められます。固定資産税納税通知書を確認するだけでなく、先代名義の不動産があるかどうかを市町村役場に確認するなどの手続きを行うことが重要です。

4.弁護士に相談するメリット

相続における不動産調査は、専門的な知識と経験が求められる作業です。弁護士に相談することで、次のようなメリットがあります。

  • 法的リスクの回避: 不動産の調査や相続手続には、法律上のリスクが伴います。特に不動産の相続に関する法律は複雑で、一般の方がすべてを理解し、正確に対応するのは困難です。弁護士に依頼することで、これらの法的な誤りを回避し、スムーズに手続を進めることができます。
  • 手続の効率化: 弁護士が代行することで、手続を迅速かつ正確に進めることができます。弁護士は相続手続における必要書類の準備や、各種手続きの進行管理を行いますので、相続人が負担を軽減できます。
  • 相続人間の調整: 相続人間での意見の相違が生じた場合、弁護士が調整役を果たすことで、円満な解決を図ることができます。弁護士が第三者として公平に関与することで、感情的な対立を避け、建設的な解決策を導くことが可能です。

まとめ

相続における不動産の調査は、その後の手続に大きく影響を与える重要な作業です。固定資産税納税通知書を基に不動産を把握するだけでなく、先代名義や固定資産税が課税されない不動産についても注意深く調査することが求められます。さらに、専門家の協力を得ることで、より正確かつ効率的に相続手続を進めることができます。


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実家を売却して相続をスムーズに進める方法とは? 換価分割のポイント

2024-10-15
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はじめに

相続が発生し、実家を受け継いだものの、遠方にあり維持が難しいと感じることがあるでしょう。そのような場合、実家を売却し、その売却金を相続人で分ける「換価分割」という方法があります。しかし、この手法を進めるには、法律や税務の知識が必要であり、注意点も存在します。本記事では、換価分割の基本的な手順や、進める際に気をつけるべきポイントについて解説します。

Q&A

Q: 実家を売却して相続人で分ける方法を考えていますが、どのように進めれば良いでしょうか?

A: 実家を売却してその売却金を相続人間で分ける方法は、「換価分割」と呼ばれます。この手続きは、遺産分割協議を行い、相続人全員の同意を得ることから始まります。その後、不動産の相続登記を行い、適切な売却先を見つけて売却金を分配します。具体的な手順や注意点については、以下で説明します。

換価分割の基本

換価分割の概要

換価分割とは、相続財産である不動産などを売却し、その売却金を相続人間で分ける方法です。この方法では、売却した資産の代金を法定相続分に基づいて均等に分配します。たとえば、2人の子供が相続人で、不動産が6000万円で売れた場合、売却経費を差し引いた金額を均等に分けることが可能です。

他の分割方法との比較

  • 代償分割: ある相続人が財産を取得し、その代わりに他の相続人に対して現金を支払う方法です。
  • 現物分割: 財産をそのままの形で分ける方法。たとえば、不動産を分割して各相続人が取得する場合などが該当します。

換価分割が適している場合

誰も財産を現物で受け取りたくない場合

実家が遠方にあり、管理が難しい、もしくは維持費が負担になる場合には、実家を売却し現金で分ける方が合理的です。

公平な分割が求められる場合

現物分割では、土地や不動産の価値が不均衡になることがあるため、公平な分配を希望する場合には、換価分割が適しています。

代償金の支払いが困難な場合

相続人の中に代償金を支払うだけの資力がない場合、換価分割を選択することで、負担を分散させることができます。

換価分割の進め方と重要なポイント

手続きの流れ

  • 遺産分割協議を行う: まず、相続人全員が同意することが必要です。遺産分割協議により、全員の合意を得た上で、実家を売却してその売却金を分けることを決定します。
  • 遺産分割協議書の作成: 次に、協議の内容を文書化し、全員が署名・押印します。この協議書は、相続登記や売却の際に必要となります。
  • 相続登記を行う: 法務局に申請し、不動産の名義を相続人に移します。この手続きにより、不動産を正式に相続人のものとし、売却が可能になります。
  • 不動産の売却: 不動産業者に依頼し、物件の売却活動を行います。適切な買い手が見つかれば、売買契約を締結し、売却金が代表者の口座に振り込まれます。
  • 売却金の分配: 売却金から諸経費を差し引いた金額を相続人間で分配します。分配の割合は、法定相続分に基づきますが、遺産分割協議で別の割合にすることも可能です。

注意すべき点

  • 諸費用の発生: 不動産売却には、不動産業者の仲介手数料や測量費など、様々な費用がかかるため、手元に残る金額が目減りする可能性があります。
  • 売却が困難な場合: 不動産が売れない場合でも、相続税の支払い期限は守らなければなりません。事前に売却の見通しを立てることが重要です。
  • 譲渡所得税の発生: 空き家を相続した場合、譲渡所得税の控除を受けるためには、特定の期限内に売却を完了させる必要があります。期限を過ぎると、通常の譲渡所得税が課せられるため、売却のタイミングが重要です。

専門家に相談するメリット

換価分割の手続きは複雑であり、法律や税務に関する知識が必要です。弁護士に相談することで、正確かつ迅速に手続きを進めることができます。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関するご相談を総合的にサポートしており、安心してお任せいただけます。

まとめ

換価分割は、相続財産を現金化し、公平に分配するための有効な方法です。しかし、その手続きには多くの専門知識が必要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関する様々な問題について、対応しておりますので、ぜひご相談ください。


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未登記建物の相続におけるリスクと対策

2024-10-14
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はじめに

未登記建物を相続する際には、特有の課題が多く存在します。特に、相続登記が義務化される令和6年4月以降、未登記建物に対する適切な対応がより重要となります。本稿では、未登記建物の相続における注意点や遺産分割協議書の作成方法、登記手続き、そして弁護士への相談のメリットについて解説します。

Q&A

Q: 未登記建物を相続する場合に特に注意すべき点は何ですか?

