【コラム】平成30年改正「一部の遺産分割の明文化」(令和元年7月1日施行)

【執筆】弁護士 母壁 明日香(茨城県弁護士会所属)

Point!
遺産の一部分割について、協議で遺産分割が行えることを明確にしたとともに、家庭裁判所に遺産分割の調停又は審判を求める場合にも、遺産の一部の分割を請求できるようになりました。

<改正前>

改正前の民法907条1項は、「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。」と規定しているのみで、一部分割が可能かどうか明文化されていませんでした。遺産分割審判においては、①遺産の一部を他の部分と分離して分割する合理的な理由があること、②遺産の一部を分割することによって全体としての適正な分割を行うために支障が生じないことという要件を満たす限りで例外的に一部分割が認められるものでした。

<改正後>

改正後の民法907条1項では、「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。」とし、一部分割も可能である旨を明らかにしました。

また、同条2項本文では、「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。」とし、家庭裁判所に遺産分割の調停又は審判を求める場合にも、遺産の一部の分割を請求できるようになりました。さらに、同条2項但書で、「ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。」と、上記②の要件のみが定められ、①の要件は不要となりました。

遺産の対象に不動産や非上場会社の株式などがあると、その評価をめぐって争いになり、遺産分割が進まないことがあります。また、遺産が多かったり、被相続人と同居していた相続人が遺産を開示しなかったりして、遺産の対象となる財産が確定できず、遺産分割が進まないこともあります。

今回の改正により、争いのない遺産については、ほかの遺産と切り離して一部分割もできることになり、紛争の早期解決に資することが期待されています。

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