はじめに
Q. 相続対策の一環として遺言書の作成が勧められていますが、本当に必要なのでしょうか?
A. 遺言書は、被相続人の意思を明確に伝え、相続人間のトラブルを未然に防ぐために非常に重要です。相続は、家族間での大切な財産の引き継ぎという一面がありますが、適切な準備を怠ると「争続」と呼ばれる深刻な問題に発展することがあります。遺言書は、これらのリスクを回避する有効な手段です。
遺言書を作成することは、自分の意思を家族に伝えるためだけではなく、家族間のトラブルを防ぎ、財産を適切に分配するための大切な手段です。本稿では、遺言書の基本的な役割や種類、作成時の注意点について解説します。
遺言書とは
遺言書とは、被相続人が自身の財産を誰にどのように分配するかについて、法的に有効な形式で記載した書面です。日本の民法では、遺言書の有効性について基本的な要件が定められています(民法960条~)。
遺言書が持つ役割
- 財産分配の意思を明確にする
被相続人がどの財産を誰に相続させるのかを明確に記載することで、相続人間でのトラブルを防ぎます。 - 法定相続分を調整できる
法定相続分通りではなく、被相続人の意思に基づいて自由に財産分配を決めることができます。 - 特定の相続人への配慮
家業を継ぐ者への優遇や、介護を担った家族への配慮など、個別の状況に応じた分配が可能です。
遺言書作成が相続対策として重要な理由
遺言書が相続対策として重要視されるのは、相続を巡る以下のリスクを未然に防ぐ効果があるからです。
1. 相続トラブルを防止する
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。この協議がまとまらないと、関係が悪化したり、解決までに数年かかることもあります。
2. 財産分配の公平性を確保する
法定相続分では、被相続人の意向や家族の状況が十分に反映されない場合があります。遺言書があれば、被相続人が望む形での分配が可能です。
3. 節税対策として有効
相続税対策として遺産分割の方法を工夫することができます。例えば、不動産の共有を避けることで、納税が困難になる事態を防ぐことが可能です。
種類別・遺言書を作成する際の留意点
遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴と注意点があります。
1. 自筆証書遺言
- 特徴
被相続人が全文を自書し、署名捺印を行う形式(民法968条)。 - メリット
費用がかからず、自宅で作成できる。 - 留意点
不備があると無効になる可能性が高い。法務局に保管することで安全性を高められますが、それでも専門家の確認を受けることが望ましい。
2. 公正証書遺言
- 特徴
公証人の立ち会いのもとで作成する形式(民法969条)。 - メリット
公証人が内容を確認するため無効になるリスクが少ない。紛失や改ざんの心配がない。 - 留意点
費用がかかるが、確実性を重視するなら最適。
3. 秘密証書遺言
- 特徴
内容を秘密にしたまま公証人に提出する形式(民法970条)。 - メリット
内容を他人に知られることなく作成できる。 - 留意点
他の形式に比べ利用される機会は少ない。法的効力を確認するために注意が必要。
弁護士に相談するメリット
遺言書の作成にあたり、弁護士に相談することには次のようなメリットがあります。
- 法的に有効な遺言書を確実に作成
民法の要件を満たさない遺言書は無効になる恐れがあります。弁護士が作成をサポートすることで、形式的な不備を防ぐことができます。 - トラブルを未然に防ぐ助言
家族間の複雑な人間関係や相続税の問題など、専門的な視点からアドバイスが受けられます。 - 相続税や不動産の分割問題にも対応
特に不動産の相続が絡む場合には、専門的な知識を持つ弁護士の助けが必要です。 - 安心感の提供
遺言書作成を弁護士に依頼することで、被相続人も相続人も安心して相続の準備を進めることができます。
まとめ
相続トラブルを未然に防ぐためには、遺言書の作成が欠かせません。自分の意思を明確に伝えることで、相続人間の争いを避けるだけでなく、家族の未来を守ることができます。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、遺言書作成に関する専門的なサポートを提供しています。ご自身やご家族のために、早めに準備を進めてはいかがでしょうか。
相続問題について解説した動画を公開しています
相続問題にお悩みの方はこちらの動画もご参照ください。
初回無料|お問い合わせはお気軽に
その他のコラムはこちら