A: 未登記建物を相続する場合、まず登記を適切に行うことが重要です。特に令和6年4月から相続登記が義務化されるため、早急に対応する必要があります。遺産分割協議書を作成する際には、未登記建物を特定するための情報を正確に記載することが求められます。

1. 未登記建物とは?

未登記建物とは、表題登記がなされていない建物のことを指します。登記簿には不動産の物理的情報が記載される「表題部」と、権利に関する事項が記載される「権利部」があります。表題部の記載がない建物が未登記建物とされます。

法改正と相続登記の義務化

令和6年4月1日から、相続登記が義務化されます。これにより、相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。相続人は相続開始から3年以内に登記を行う義務があります。これまで任意だった相続登記が義務化される背景には、所有者不明の土地や建物が増加していることがあります。所有者が不明なまま放置された不動産は、社会的な問題を引き起こし、公共事業や災害対策に支障をきたすことがあるため、法改正が行われました。

2. 未登記建物の相続の手順

相続財産の確認

相続財産に未登記建物が含まれているかを確認するためには、財産目録を作成することが一般的です。財産目録には、相続財産を特定するための情報が記載されますが、未登記建物は登記されていないため、名寄帳や納税通知書を参考にすることで特定することが重要です。未登記建物の存在を見落とすと、遺産分割協議が不完全なものとなり、後々問題が発生する可能性があります。

遺産分割協議

相続人が複数いる場合、遺産分割協議を行い、未登記建物を誰が相続するかを決定します。この協議では、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割のいずれかの方法が選ばれます。例えば、現物分割では、建物そのものを相続人の一人が受け取ることができ、他の相続人には代償として現金を支払うといった方法が取られることがあります。一方、共有分割は不動産を複数人で共有する方法ですが、将来的なトラブルを避けるため、慎重に検討する必要があります。

共有分割を選択すると、将来的な相続人の増加により権利関係が複雑化し、不動産の売却や管理が困難になることがあります。このため、共有分割はあくまで例外的な方法と考え、他の方法を優先的に検討することが望ましいです。最終的に合意が得られた場合は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印することで、法的な効力が生じます。

遺産分割協議書の書き方と登記の手続き

遺産分割協議書の作成

未登記建物がある場合、遺産分割協議書には、その建物を特定するための情報を正確に記載することが求められます。具体的には、固定資産評価証明書や名寄帳に記載されている内容を基に、建物の所在地や構造、面積などの情報を詳細に記載します。また、未登記建物であることを明示するために、「(未登記)」という表記を用いることが一般的です。

遺産分割協議書に記載される内容は、後の登記手続きにも影響するため、誤りがないように注意深く作成する必要があります。特に、複数の未登記建物が存在する場合、それぞれを明確に区別できるよう、情報を整理して記載することが重要です。

登記の手続き

未登記建物の相続が決定した場合、その建物に対して表題登記を行う必要があります。表題登記とは、建物の物理的な情報を公示するための登記で、これを行わないと所有権の保存登記ができません。登記に必要な主な書類としては、登記申請書、建物図面・各階平面図、建築確認通知書、工事完了引渡証明書などが挙げられます。

表題登記を行うことで、初めてその建物の所有権が公示され、所有者としての権利を主張することが可能になります。これにより、建物を売却する際や、金融機関からの融資を受ける際にも、登記があることでスムーズに手続きを進めることができます。

弁護士に相談するメリット

相続財産調査

未登記建物の相続手続きには、専門的な知識が求められます。弁護士に相談することで、相続財産の調査を迅速かつ正確に行うことができます。未登記建物は、登記がないために存在が見落とされがちですが、弁護士が名寄帳やその他の資料を基に、相続財産を特定します。

遺産分割協議の円滑な進行

遺産分割協議は、相続人同士の利害関係が絡み合うため、トラブルが発生することも少なくありません。特に未登記建物が絡む場合、適切な遺産分割協議書を作成することが難しくなります。弁護士に相談することで、専門家として公平かつ妥当な分割方法を提案し、相続人全員の合意を得ることができます。これにより、スムーズな手続きが可能となり、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。

まとめ

未登記建物の相続手続きには、注意すべきポイントが多く存在します。特に、相続登記が義務化される今後は、未登記建物を放置することができなくなります。適切な手続きを行わないと、過料の対象となるリスクもあるため、早急に対応することが重要です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関する豊富な知識と実績を持つ弁護士が在籍しており、相続手続についても安心して相談することができます。相続に関する疑問や不安がある場合は、ぜひ専門家にご相談ください。


