はじめに
「生前贈与を考えているが、贈与税はなるべくかけたくない」という声をよく耳にします。たしかに、日本の贈与税は超過累進課税方式で高率となる場合が多く、相続税とのバランスを見誤ると結果的にかえって負担が増えるリスクも。そこで重要なのが、贈与税を避ける(または軽減する)ための最適な対策を知り、計画的に贈与を行うことです。
本記事では、贈与税を最小限に抑えるための具体策や注意点を解説します。相続税との比較や特例制度を上手に活用し、家族への財産承継を円滑に実現しましょう。
Q&A
Q1. 贈与税を「完全に」避けることは可能ですか?
日本では、贈与税を完全にゼロにするのは難しいです。ただし、年間110万円の基礎控除や特例制度を使えば、結果的に贈与税がかからないケースもあります。あくまで「避ける」というよりも軽減・最適化というイメージが正しいでしょう。
Q2. 年間110万円以内なら贈与税がかからないのでしょうか?
年間110万円以内の贈与は非課税ですが、連年贈与として税務署に疑われないよう注意が必要です。形式上は毎年110万円以内でも、実質的にまとまった金額を数年に分割したと見なされると、追加課税されるケースもあります。
Q3. 特例制度にはどんなものがありますか?
主に、
- 住宅取得資金贈与の特例
- 教育資金贈与の特例
- 結婚・子育て資金贈与の特例
などが挙げられます。要件を満たせば大きな非課税枠が適用され、贈与税がかからないか軽減されます。
Q4. 贈与税対策で気をつけるべき落とし穴は?
- 3年以内の贈与加算(相続時に合算される)※(改正後は7年以内)
- 特例の要件を満たさないまま使う(後で無効になる)
- 特別受益問題(相続人間の不公平感を引き起こす)
- 書面や証拠を残さない口頭贈与(後日トラブル化)
解説
年間110万円の非課税枠を活用
- 少額贈与をコツコツ
1年間に110万円以内なら贈与税0円。ただし、毎年同額だと連年贈与として問題視される可能性 - 子や孫など複数対象への分割
子ども2人にそれぞれ110万円ずつ贈与など、受贈者を増やして枠を有効活用 - 契約書と振込記録の整備
口頭だけでなく、贈与契約書を作成し、毎年変化を持たせるのが安全
特例制度の効果的利用
- 住宅取得資金贈与の特例
- 子や孫が住宅を取得する際、一定の要件を満たすと数百万円~1,000万円以上の非課税枠
- 住宅ローン減税と組み合わせると効果大
- 教育資金の一括贈与
孫や子に教育資金として上限1,500万円までの非課税制度(要件・期限がある) - 結婚・子育て資金贈与
一定金額まで非課税(制度の有効期限や受贈者の年齢要件に注意)
贈与計画と相続時の調整
- 3年以内の贈与加算
被相続人が死亡前3年以内に行った贈与は相続税に足し戻されるため、早めに贈与する方が有利 - 特別受益と遺留分
兄弟のうち特定の子が多額贈与を受けると、相続時に他の子が遺留分侵害額請求を起こす可能性 - 遺言書でカバー
「○○年○月に長男へ△円を贈与した分は特別受益として扱う」など遺言書に明記し、相続時に紛争を防ぐ
公正証書化のメリット
- 公証人が関与
契約書の真正性が高まり、税務署や裁判所でも証拠力が強い - 署名捺印の改ざんリスク低減
後日「贈与していない」と言われにくい - 手続きのスムーズ化
受贈者や親族が合意しているのが明確となり、後からの異議が起きにくい
弁護士に相談するメリット
- 総合的な節税対策
贈与税と相続税、さらに遺留分問題まで視野に入れたプランニング - 贈与契約書作成・公正証書化
法的に安全な書類を作成し、争いを最小化 - 家族トラブルの事前調整
特別受益や遺留分を意識し、遺言書との整合性も踏まえたアドバイス - 長期的フォロー
毎年の贈与計画や制度改正への対応を継続サポート
まとめ
贈与税を回避・軽減するための最適な対策は、年110万円の非課税枠や各種特例制度(住宅資金、教育資金など)を上手に使い、かつ3年以内の贈与加算(改正後は7年)や遺留分問題を理解しておくことです。
具体的には、
- 早めにコツコツ贈与し、3年加算(改正後は7年)を避ける
- 特例制度(住宅・教育・結婚子育て)を要件を満たす形で活用
- 贈与契約書を作成し、場合によっては公正証書化
- 特別受益や遺留分トラブルを回避するため、遺言書と併用し家族に説明
計画的に贈与することで家族の負担や税負担を減らし、円満な財産承継を目指しましょう。詳細なアドバイスが必要な場合、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
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