生前贈与の失敗例とその回避方法

はじめに

「生前贈与をしておけば相続税も安くなるはず」――そんな期待で財産を移転したものの、後に高額の贈与税を支払う羽目になったり、家族間で大きな紛争が起きたり、思わぬ失敗に終わるケースがあります。どんなに良い制度でも、正しい理解と手続きを踏まないまま利用すると、かえって大きなリスクを抱えることになりかねません。

本記事では、生前贈与の失敗例をいくつか取り上げ、なぜ失敗したのか、その回避策は何かを解説します。ご自身が同じ間違いをしないよう、ぜひ参考にしてください。

Q&A

Q1. よくある生前贈与の失敗例とは?.

  1. 3年以内の贈与加算で節税効果を得られず、相続税が減らなかった(※改正後は7年0
  2. 連年贈与として税務署から一括課税され、予想外の高額納税
  3. 特別受益問題で他の相続人が遺留分を主張し、家族トラブルに
  4. 贈与契約書がなく、受贈者が「借金と勘違い」したり、後日紛争化

Q2. 連年贈与の疑いを避けるには?

  • 毎年同額を同時期に渡すのではなく、金額やタイミングを変える
  • 贈与契約書をその都度作り、受贈者の同意を明確化
  • 「将来分を一気に分割して渡す」意図が見えると指摘されやすいので注意

Q3. 3年以内の贈与加算を回避するには?

  • 早めに贈与を始める(死亡直前の数年だけでなく、若いうちから計画的に)
  • 3年以内に多額をまとめて渡すと、相続税対策としては効果が薄くなる

Q4. 家族との紛争を防ぐ方法はありますか?

  1. 事前の家族会議で贈与の意図や金額を透明化
  2. 遺言書で特別受益や遺留分に配慮
  3. 弁護士のサポートで契約書作成や家族調整を行い、誤解を防ぐ

解説

失敗例1:短期的に大きく贈与し、結局加算

【状況】
高齢の父が余命数カ月と判明し、大急ぎで長男に5,000万円を生前贈与。ところが父が数カ月で亡くなったため、3年以内の贈与加算となり、相続税計算で結局5,000万円が遺産に足し戻された。贈与税も支払ったが、相続税にも影響し大きなダメージに。

【原因】

  • 駆け込みで贈与したため、3年加算に該当
  • 事前に税理士や弁護士に相談せず

【回避策】

  • 早期からコツコツ贈与し、死亡直前の多額贈与を避ける
  • 遺言書で相続分を調整するなど、別の手段も検討

失敗例2:連年贈与として一括課税

【状況】
祖父が孫に毎年110万円を10年続けて振り込んでいたが、税務署の調査で「実質1,100万円の一括贈与」と判断され、一度に高額の贈与税を納めることに。

【原因】

  • 毎年同日、同額の振込
  • 契約書がなく、受贈者の意思表示も曖昧
  • 「連年贈与」という実態を否定できなかった

【回避策】

  • 毎年金額や時期を多少変える
  • 贈与契約書をその都度作成し、目的や合意を記載
  • 受贈者が引き出して使うなど、実際に財産の移転が行われている証拠を残す

失敗例3:兄だけに住宅資金贈与で特別受益紛争

【状況】
両親が長男のマイホーム資金として3,000万円を贈与。相続時に次男・長女が「兄は特別受益だ」と主張し、遺留分侵害額請求で激しい対立。結果、長男が他の兄弟に代償金を払うことになり、新居へのローン返済との二重負担に。

【原因】

  • 両親が他の子への配慮や説明をせず、長男のみ贈与
  • 遺言書にも特別受益の記載がなく、兄弟間で不公平感が増幅

【回避策】

  • 事前に家族会議で説明し、他の兄弟の理解を得る
  • 遺言書で特別受益の扱いを明確化し、遺留分対応を記載
  • 必要に応じて代償分割を計画

全体を通じた回避方法

  • 早期の贈与計画
    若いうちから段階的に贈与し、3年加算や連年贈与疑惑を回避
  • 契約書作成と公正証書化
    贈与契約書に加え、場合によっては公正証書にすることで証拠力UP
  • 家族全体への説明
    親族会議や書面で方針を共有し、不公平感を減らす
  • 専門家連携
    弁護士・税理士のアドバイスで、税務と法務の両面から安全策を講じる

弁護士に相談するメリット

  1. 失敗事例のノウハウ蓄積
    多くの事例を知る弁護士が、よくある落とし穴を事前に防止
  2. 契約書や遺言書の整合性
    贈与契約と遺言書を連動させ、特別受益や遺留分侵害を未然に回避
  3. 税理士との連携で最適策提案
    贈与税・相続税の合計負担を最小限にするプランを提示
  4. 家族会議の調整役
    感情的対立を法的根拠に基づいて緩和し、円満な合意を形成

まとめ

生前贈与で起きがちな失敗例としては、

  1. 3年以内の多額贈与
    → 相続税加算で節税効果なし
  2. 連年贈与
    → 税務署に疑われ一括課税
  3. 特別受益トラブル
    → 遺留分侵害額請求で家族紛争
  4. 契約書なし
    → 後から「貸し付け」「押し付けだった」と争い発生

これらを回避するには、契約書の作成、公正証書化、家族間の説明、遺言書との連動などがカギとなります。具体的にどう進めるか迷う方は、弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。失敗を防いで、生前贈与を活用するサポートをいたします。

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