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代襲相続を避けるための手続きと注意点

2024-10-13
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代襲相続を避けるための手続きと注意点

Q1: 「親が亡くなり、相続が発生したのですが、財産だけでなく借金も相続しなければならないのでしょうか?もし借金を相続したくない場合、どのような手続きを取ればよいのでしょうか?」

A1: 親が亡くなり相続が発生すると、基本的に財産と借金の両方を相続することになります。しかし、借金だけを相続したくない場合は「相続放棄」という手続きを行うことが可能です。相続放棄をすると、法律上、最初から相続人ではなかったとみなされるため、借金を含む一切の財産や負債を相続する義務がなくなります。ただし、相続放棄を行う際には、他の相続人との調整が必要です。代襲相続の場合も同様に、相続放棄を行うことで負債を引き継ぐ義務を免れることができますが、その影響は他の親族にも及ぶため、十分な話し合いや確認が必要です。

代襲相続の基礎知識

1. 代襲相続とは?

代襲相続とは、相続が開始される前に、法定相続人がすでに死亡していた場合に、その者の直系卑属(子や孫など)が代わりに相続人となることを指します。例えば、被相続人の子が相続開始前に死亡していた場合、その子の子(つまり孫)が代襲相続人となり、相続権を引き継ぎます。この制度は、法定相続人が死亡している場合に、その血族関係を重視し、相続権を次の世代に引き継がせるためのものです。

代襲相続の代表的な例として、祖父母の遺産を相続する際に、その子である父親がすでに亡くなっている場合があります。この場合、父親の子である孫が代襲相続人となり、祖父母の遺産を相続することになります。ただし、代襲相続には、いくつかの制約や条件があります。例えば、代襲相続人がさらに死亡している場合、その子が再代襲相続人となります。このように、代襲相続は血族間の相続を重視し、世代を超えて相続権を維持する制度です。

また、代襲相続は、法定相続人が相続欠格事由に該当する場合や、被相続人から廃除された場合にも適用されます。つまり、相続開始前に死亡していなくても、法定相続人が相続権を失った場合には、その直系卑属が代襲相続人となることがあります。

2. 代襲相続における遺留分

遺留分とは、法定相続人に最低限保証される相続分を指します。遺留分は、被相続人が遺言により全ての財産を他人に遺贈した場合でも、法定相続人が一定の割合の相続財産を受け取る権利を持つことを保障するための制度です。代襲相続人にもこの遺留分の権利が認められています。

具体的には、遺留分の割合は法定相続分の半分と定められており、直系尊属のみが相続人の場合には、その3分の1が遺留分となります。ただし、代襲相続人が兄弟姉妹である場合は、遺留分の権利はありません。兄弟姉妹は遺留分権利者に該当しないため、たとえ代襲相続人であっても、遺留分を請求することはできません。この点において、代襲相続における遺留分の取り扱いは、他の相続人と異なる点があるため、注意が必要です。

また、遺留分の放棄も可能ですが、放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。遺留分の放棄は相続開始前に行うことができ、その場合、被相続人が死亡した後の相続において、遺留分を請求することはできなくなります。ただし、遺留分を放棄しても、相続人としての地位は消滅しないため、相続手続きには引き続き関与する必要があります。

代襲相続をしたくない場合の対応策

1. 遺産分割協議の限界

代襲相続人として遺産を受け継ぐ際、借金やその他の負債が含まれている場合、遺産分割協議を通じてこれらの負債を回避できるかを検討することが重要です。遺産分割協議とは、相続人全員が参加し、被相続人の財産をどのように分割するかを話し合うプロセスです。この協議では、代襲相続人も他の相続人と同様に参加し、自身の相続分について意見を述べることができます。

しかし、遺産分割協議だけでは、負債を避けることはできない場合があります。たとえば、相続財産に大きな借金が含まれている場合、その借金を代襲相続人が負担しないという内容の協議が成立しても、債権者がその協議内容を承認しない限り、代襲相続人は法定相続分に基づく借金の返済義務を負うことになります。これは、債権者の権利が法定相続分に基づいて保護されているためです。

したがって、代襲相続人として負債を避けるためには、遺産分割協議だけではなく、他の方法を検討する必要があります。例えば、相続放棄や限定承認の手続きを通じて、負債の相続を回避することが考えられます。

2. 相続放棄の効果と手続き

相続放棄は、負債を含む相続財産を一切引き継がないための有効な手段です。相続放棄を行うと、その相続人は最初から相続人でなかったとみなされ、負債を引き継ぐ義務も消滅します。代襲相続においても同様で、代襲相続人が相続放棄を行えば、その相続分は消滅し、他の相続人に相続権が移行します。

相続放棄の手続きは、相続開始を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。この期間内に相続放棄をしないと、放棄が認められず、相続人として負債を引き継ぐことになります。3ヶ月の期間は、家庭裁判所に申し立てることで延長が認められる場合もありますが、延長のためには正当な理由が必要です。

相続放棄を行う際には、他の相続人に対してもその意向を伝えることが重要です。特に、代襲相続の場合、上位順位の相続人が相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移行し、負債も同様に引き継がれることになります。このため、相続放棄を行うことで他の親族に負担をかけないよう、事前に十分な話し合いを行うことが推奨されます。

