はじめに
相続で取得した不動産の名義変更は、相続手続の中でも重要かつ見落とされがちな項目です。最近では相続登記の義務化が進められており、登記を放置した場合に罰則が科される可能性も出てきました。にもかかわらず、「費用がかかりそう」「手続きが面倒」という理由で後回しにされ、結果としてトラブルに発展するケースが後を絶ちません。
本記事では、不動産登記名義変更(相続登記)の進め方を時系列で解説し、必要書類や注意点などをまとめます。相続した不動産の名義変更をスムーズに行うための御参考となれば幸いです。
Q&A
Q1. 名義変更(相続登記)はいつまでに行う必要がありますか?
従来は「相続登記をいつまでにしなければならない」という厳密な期限はありませんでしたが、2024年以降本格施行される法改正により相続登記が義務化されます。
Q2. 名義変更をしないとどんな問題が起きますか?
登記を放置すると、不動産が「共有者の一部が不明」という状態になるなど売却や担保設定が困難になるだけでなく、今後は罰則(過料)が科される可能性があります。さらに、相続人が亡くなるなどして共有関係が複雑化し、最終的に誰も不動産を使えない、買い手もつかないといったリスクが高まります。
Q3. 相続登記にはどんな書類が必要ですか?
一般的に以下が挙げられます。
- 被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人の戸籍謄本・住民票
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)
- 固定資産税評価証明書(不動産の評価額確認用)
- 登記申請書(法務局指定の様式、もしくは自作)
Q4. 自分で手続きできる? それとも専門家に依頼すべき?
書類が整っていればご自身でも手続き可能ですが、被相続人が複数の転籍をしていたり、相続人が多いなど複雑化するとかなり時間と手間がかかります。確実かつスピーディに済ませたい場合は、司法書士や弁護士に依頼すると安心です。
解説
相続登記名義変更の流れ
- 相続人の確定・遺産分割協議
- 戸籍謄本の収集によって相続人を確定
- 遺産分割協議書を作成し、不動産を誰が相続するか決定
- 必要書類の収集
- 戸籍類(出生~死亡)、住民票除票、固定資産税評価証明書など
- 印鑑証明書(相続人全員)、遺産分割協議書
- 登記申請書の作成
- 法務局のサイト等から様式を入手するか、司法書士に作成を依頼
- 不動産ごとに必要情報(登記簿上の表記、地番、家屋番号など)を正確に記載
- 法務局へ申請
- 不動産所在地を管轄する法務局へ書類を提出(持参または郵送)
- 登録免許税を納付
- 名義変更完了
- 法務局で審査が終わると登記完了通知書が届き、名義変更されたことを確認
登録免許税と費用
- 登録免許税
相続の場合、通常は固定資産税評価額の0.4%。たとえば評価額1000万円の不動産なら4万円 - 専門家への報酬
司法書士や弁護士に依頼する場合は、書類作成・代理手数料がかかる。数万円~十数万円程度が一般的だが、難易度や不動産の数によって変動
注意点
- 相続人が多い場合の共有
- 遺産分割協議で「全員共有」とすることも可能だが、後々の売却や管理が煩雑になる
- なるべく単独相続や代償分割などを検討し、共有を避けるのが無難
- 相続放棄の確認
- 相続放棄をした人は、当然登記の名義変更に関与しない
- 放棄の事実を証明するために、家庭裁判所の「相続放棄受理証明書」が必要な場合も
- 非嫡出子や養子、代襲相続が絡む場合
- 戸籍調査が増えるため、書類不備が起こりやすい
- 弁護士などに相談して漏れのない取得が重要
相続登記義務化と罰則
- 2024年以降段階的施行
相続登記をせずに放置すると過料が科される可能性が高まる - 特例制度や簡略化措置
中には相続登記手続きを簡易化する特例も用意される予定だが、詳細は都度確認が必要
弁護士に相談するメリット
- 法的リスクの回避
遺産分割協議書の不備や、相続人の一部が協力しないケースなど、法的な紛争の芽を早期に摘める - 相続人間の調整
弁護士が間に入り、公平かつ納得できる遺産分割を提案することで、スムーズに協議を進められる - 複雑なケースへの対応
代襲相続、養子縁組、非嫡出子など相続関係が複雑な場合に戸籍収集や権利関係の整理を弁護士が行い、確実な登記申請をサポート - 他士業との連携
司法書士や税理士など専門家と協力し、相続税申告や登録免許税の算定、追加の名義変更などを一括で進められる
まとめ
不動産の相続登記は、相続登記義務化の流れを受けて、よりいっそう「後回しにできない手続き」となりました。登記を怠れば、将来的に罰則や売却時の混乱につながる恐れがあります。以下のポイントを押さえ、お早めに対応しましょう。
- 相続人と財産の確定:戸籍や遺産分割協議で誰が不動産を相続するか決める
- 必要書類の準備:戸籍謄本や住民票除票、遺産分割協議書、固定資産税評価証明書など
- 登記申請書作成と提出:不動産所在地を管轄する法務局へ
- 登録免許税や専門家費用の確認:登記コストを事前に把握
もし「手続きが複雑でよくわからない」「相続人が協力してくれない」という場合は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。スムーズかつ的確に名義変更を完了できるようサポートいたします。
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