無効となる遺言書の典型例

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はじめに

「万が一に備えて遺言書を残したのに、実は無効扱いになってしまった…」というケースは意外と多く存在します。遺言書は、自分の財産をどのように分配するか、あるいは家族への想いを伝える非常に大切なものですが、形式の不備や法律上のルールに違反してしまうと、その効力を失いかねません。

とくに自筆証書遺言を中心として、「しっかり書いたつもりが法的に無効となっていた」という事例は少なくありません。本記事では、無効となる遺言書の典型例を整理するとともに、どのようにすれば無効リスクを下げられるのかを解説します。せっかく書いた遺言書が無意味にならないよう、ぜひポイントを押さえておきましょう。

2 Q&A

Q1. 「吉日」と書いたり、日付を省略したりすると無効になるのですか?

A. はい、無効になる可能性が高いです。たとえば「令和○年○月吉日」などの日付の書き方は、法律上「日付の特定が不可能」と判断され、無効扱いとなるリスクがあります。明確に特定できる日付を記入しなければなりません。

Q2. 夫婦共同で書いた「夫婦連名の遺言書」は問題がありますか?

A. 遺言は、法律上あくまでも「個人」が作成するものです。夫婦連名や共同署名の遺言書は無効と解されるため、夫婦それぞれが別個に作成する必要があります。

Q3. 転記や代筆で書いた遺言書も無効なのでしょうか?

A. 自筆証書遺言の場合、遺言の本文・日付・氏名を遺言者本人が自書しなければなりません。全ページをパソコン等で作成すると無効です(ただし財産目録のみパソコン作成可)。代筆は原則的に認められないため、代筆部分が含まれていると無効となる可能性が高いです。

Q4. 古い遺言書と新しい遺言書が両方出てきた場合、どちらが有効になりますか?

A. 原則として、日付が新しい方が有効です。新しい遺言書で「以前の遺言書を撤回する」と明示している場合はもちろん、新しい遺言の内容が以前の遺言内容と矛盾する部分については、日付の新しい方が優先されます。ただし、複数の遺言書が存在すると相続人間で混乱やトラブルを招きやすいため、注意が必要です。

3 解説

3-1.無効になりがちな典型例

  1. 日付が特定できない・一部省略されている遺言書
    • 「○月吉日」など、具体的に日付が確定できない表現がある。
    • そもそも日付を書き忘れたケース。
  2. 署名もしくは押印が欠けている遺言書
    • 遺言者の名前が本文に記載されていても、署名欄にきちんと署名をしていない。
    • 押印を忘れたままになっている。
  3. 夫婦連名・共同署名の遺言書
    • 夫婦が一通の遺言書に連名して意思表示してしまったケース。
    • 遺言は個人の意思表示が原則のため無効となる。
  4. 自書でない(代筆・パソコン作成)の自筆証書遺言
    • 財産目録以外をパソコンで作成している。
    • 他人に代筆させている。
  5. 作成時点で遺言能力が認められないケース
    • 遺言者が認知症などにより、遺言作成時に意思能力が十分でないと判断される場合。
    • 意思能力の有無は医療記録や日常の言動など、多角的に検証される。
  6. 取り消されたり、別の遺言書と内容が抵触しているケース
    • 新たに作成した遺言書で「以前の遺言はすべて撤回する」と明記された場合、以前の遺言は無効に。

3-2.実際に争いになった事例

  • 日付の不備の事例
    ある事例では、遺言書に「●年●月吉日」とのみ書かれており、具体的に何月何日かが不明確だったため裁判で争いになりました。このケースでは無効と判断され、相続人間での分配協議をやり直す結果となりました。
  • 署名が認め印のみだったが、本人の自筆署名がなかった事例
    内容自体はしっかり書かれていたものの、署名欄に本人名義の記載がなく印だけ押していたため、裁判所が形式不備として無効と扱いました。

3-3.無効リスクを回避するポイント

  1. きちんと日付を特定する
    「令和○年○月○日」のように、必ず日・月・年を特定しましょう。
  2. 署名・押印は必ず行う
    署名は戸籍名で書くことが望ましい(ペンネームなどは避ける)。押印は認印でも有効ですが、実印が望ましい場合もあります。
  3. 夫婦それぞれが別々に作成する
    意思表示が混同しないよう、夫婦連名は避けて個人ごとに遺言書を残す。
  4. 定期的に見直す
    状況が変わったら、新しい遺言書を作成して古い遺言書は破棄・撤回するなど、混在を防ぐ。

4 弁護士に相談するメリット

  1. 確実に有効な遺言書を作成できる
    弁護士は遺言書に関する判例や実務の知識を持っており、書式の不備をチェックすることで無効リスクを大幅に下げることができます。
  2. 意思能力が問題となる場合の対応策
    遺言者の健康状態や意思能力に不安がある場合、医師の診断書を取得したり、公正証書遺言に切り替えたりといったアドバイスを適切に行います。
  3. 複数の遺言書が存在する場合の整理
    既に存在する遺言書との齟齬をどう処理するかなど、法的に整合性を取って新たな遺言書を作成するサポートが可能です。
  4. トラブル防止のための条項設計
    遺留分や公平性などに配慮した内容を提案することで、相続人同士の争いを未然に防ぎます。

5 まとめ

遺言書は形式や内容に少しでも不備があると無効になってしまうリスクがあるため、注意が必要です。とくに自筆証書遺言では、書き手のちょっとしたミスが致命的な結果を招くこともしばしばあります。

  • 日付は明確に特定できる書き方をする
  • 自書すべき部分は必ず自分で書く(代筆やパソコンは不可)
  • 夫婦共同ではなく、それぞれ個別に作成する
  • 以前の遺言書との重複や矛盾がないか定期的に確認する

せっかく書いた遺言書が無効とならないよう、基本的なルールを押さえ、疑問があれば弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。法律の専門家がチェックすることで、有効性と安全性を高めることができます。


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