3. 相続放棄をする際の注意点

相続放棄を行う場合、次順位の相続人がその影響を受けることを理解しておく必要があります。例えば、祖父の遺産を代襲相続する予定だった場合、祖父の子供たち(代襲相続人の親世代)がすべ

て相続放棄をすると、祖父の兄弟姉妹が次の相続人となり、負債を引き継ぐことになります。このような場合、債権者は次順位の相続人に対して債務の弁済を求めることになります。

この状況は、相続放棄を行う前に他の親族に知らせておかないと、後々親族間でトラブルが発生する原因となり得ます。特に、長期間疎遠であった親族にとっては、突然の借金相続の連絡は驚きと混乱を引き起こす可能性があります。こうしたトラブルを避けるためにも、相続放棄を検討する際は、次順位の相続人に対して事前に伝えるか、場合によっては弁護士などの専門家を介して通知を行うと良いでしょう。

さらに、相続放棄を行ったとしても、次の順位の相続人が相続放棄を行わない限り、相続権は連鎖的に次順位へと移行していきます。つまり、代襲相続が発生するたびに、相続放棄を行うか否かの決断が求められることになります。

弁護士に相談するメリット

代襲相続や相続放棄は、法律の知識が必要な複雑な手続きです。そのため、専門家である弁護士に相談することは大きなメリットがあります。弁護士は、相続放棄の手続きを代行するだけでなく、他の相続人との調整や、次順位の相続人への通知、さらには相続全体の戦略的なアドバイスを提供することができます。

また、弁護士に依頼することで、相続放棄や遺産分割協議に関する法律的なリスクを最小限に抑えることが可能です。例えば、相続放棄の手続きを誤ると、結果的に負債を引き継ぐことになる場合がありますが、弁護士のサポートを受けることで、こうしたミスを防ぐことができます。

さらに、相続に関連するトラブルは親族間の関係を悪化させることが多くありますが、弁護士が間に入ることで、冷静かつ公正な話し合いを進めることができ、円満な解決を図ることが期待できます。

まとめ

相続は、財産だけでなく借金や負債も引き継ぐ可能性があるため、慎重な対応が求められます。特に代襲相続の場合、相続放棄などの手続きを検討することが重要です。ただし、相続放棄を行う際には他の相続人や親族に影響が及ぶため、十分な話し合いと法律の専門家への相談をご検討ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、代襲相続や相続放棄に関するご相談を承っております。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。


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共有名義不動産の相続: トラブルを防ぐための具体的対策

2024-10-12
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はじめに

共有名義の不動産を相続する際、多くの人が予期せぬトラブルに直面することがあります。不動産の共有は、所有者が複数いる場合に生じるもので、相続の場面では多くの問題が浮上しやすくなります。本記事では、遺産分割・相続問題でお悩みの皆様から寄せられる質問に基づき、解決策を解説します。

Q&A

Q1: 共有名義の不動産を相続すると、どのようなトラブルが考えられますか?

A1:共有名義の不動産は、所有者が複数存在するため、意見の不一致が発生しやすく、売却や利用に関して揉めることがあります。また、固定資産税の支払い負担が偏ったり、相続によりさらに持分が細分化されることで、トラブルが拡大することもあります。こうした問題を避けるためには、事前の対策が必要です。

Q2: 共有名義の不動産相続で問題を回避するには、どのような方法がありますか?

A2:相続開始前に共有名義を解消することや、遺言書を作成することが有効です。また、相続開始後においても、共有状態を放置せず、速やかに相続人間で協議を行い、問題を未然に防ぐことが重要です。弁護士の助言を受けることで、これらの手続きをスムーズに進めることができます。

共有名義の不動産とは?

共有名義とは、一つの不動産を複数の所有者が共同で保有している状態を指します。例えば、家族や兄弟間で土地や建物を共有している場合、その不動産は「共有名義」として登記されます。各共有者は「持分」に応じた権利を持ちますが、他の共有者との協力が不可欠となる場面が多々あります。共有名義の不動産は、単独での意思決定が難しく、これが相続の場面で問題を引き起こす原因となります。

共有名義におけるトラブルの主な原因

1. 意見の不一致によるトラブル

共有名義の不動産に関する意思決定は、単独で行うことができない場合がほとんどです。例えば、不動産の売却等に関しては、共有者全員の同意が必要です。意見が一致しないと、不動産の活用が難しくなり、トラブルが生じます。

2. 利用に関するトラブル

共有名義の不動産を誰がどのように利用するかが問題となり、単独利用を巡る争いが発生することがあります。単独利用者が他の共有者に使用料を支払うケースもありますが、その金額や条件についての合意が難しいことが少なくありません。

3. 売却困難によるトラブル

共有名義の不動産を売却するには、全員の同意が必要です。一人でも反対があると、売却が実現しないため、不動産が放置されるケースが多く見られます。放置された不動産には固定資産税の負担がかかり、経済的な負担が増大します。

4. 固定資産税の負担に関するトラブル

共有名義人のうち一部が固定資産税を支払わない場合、他の共有者に負担が集中し、これが新たな争いの原因となります。また、代表者が一括して支払うケースもあり、その場合においても支払い負担を巡る問題が発生します。

