はじめに
「生前にある程度の財産を贈与しておきたいけど、相続の時に上手く対応できるかな?」
生前贈与と相続は、本来別々の制度ですが、両方を適切に組み合わせることで、税務面での負担を軽減しつつ、家族への配慮も可能になります。例えば、一部を生前贈与で子に渡しておき、残りを遺言書で他の家族に分けるなど、柔軟な設計ができるのです。
本記事では、生前贈与と相続を組み合わせる方法を紹介し、どのようにすれば家族全員が納得しやすい形で財産を引き継げるかを解説します。節税と円満相続の両立を目指す方に必見の内容です。
Q&A
Q1. なぜ生前贈与と相続を組み合わせる必要があるのですか?
- 税務メリット
年110万円の非課税枠や特例を活用しながら、一部は相続税の基礎控除や配偶者控除も利用できる - 家族トラブル回避
生前に贈与を受けた子と、相続時に財産を受け取る子のバランスをとれる - 財産移転の時期分散
大きな財産をまとめて一度に渡すと、税負担や家族の負担が集中
Q2. 具体的にどう組み合わせるの?
例えば、
- 住宅資金を子へ生前贈与(非課税特例)
- 残りの財産は相続(遺言書で分配指示、相続税の基礎控除も利用)
- 教育資金や結婚資金の贈与と遺言書での相続分割を両立
といった形です。それぞれの特例や遺留分対策を意識しながら設計します。
Q3. 遺留分侵害が起こらないようにするには?
- 遺言書で「生前贈与の○万円は特別受益とする」などを明記
- 代償分割などで受贈者が他の相続人に金銭を支払う仕組み
- 家族会議で事前に説明・合意
Q4. 税理士や弁護士の力が必要?
はい。税金計算や法律手続きが複雑なので、税理士や弁護士と連携することで、税務メリットと家族間の円満を両立するスキームを構築しやすくなります。
解説
一部を生前贈与、残りを相続で渡す
- 住宅資金など、急いで援助したい部分を生前贈与
非課税特例(住宅取得資金、教育資金)を活用 - 残余財産は相続時に配分
遺言書で遺産分割を明確化し、相続税の配偶者控除や基礎控除を有効活用
連年贈与と「110万円枠」の使い方
- 毎年少額の贈与で課税回避
年110万円以内なら贈与税0円。ただし連年贈与の疑いを避けるため、毎年多少変化をつけたり契約書を作る - 贈与から相続へのタイミング
できるだけ早め(数年・数十年単位)に贈与しておくと、3年以内加算のリスクを減らせる
遺言書で特別受益や代償分割を組み込む
- 特別受益の処理
「〇年〇月に長女へ〇万円を贈与した分は遺産分割の際に考慮する」など書いておけば、他の相続人が納得しやすい - 代償分割
生前贈与を受け取った人が、相続時に他の相続人へ金銭を支払う形でバランスをとる - 遺留分侵害の回避
贈与を受けていない相続人の最低限の取り分を侵害しないよう、遺言書で配慮し、家族間の対立を防ぐ
注意点
- 3年以内の贈与加算 ※改正後は7年
被相続人の死亡前3年に贈与した分は相続税計算に合算されるため、駆け込み贈与は注意 - 連年贈与リスク
税務署から「実質一括贈与」と見なされる可能性がある - 贈与契約書の整備
口頭だけの贈与は後から家族が否定しやすい - 家族の納得
生前贈与する人としない人、贈与額の差が生じるとトラブルになりやすい
弁護士に相談するメリット
- 一貫した設計
生前贈与を行いつつ、遺言書や遺産分割協議との整合性を確保 - 公正証書化や契約書作成
弁護士が精密に書面を作成し、後々の紛争を予防 - 遺留分侵害・特別受益問題への対策
- 代償分割や遺言書での調整を含め、最善策を提案
- 税理士との連携
贈与税・相続税の最適化を図り、家族全体の利益を最大化
まとめ
生前贈与と相続を組み合わせることで、財産の一部を早めに移転し、残りは相続で分配するなど柔軟な選択肢が生まれます。ただし以下の点に注意してください:
- 3年以内の贈与加算や連年贈与に注意し、節税効果を確認
- 贈与契約書を作成し、家族への説明と同意を得る
- 遺言書で特別受益分を考慮し、遺留分トラブルを回避
- 弁護士・税理士と連携し、法務・税務面で最適なプランを構築
この方法で、円満かつ合理的な財産承継を目指しましょう。詳しいアドバイスを求める際は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
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