はじめに
「遺言書で財産の大半が特定の相続人や第三者に譲られてしまった」「生前贈与で遺留分が著しく減らされた」――そんなときに行うのが遺留分侵害額請求です。しかし、請求をするにあたっては財産目録や戸籍謄本など、さまざまな書類が必要となります。これらを漏れなく用意しないと、交渉や調停で不利になったり、手続きが長引く原因となります。
本記事では、遺留分侵害額請求に必要な書類一覧を中心に、書類取得の方法や注意点を解説します。確実に書類を揃え、時効(1年)を逃さず、スムーズに手続きを進めるためにぜひ参考にしてください。
Q&A
Q1. 遺留分侵害額請求に必要な書類とは具体的に何が挙げられますか?
一般的には、
- 被相続人の戸籍謄本(出生~死亡まで)
- 相続人の戸籍謄本・住民票
- 遺言書(ある場合)
- 財産目録
- 財産評価資料(不動産の固定資産税評価証明書、預金残高証明など)
- 生前贈与を証明する資料(贈与契約書、振込明細、通帳コピーなど)
- 委任状や調停申立書(家庭裁判所の手続きに進む場合)
などが必要です。
Q2. なぜ被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要なの?
相続人を確定するためです。被相続人が婚姻や離婚、転籍を繰り返している場合は複数の市区町村から戸籍を取り寄せ、漏れなく相続人を把握する必要があります。
Q3. 財産目録はどのように作ればいいですか?
不動産(登記簿謄本、固定資産税評価証明書で確認)、預貯金(通帳残高や銀行の残高証明)、有価証券(証券会社の取引報告書)などを列挙し、評価額を明示する形が一般的です。弁護士や税理士が協力して正確な評価を計算することも多いです。
Q4. 書類を揃えるのが大変そう。どのタイミングで動けばいい?
遺留分侵害を知ったら、時効(1年)まで時間があまりない場合もあります。なるべく早く戸籍や財産資料の収集に取り掛かるのが大切です。弁護士に依頼すれば、書類収集を代行することも可能です。
解説
必要書類一覧
- 被相続人の戸籍謄本(出生~死亡)
- 相続人を確定し、相続関係を証明するため
- 転籍がある場合、すべての本籍地で取得
- 相続人の戸籍・住民票
- 請求者が正当な相続人であることを示す
- 住民票は調停などで住所を確認するために使う
- 遺言書(ある場合)
- 遺言内容がどのように財産を配分していたか確認
- 自筆証書遺言なら検認手続が必要な場合も
- 財産目録・評価資料
- 遺留分侵害額を計算するために必要
- 不動産:固定資産税評価証明書、登記簿謄本、不動産鑑定評価書(必要に応じて)
- 預貯金:通帳コピー、残高証明書
- 有価証券:株式残高報告書、評価資料
- 動産:車検証、貴金属鑑定書など
- 生前贈与の証拠
- 贈与契約書、銀行振込明細、領収書など
- 特別受益として遺留分計算に反映させるため
- 調停申立書や訴状(調停・裁判に進む場合)
- 家庭裁判所に提出する書面。実務では弁護士が作成をサポート
書類収集のポイント
- 戸籍の収集漏れに注意
- 被相続人が本籍を移動している場合、複数役所から取り寄せる必要がある
- 時間がかかるため、早めに動くのが鉄則
- 不動産評価の根拠を明確に
- 路線価や固定資産税評価額、実勢価格などを混同せず、どう算定したか整理
- 銀行への問い合わせ
- 遺留分の計算で預貯金を正確に把握するには、残高証明書が便利
- 亡くなる前に大きな引き出しがある場合、その用途を調査するケースも
実務でよくある苦労
- 行方不明の相続人がいて戸籍を取り寄せられない
不在者財産管理人の選任や家庭裁判所への手続きが必要になり、時間がかかる - 生前贈与の証拠が曖昧
当事者の主張だけで書面がなく、相手方が「贈与ではなく借金だ」と反論するなど泥沼化 - 評価方法の異議
不動産や株式の評価をめぐって争いが激化し、裁判所で鑑定人が選任されることも - 期限内の書類整備が間に合わず、時効
1年の時効を甘く見て書類作業を後回しにし、気づけば時効成立で請求不可に
弁護士との連携
- 書類収集の代理
弁護士が代理で戸籍取り寄せや金融機関への照会を行い、手間を省く - 評価資料の検討
必要に応じて不動産鑑定士を紹介し、相場とは違う査定価格を防止 - 交渉・調停申立手続き
書類を整えてから相手方への請求書面を発送し、合意に至らなければ調停や裁判で戦略を練る
弁護士に相談するメリット
- 書類不備を防ぐ
戸籍や評価資料など、誤りがあると時間とコストを余分に要する - スケジュール管理(時効回避)
1年以内に請求を行うため、弁護士がリミットを管理し迅速に作業を進める - 相手方との交渉力
弁護士名での内容証明郵便や調停申立ては法的根拠を伴うため、相手方も対応を無視しにくい - 調停・裁判対応のノウハウ
書面作成や証拠の収集方法など、一般の方には難しい手続き面をフォロー
まとめ
遺留分侵害額請求を行う際、必要書類をきちんと揃えておくことが、スムーズな請求と交渉成功の鍵となります。特に以下の点を意識してください。
- 被相続人・相続人の戸籍(出生~死亡、全員分)
- 遺言書や生前贈与の有無
- 財産目録と評価資料(不動産評価証明、預貯金残高証明など)
- 内容証明郵便での請求と、交渉が決裂した場合は調停や審判
書類の収集や評価計算に時間がかかることを踏まえ、時効(1年)を逃さないように早めの対応が重要です。弁護士のサポートを受ければ、不備を防ぎ、より効率的に手続きを進められます。ぜひ、弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家へご相談いただき、遺留分侵害額請求を確実に行いましょう。
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