5. 相続による持分の細分化

共有者が死亡した場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合には、持分がさらに細分化されます。これにより権利関係が複雑化し、トラブルの発生リスクが高まります。

共有名義の不動産相続でトラブルを回避する方法

1. 相続開始前の対策

  • 共有名義の解消: 相続開始前に、共有者間で話し合いを行い、持分の買い取りや売却を通じて共有状態を解消することが考えられます。これにより、相続時のトラブルを未然に防ぐことができます。
  • 遺言書の作成: 被相続人が遺言書を作成し、特定の相続人に自分の持分を単独で相続させることも有効です。これにより、相続による持分の細分化を防ぎ、トラブルを軽減することが可能です。

2. 相続開始後の対策

  • 遺産分割協議を迅速に行う: 相続開始後は、速やかに相続人間で遺産分割協議を行い、共有持分の整理を進めることが重要です。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所で調停を行い、解決を図ることができます。
  • 共有持分の整理: 誰か1人が持分を相続し、他の共有者から持分を買い取るなどして共有状態を解消することが望ましいです。また、共有持分を売却し、代金を分け合う方法も考えられます。

トラブルが発生した場合の対応策

1. 弁護士に相談する

共有名義の不動産相続に関するトラブルが発生した場合、速やかに弁護士に相談することが推奨されます。弁護士は、共有持分の整理や売却のサポート、調停や訴訟における代理人として、最適な解決策を提案します。特に、共有者間の意見の対立が深刻化している場合、専門家の助言が不可欠です。

2. 調停や訴訟を利用する

相続人間で合意が得られない場合、家庭裁判所で調停や訴訟を行い、解決を図ることができます。これにより、共有名義の不動産の売却や持分の整理が進められ、最終的な解決に向けての一歩を踏み出すことが可能となります。

まとめ

共有名義の不動産を相続する際には、早期の対策と専門家の助言が欠かせません。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関する複雑な問題に対応し、適切な解決策をご提案いたします。共有名義の不動産相続でお悩みの方は、お早めにご相談いただくこともご検討ください。


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株式を相続する場合の留意点:上場株式の評価方法と遺産分割の進め方

2024-10-11
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はじめに

被相続人が株式を保有していた場合、その相続には専門的な知識と手続きが必要です。株式の種類や評価額の算定、さらに適切な遺産分割の方法を選択しないと、相続人同士でトラブルが発生する可能性があります。本稿では、株式相続の基礎知識から具体的な手続き方法まで解説します。

株式相続に関するQ&A

Q: 父が亡くなり、多くの株式が遺産として残されています。どのように相続手続きを進めれば良いでしょうか? 

A: 株式の相続手続きは、株式の種類や証券会社の特定によって異なります。まず、株式が上場しているか非上場かを確認しましょう。上場株式であれば、証券会社に連絡し、必要な書類を揃えて手続きを進めます。証券会社が特定できない場合は、証券保管振替機構に問い合わせて情報を取得することができます。

株式相続の手続きと進め方

1. 株式の種類と相続手続きの違い 

株式が上場しているか非上場かで手続きは異なります。上場株式の場合、証券会社を通じて手続きを行いますが、非上場株式の場合は、株式を発行している会社との直接的なやり取りが必要です。

2. 証券会社の特定 

相続対象の株式が預けられている証券会社がわかっている場合は、まずその証券会社に連絡しましょう。連絡後、必要書類(戸籍謄本、遺産分割協議書など)を揃え、相続手続きを進めます。

証券会社が特定できない場合は、証券保管振替機構に問い合わせ、どの証券会社に株式が預けられているかを確認します。

上場株式の評価方法

1. 相続税評価額の計算 

上場株式の相続税評価額は、いくつかの方法で計算できます。相続が発生した日付の終値、月の平均値など、複数の評価額の中から最も低い額を選択することができます。これにより、節税対策が可能です。

2. 評価額の具体例 

例えば、相続発生日の終値が4000円、前月の終値平均が3000円であれば、3000円を基準に評価額を計算します。これによって、相続税負担を軽減できる可能性があります。

株式の遺産分割と注意点

1. 遺産分割の方法 

相続人が一人であればそのまま株式を相続しますが、複数人いる場合は、現物分割、換価分割、代償分割のいずれかの方法で分割を行います。各方法にはそれぞれ利点と注意点があり、相続人同士で慎重に話し合うことが重要です。

  • 現物分割: 株式をそのまま相続する方法です。株式を売却せずに保有したい相続人に適しています。
  • 換価分割: 株式を売却して現金に換え、その代金を相続人で分配する方法です。株式に興味がない場合や、迅速な分割が求められる場合に有効です。
  • 代償分割: 一人の相続人が株式を相続し、他の相続人に代償金を支払う方法です。株式を保有したい相続人が他の相続人に納得してもらうために使われます。

