預貯金の仮払い制度とは?弁護士による解説

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はじめに

Q:相続発生時に預貯金の引き出しができず困るケースがあると聞きましたが、解決策として「預貯金の仮払い制度」があると聞きました。この制度はどのようなものでしょうか?

A:相続が発生した際、通常は被相続人(亡くなった方)の預貯金は相続人全員の合意がなければ引き出せないのが原則です。しかし、遺産分割を行う前でも一部の資金を引き出せる「預貯金の仮払い制度」が法改正により認められました。この制度により、相続人が単独で一定の金額を仮に払い戻すことが可能となり、急を要する支出や生活費に充てることができます。ここでは、この制度の仕組みや利用方法について詳しく解説いたします。

預貯金の仮払い制度の概要と仕組み

Q1:預貯金の仮払い制度とはどのようなものですか?

預貯金の仮払い制度は、相続人が遺産分割を行う前に、亡くなった方の預貯金の一部を単独で引き出せる制度です。これは相続開始時の預貯金残高の三分の一に相続人の法定相続分を掛けた金額が目安とされます。通常、相続人全員の合意なしには引き出せない預貯金も、仮払い制度を利用すれば一部を先に引き出すことが可能です。

Q:この制度が作られた背景は何ですか?

この制度が創設された背景には、相続開始直後に必要とされる支出に備えるための支援が含まれます。たとえば、葬儀費用や固定資産税など、相続発生直後にかかる費用に対応するため、相続人が一時的に資金を確保できる手段が求められていました。また、亡くなった方と同居していた方や扶養されていた方にとって、当面の生活費としても活用できる点が重要です。

利用方法と上限額

Q:仮払いを受けるにはどのような方法がありますか?

仮払いには2つの方法があります。

1.金融機関での仮払い請求

金融機関の窓口で直接、仮払いを請求できます。請求できる金額は「相続開始時の預貯金残高の三分の一×相続人の法定相続分」で計算されます。請求理由を具体的に説明する必要はありませんが、金融機関ごとに定められた上限があり、現行では1つの金融機関につき最大150万円が上限とされています。同じ金融機関に複数の口座がある場合、合計して150万円までが仮払い可能です。

2.家庭裁判所への仮払い請求

仮払いを家庭裁判所に申請する方法です。こちらは、裁判所が仮払いの必要性を認めた場合、金額に上限なく払い戻しが可能ですが、申請手続が必要なため、金融機関への直接請求に比べると手間と時間がかかります。また、他の相続人の利益を損なわない範囲で認められるため、申請の際に十分な理由の説明が求められます。

仮払いを受けた際の注意点

Q:仮払いで引き出した金額は相続分に影響しますか?

はい、影響します。仮払いで引き出した金額は、遺産分割時に引き出した相続人の相続分から差し引かれることになります。したがって、仮払いを利用する際は、遺産分割における自身の最終的な相続分を考慮して慎重に判断することが大切です。

法的根拠について

関連条文:民法第909条の2

改正後の民法第909条の2では、各相続人は、遺産分割前に「相続開始時の債権額の三分の一×相続分の割合」を上限に、単独で預貯金の仮払い請求が可能であると定めています。これにより、標準的な生活費や葬儀費用のための金額を限度として、金融機関に対して単独での権利行使が認められました。

弁護士に相談するメリット

仮払い制度は急な出費に対応するために便利な制度ですが、相続人同士の関係や相続財産の全体像を踏まえたうえで、最も適切な対応が求められます。また、仮払いを行った場合の相続分への影響や、家庭裁判所での手続を選択する際の法的な判断も必要です。弁護士に相談することで、個々の相続状況に応じた適切なアドバイスを受け、法的に適正な手続きを進めることができます。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、相続手続や仮払い制度の利用について、丁寧にサポートいたします。

まとめ

預貯金の仮払い制度は、相続発生後の急な出費や生活費に対応するための重要な制度です。しかし、相続人間の合意や遺産分割の影響を考慮する必要があるため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが推奨されます。相続に関する手続きでお困りの方は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。

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