はじめに
「死後事務委任契約って、結局どういう手続きができるの?」「遺言書とどう違うの?」「費用はどのくらいかかる?」――死後事務委任契約に関しては、多くの方が同じような疑問を持っています。特に単身高齢者や遠方の親族がいる方にとっては、死後に誰が実務を引き受けてくれるのかが深刻なテーマです。
本記事では、死後事務委任契約についてよくあるご質問を取り上げます。ポイントを理解し、自分に合った契約や手続きを検討してみてください。
Q&A
Q1. 「死後事務委任契約」でできることは何ですか?
- 葬儀・埋葬の手配・実行
- 遺品整理(住居の片付けや家具処分など)
- 各種解約手続き(公共料金、クレジットカード、SNSアカウントなど)
- 住民票や年金の抹消など役所手続き全般
なお、遺産の分配や相続人の決定は対象外です(遺言書や遺産分割協議が必要)。
Q2. 遺言書とどう違うの?
- 遺言書
財産分配、遺産の行方を法的に定める書類 - 死後事務委任契約
故人の死後に生じる実務(葬儀や解約手続きなど)を委託する契約
両方を併用すると、財産分配と事務手続きの両面をカバーできます。
Q3. 費用はどれくらいかかりますか?
受任者(契約先)が親族や友人なら、報酬は実費程度に抑えられることも。ただし、専門家(弁護士など)に依頼する場合は、契約作成費用と実務執行の報酬が発生します。契約時に報酬体系を確認し、預託金などの管理方法も決めておくと安心です。
Q4. 親族がいるのに死後事務委任契約を結ぶ必要はあるの?
「必要」かどうかは状況によりますが、
- 親族が遠方に住んでいる
- 親族に負担をかけたくない
- 葬儀をコンパクトに行いたいが、親族が盛大な式を望む可能性がある
などの場合に役立ちます。また、親族がいても誰も手続きを引き受けない可能性があるなら、契約を検討する価値は高いです。
Q5. 既に契約した後で「やっぱり別の人に頼みたい」と思ったら?
委任契約は解除可能です。ただし、既に受任者が動いている場合の実費負担や、契約書に違約金などの定めがある場合は留意が必要です。契約解除後は、別の受任者と新たに契約を結び直す形となります。
解説
死後事務委任契約の対象は「財産分配」ではない
- 契約範囲を勘違いしない
「故人が持っていた預金をどう分配するか」は死後事務委任契約の範囲外。あくまで実務手続きに限る - 相続人がいる場合
遺産の管理や分割は相続人が行うか、遺言書で遺言執行者が決められる
費用と報酬の設定
- 報酬額の目安
- 個人間なら無償、専門家なら数万円~数十万円程度+実費(葬儀費用、役所手数料など)
- 預託金・預金口座の扱い
- 生前に預託金を受任者側が預かるか、故人の銀行口座を死後一時的に使用するか
- 相続人と摩擦が起きないよう契約で明確化
契約書作成のコツ
- 具体的な業務リスト
「葬儀の式場選定」「遺品整理」「SNSアカウント削除」など、やることを詳細に記述 - 責任範囲
できない業務、対応しない手続きがあるなら明記 - 報酬・費用負担
受任者に支払う報酬額、上限、支払い方法、実費精算の仕方を明文化 - 連絡や報告方法
親族や相続人へどのタイミングで何を報告するか
親族がいるケースの注意点
- 契約内容の事前共有
後から親族が「知らなかった」「納得できない」と反発しないよう配慮 - 葬儀の規模や形式
親族の意向と委任者の意向が異なる場合の調整 - 遺言書との連携
遺言書で財産分配を指定しつつ、死後事務委任契約で手続き面をカバー
弁護士に相談するメリット
- 複雑な契約内容を法的に整理
葬儀、遺品整理、報酬支払いなど多岐にわたるため、弁護士がリーガルチェック - 公正証書作成
公証人とのやり取りを代行し、契約書の証拠力を高める - 相続や遺言との整合性
遺産分配をスムーズに進めるため、遺留分や相続人の権利にも配慮した契約設計 - 報酬や費用の透明性
委任者、受任者間の金銭トラブルを避けるための明確な条項を設定
まとめ
死後事務委任契約は、死後の葬儀・役所手続き・遺品整理などを委任できる便利な制度ですが、「遺産分配」や「相続税申告」などは対象外です。そのため、遺言書や相続手続きと併用して初めて総合的に死後の手続きを網羅できます。以下を意識しましょう。
- 契約範囲や報酬を具体的に書面化
- 遺言書や相続人との関係を整理(同時に作ることが望ましい)
- 費用負担方法(預託金や銀行口座の扱い)を明確に
- 弁護士を通じて法的リスクを排除し、公正証書化で証拠力をアップ
死後の手続きの不安を減らし、周囲への迷惑を最小限にするためにも、死後事務委任契約を検討してみてください。
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