2. 注意点 

株式を遺産分割の対象とする場合、以下の点に注意が必要です。

  • 株式の価格変動: 上場株式の評価額は日々変動します。タイミングを誤ると、評価額が低くなり、損失が出る可能性があります。株式を売却する場合は、相場の動向をよく確認しましょう。
  • 代償金の計算: 代償分割では、株式の評価額に基づいて代償金を計算しますが、株式の価値が変動するため、公平な分配が求められます。評価額の変動によって相続人間で不満が生じないように注意しましょう。
  • 準確定申告: 被相続人が株式取引を行っていた場合、相続人は準確定申告を行う必要があります。この申告は、相続開始後4か月以内に行わなければならないため、早めに対応しましょう。
  • 相続放棄: 相続人の一人が相続放棄をすると、その相続人ははじめから相続人ではなかったことになります。相続放棄が行われた場合、他の相続人が遺産分割協議を行う必要があります。

株式の相続手続をしない場合のリスク

株式の相続手続を放置すると、株式が準共有状態となり、議決権の行使や配当金の分配が煩雑になります。準共有の状態が続くと、相続人間の協議が長引く可能性があるため、早めに手続きを完了させることが重要です。

弁護士に相談するメリット

株式相続は、手続きが煩雑であり、専門的な知識が求められます。弁護士に相談することで、次のようなメリットがあります。

  • 専門的なアドバイス: 弁護士は相続法の専門知識を持ち、複雑な手続きを適切に進めるためのアドバイスを提供します。
  • 遺産分割の公平性確保: 相続人間で公平な遺産分割を行うためのサポートを行います。特に、株式の評価額の変動に関する問題に対して適切な対応策を提示します。
  • ワンストップサービス: 弁護士法人長瀬総合法律事務所では、弁護士と税理士が連携し、相続税の申告や節税対策を含めたワンストップのサービスを提供しています。相続に関するすべての手続きを一貫してサポートします。

まとめ

株式の相続は、相続人にとって大きな負担となりがちです。手続きを進める際には、株式の種類や評価方法、適切な遺産分割の方法を理解し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続の専門家が丁寧にサポートいたしますので、株式の相続でお困りの際は、お気軽にご相談ください。


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遺言執行者の選任に関するポイントと注意点

2024-10-10
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はじめに

遺言を作成する際に、「遺言執行者」を選任するべきかどうか悩んでいる方は少なくありません。適切な遺言執行者の選任は、遺言の内容を確実に実現し、相続人間の争いを未然に防ぐために重要です。しかし、遺言執行者とは何か、誰を選べばよいのか、また選任の際にどのような点に注意すべきかを理解しておくことは、遺言を円滑に執行するために欠かせません。本記事では、遺言執行者の役割や選任の際の注意点について解説いたします。

遺言執行者に関するQ&A

Q: 遺言執行者を選任するべきかどうか悩んでいますが、選任するメリットは何ですか?

A: 遺言執行者を選任することで、遺言内容が実現されることが期待できます。遺言執行者には、相続財産の管理や相続人への遺産の分配などを行う重要な役割があります。また、遺言の内容が相続人間でトラブルを引き起こす可能性がある場合でも、第三者である遺言執行者が公正に対応することで、円滑な手続きが期待できます。さらに、遺言執行者を弁護士に依頼することで、法的な問題が発生した際にも適切に対応できるというメリットがあります。

遺言執行者とは?

1. 遺言執行者の定義と役割 

遺言執行者とは、遺言書に記載された内容を実現するために指定された者のことを指します。遺言書に明記された場合や、家庭裁判所の選任によって選ばれる場合があります。遺言執行者は、遺言の内容を忠実に実行し、相続財産の管理や分配などの手続きを行う義務があります(民法第1007条)。

具体的には、遺言執行者は相続財産の目録を作成し、それを相続人に交付することから始めます。その後、遺言に基づいて、財産の分配、名義変更、財産の管理、必要な手続きの実行などを行います。これにより、遺言者の意志を確実に反映させることができ、相続人間のトラブルを防ぐ効果が期待されます。

2. 選任するメリット 

遺言書に記載された内容が、相続人の利害と一致しない場合、遺言の実現が困難になることがあります。特に、相続人間で意見が対立し、遺言の内容をめぐって紛争が発生することは珍しくありません。遺言執行者を指定しておくことで、第三者の立場から公平に遺言の内容が実行されるため、相続人間のトラブルを避けることが期待できます。

さらに、遺言執行者として弁護士を選任することで、遺言の執行に関連する法律問題にも迅速に対応できるというメリットがあります。弁護士は法律の専門家として、複雑な相続手続きや紛争の解決に必要な知識と経験を持っているため、遺言の実現がより確実にできることが期待できます。

遺言執行者の選任を検討すべきケース

1. 子の認知を行う場合 

遺言で子を認知する場合、遺言執行者がその内容を実現するために必要です。法律上、母子関係は母が子を産んだ時点で自動的に発生しますが、父子関係は認知が必要です。認知は、遺言により行うことも可能であり(民法第781条)、遺言による認知の効力を発生させるためには、遺言執行者がその届出を行う必要があります(戸籍法第64条)。この手続きを行わなければ、遺言による認知は法律的に効力を持たないため、遺言執行者の選任は必須です。

2. 相続人の廃除または廃除の取消を行う場合 

相続人の廃除とは、被相続人を虐待したり重大な侮辱を加えたりするなど、著しい非行があった相続人について、その相続権を剥奪する手続きを指します(民法第892条)。この手続きは、通常は被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てることで行いますが、遺言において相続人の廃除を定めた場合には、遺言執行者が家庭裁判所に対して手続きを行う必要があります(民法第893条)。また、被相続人が生前に行っていた相続人の廃除を遺言で取り消す場合も、同様に遺言執行者がその手続きを行います(民法第894条)。

相続人の廃除やその取消は、相続人にとって極めて重要な意味を持つため、遺言執行者による確実かつ適正な手続きが求められます。このようなケースでは、特に経験豊富な弁護士を遺言執行者に選任することが望ましいでしょう。

遺言執行者に選任できる者と留意点

1. 選任可能な者 

遺言執行者には、未成年者や破産者を除き、誰でもなることができます(民法第1009条)。法定相続人や受遺者も遺言執行者に選任可能であり、自然人だけでなく法人も遺言執行者になることができます。たとえば、信託銀行などは業務として遺言執行者になることが認められており、弁護士もまた遺言執行者として選任されることがあります。

遺言執行者を選任する際には、信頼性と適切な知識を持った人物や法人を選ぶことが重要です。特に、相続に関連する法律問題が予想される場合には、法律の専門家である弁護士を遺言執行者として選任することもご検討ください。

2. 選任を辞退される可能性 

遺言執行者として指定された者が、その任務を辞退することも可能です。遺言執行者が選任を辞退する理由としては、相続人間の対立が深刻であったり、相続財産の状況が複雑である場合などが考えられます。たとえば、相続財産が多数の不動産や有価証券を含んでおり、それらの管理や名義変更が困難である場合、または相続人同士の関係が悪化しており、執行業務が紛争に発展する可能性が高い場合などです。

遺言執行者が辞退を希望した場合、遺言書に別の遺言執行者が指定されていない場合には、家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てる必要があります(民法第1010条)。この手続きは、相続人や利害関係人が行うことができます。

遺言執行者の指定・選任手続き

1. 指定方法と流れ 

遺言執行者は、遺言書に明記することで指定できます。被相続人が生前に遺言執行者として指定したい人物と相談し、その同意を得たうえで遺言書に記載することが一般的です。ただ

し、同意を得ていない場合でも、遺言書に遺言執行者として記載することは可能です。

遺言執行者の指定を第三者に委託することもできます。この場合、遺言書で指定された第三者は、遅滞なく遺言執行者を選任するか、選任を辞退するかを決定し、その結果を相続人に通知する必要があります(民法第1006条)。

2. 選任を辞退された場合の対応 

遺言執行者として指定された者が辞退した場合や、遺言書に遺言執行者が指定されていない場合、または選任された遺言執行者が執行中に死亡した場合などには、新たに遺言執行者を選任する必要があります。このような場合、相続人や受遺者などの利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます(民法第1010条)。この手続きを行うことで、適切な遺言執行者が選任され、遺言の内容が実現されることが確保されます。

3. 遺言執行者への報酬の定め方 

遺言執行者への報酬は、遺言書に記載されている場合、その定めに従います。遺言書に報酬の定めがない場合は、遺言執行者が家庭裁判所に対して報酬付与の審判を申し立てることができます(民法第1018条)。家庭裁判所が報酬を決定し、遺言執行者に支払われることになります。

また、遺言執行に要した費用は相続財産の負担になります(民法第1021条)。そのため、費用は遺留分を侵害しない範囲で相続財産から支払われることが一般的です。遺言執行者が報酬を請求できるのは、遺言執行が終了した後となります。

弁護士に相談するメリット

遺言執行者として弁護士を選任することには多くのメリットがあります。まず、弁護士は法律の専門家であり、相続手続きに関する豊富な知識と経験を持っています。これにより、遺言の内容を法的に適切かつ確実に実現することが期待できます。

さらに、相続に関連する法律問題や争いが発生した場合にも、弁護士であれば迅速かつ適切に対応することができます。例えば、遺産分割や遺留分に関するトラブルが生じた場合、弁護士が遺言執行者であれば、その場で法的なアドバイスを提供し、解決に導くことが可能です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、遺言執行者の選任だけでなく、相続全般に関する相談やサポートを提供しています。遺言書の作成から相続手続きの進行、さらには相続に関する紛争の解決まで、幅広い分野でのサポートが可能です。相続に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

遺言執行者の選任は、遺言内容の実現において重要です。適切な遺言執行者を選任することで、相続人間の争いを防ぎ、遺言書に記載された遺志を確実に実現することができます。特に、相続に関する法律問題が発生する可能性がある場合や、遺言の内容が複雑な場合には、弁護士を遺言執行者に選任することもご検討ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、遺言執行者に関するご相談や手続きのサポートを行っております。相続に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。


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法定相続情報証明制度を活用するための完全ガイド

2024-10-09
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はじめに

Q: 相続手続が複雑だと聞きますが、少しでも簡単にする方法はありませんか?

A: 相続手続を簡略化するための方法として、「法定相続情報証明制度」があります。この制度を利用することで、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、さまざまな相続手続がスムーズになります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関するお悩みを抱える皆様に、具体的なサポートを提供しており、この制度を活用するためのアドバイスも行っています。

法定相続情報証明制度とは?

制度の概要

法定相続情報証明制度は、2017年5月29日に開始された比較的新しい制度です。この制度は、相続が発生した際に、被相続人と相続人との関係を法務局に証明してもらうためのものです。具体的には、法務局が「法定相続情報一覧図」を作成し、これを交付することで、相続手続を大幅に簡略化できます。この一覧図には、被相続人や相続人の氏名、本籍、続柄などが記載されており、これを利用することで、各種相続手続がスムーズに進められます。

制度の目的

法定相続情報証明制度は、相続手続における書類の煩雑さを軽減し、相続人の負担を減らすことを目的としています。これまで、相続手続を進めるためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本や除籍謄本などを集める必要がありましたが、この制度を利用することで、これらの手間を削減することができます。

法定相続情報証明制度の活用方法

何に利用できるのか?

法定相続情報証明制度を利用することで、以下のような手続が簡略化されます。

  1. 不動産の名義変更登記
    不動産を相続した場合、名義変更のために登記所(法務局)に申請を行います。この際、すべての戸籍謄本・除籍謄本を揃える代わりに、法定相続情報一覧図を提出することで、手続が完了します。
  2. 金融機関での相続手続
    預貯金が相続財産に含まれている場合、金融機関での名義変更や解約払い戻し手続が必要です。この場合も、法定相続情報一覧図を提出することで、手続がスムーズに進みます。
  3. 証券会社での株式の名義変更
    被相続人が株式などの有価証券を所有していた場合、証券会社での名義変更手続が必要です。法定相続情報証明制度に対応している証券会社であれば、戸籍謄本類を集めることなく手続が完了します。
  4. 保険金の請求や保険の名義変更
    保険金を受け取る際や、保険契約の名義変更を行う際には、相続関係の証明が求められることがあります。この制度を利用すれば、手続がスムーズになります。
  5. 相続税の申告
    2018年4月からは、相続税の申告にも法定相続情報証明制度が利用可能となりました。税務署に法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、従来必要とされていた戸籍謄本類を提出する手間が省けます。

手続の具体的な流れ

1. 申出先の法務局

申出は、被相続人の死亡時の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、または被相続人名義の不動産所在地を管轄する法務局で行います。申出ができるのは、相続人に限られます。

2. 必要書類の準備

法定相続情報証明制度を利用するには、以下の書類を揃える必要があります。

  • 被相続人の全ての戸籍謄本・除籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本
  • 申出者の氏名・住所を確認できる公的書類(免許証やマイナンバーカードなど)
  • 申出書(法務局のフォーマットに従って作成)
  • 相続関係一覧図(申出者が作成)

必要書類を揃えたら、管轄の法務局で申出を行い、法定相続情報一覧図の写しを交付してもらいます。この手続は、弁護士法人長瀬総合法律事務所が代理で行うことも可能です。

メリットとデメリット

メリット

  1. 手続の簡略化
    法定相続情報一覧図を一度取得すれば、複数の相続手続を同時に進めることができ、時間と労力を大幅に削減できます。
  2. 書類収集の手間が軽減
    戸籍謄本や除籍謄本を何度も集める必要がなくなり、費用の節約にもなります。
  3. 費用の節約
    法定相続情報一覧図は、法務局で何度でも無料で交付を受けられるため、書類収集のための費用を大幅に削減できます。

デメリット

  1. 申出の手続が煩雑
    必要書類を揃えて法務局に申出する手間がかかります。特に相続財産が少ない場合には、メリットが少ないかもしれません。
  2. 対応していない機関もある
    法定相続情報証明制度は、すべての金融機関や保険会社が対応しているわけではありません。事前に各機関で利用可能かを確認する必要があります。
  3. 手続には時間がかかることもある
    法務局の処理には一定の時間がかかるため、急いでいる場合には不便に感じることもあります。

弁護士に相談するメリット

専門的なアドバイスが得られる

相続手続は、法律や税務の知識が必要であり、迷う場面が多いものです。弁護士に相談することで、適切なアドバイスを得ることができ、安心して手続を進めることができます。たとえば、相続人の範囲や遺産分割協議書の作成方法など、専門的な知識が求められる場面でも、弁護士のサポートがあればスムーズに進められます。

労力と時間の節約

相続手続には、多くの書類作成や提出が必要です。これを全て自分で行うのは、時間と労力がかかります。弁護士に依頼すれば、手間をかけずに手続を進めることができ、普段の生活に影響を与えることなく、相続問題を解決できます。

トラブルの予防と対応

相続に関するトラブルは、相続人同士の関係を悪化させることが多々あります。弁護士が関与することで、こうしたトラブルを未然に防ぎ、万が一トラブルが発生した場合にも迅速に対応できます。弁護士が代理人として家庭裁判所での遺産分割調停を進めることで、依頼者が不利にならないように手続を展開することができます。

まとめ

法定相続情報証明制度は、相続手続を大幅に簡略化するための有効なツールです。ただし、利用するには一定の手続が必要であり、全ての金融機関や保険会社で利用できるわけではない点には注意が必要です。相続手続において、少しでも手間を省きたい場合や、トラブルを未然に防ぎたい場合には、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。専門家のサポートを受けながら、安心して相続手続を進めることができます。


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