相続人が未成年の場合の注意点

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はじめに

相続が発生した際に、相続人の中に未成年者が含まれることは珍しくありません。親が若くして亡くなった場合や、祖父母の相続で孫が相続人になるケースなど、状況はさまざまです。

未成年者は法定代理人の同意を得ないと法律行為ができないなど、特別な制約があります。そのため、遺産分割協議の場に未成年者が参加する場合は、法律上の注意点をしっかり把握しておかなければなりません。本記事では、相続人が未成年の場合の具体的な対応策や手続きのポイントについて解説いたします。

Q&A

Q1. 未成年の子どもが相続人になる場合、本人が協議に参加するの?

法律上、未成年者は法定代理人(親権者、後見人など)が代理して意思表示を行う必要があります。未成年者本人が直接、法的効力のある同意・締結をすることはできません。

Q2. 親がその子どもの代理人になれるのですか?

例えば父が亡くなり、母と子が相続人となったケースでは、母と子の利害が対立しやすいため、母が子を代理することは「利益相反」に該当する可能性があります。その場合、家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらう必要があります。

Q3. 特別代理人とは何でしょうか?

未成年の相続人と親権者との間に利益相反(相反する利害)があるときに、家庭裁判所が選任する代理人です。相続手続きでは、親も相続人となる場合によく利用されます。

Q4. 未成年者が相続放棄したい場合はどうする?

親権者や特別代理人が「相続放棄が子の利益になる」と判断する場合、家庭裁判所での相続放棄手続きを進めることができます。ただし、親権者が自分の利益を優先するために子の権利をないがしろにしていないか、注意が必要です。

解説

未成年者が相続人になるケースの典型例

  1. 父親が若くして死亡し、母と子が相続人になる
    この場合、母と子(未成年者)の利害が相反しやすいので、母だけでは子の代理ができず、特別代理人の選任を要する可能性が高い。
  2. 祖父母の相続で、孫が相続人になった
    親がすでに死亡している場合など、代襲相続によって孫が未成年で相続人になるパターン。

利益相反の具体例

  • 母が子より多くの相続分を得たいと思っている場合
    遺産分割協議では、当然母も自分の取り分をできるだけ確保しようとします。その際、子どもの相続分が不当に削られるリスクがあるため、同一人物が両者を代理することは利益相反に該当します。
  • 親が相続財産を勝手に処分するリスク
    親権者が子に内緒で財産を使い込むなどの可能性がある場合、子の保護を図るために厳格な手続きが要求されます。

特別代理人選任の手続き

  1. 申立先
    未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所。
  2. 申立人
    親権者や利害関係人(祖父母など)、検察官も申し立てることが可能。
  3. 申立書類
    • 申立書(特別代理人選任申立書)
    • 戸籍謄本や相続関係を示す資料
    • 利害相反に関する具体的な事情を記載する書類など
  4. 選任後の流れ
    特別代理人が、遺産分割協議における未成年者の代理人として参加し、協議書への署名押印を行う。

遺産分割協議における未成年者保護のポイント

  • 協議書内容の妥当性
    特別代理人は子の最善の利益を追求する立場にある。母など他の相続人とのバランスを客観的に判断し、子に不利な内容にならないよう注意。
  • 後見人の存在
    親がすでにいない場合や、親にも判断能力がない場合、家庭裁判所が後見人を選任する可能性がある。後見人が子の相続手続きを遂行する。
  • 相続放棄や限定承認
    借金の多い相続では、未成年者の相続放棄を検討することもある。子の将来の利益を優先し、特別代理人や後見人が適正に判断する必要がある。

弁護士に相談するメリット

  1. 特別代理人選任手続きのサポート
    書類作成や家庭裁判所での説明など、一般の方にとっては複雑な手続きを弁護士が代わりに進められる。
  2. 遺産分割協議の適正化
    未成年者の相続分が不当に減らされないよう、弁護士が提案や交渉を行い、公平な合意を得やすくする。
  3. 子の利益に沿った判断
    親や他の相続人が感情的になっても、弁護士は法律の観点から子の権利を擁護し、冷静なアドバイスが可能。
  4. 相続放棄や限定承認のメリット・デメリット評価
    債務が多い相続では、子にとってのメリット・デメリットを法的に検証し、最適な方法を選択する支援ができる。

まとめ

相続人に未成年者が含まれる場合、通常の相続手続きに加えて特別代理人の選任など、追加の手間と注意が求められます。こうした手続きは、すべて未成年者を保護するための仕組みですが、制度を知らずに進めてしまうと後々無効主張やトラブルに発展する可能性があります。

  • 親権者との間で利益相反がある場合、特別代理人の選任が必須
  • 未成年者の権利を守るため、家庭裁判所の許可や後見人の関与が求められる場合も
  • 弁護士が適切なサポートを行い、子に不利が生じないよう協議を進める

未成年の相続人がいるケースでは、早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談いただくことで、手続きの流れや必要書類、メリット・デメリットを分かりやすくご説明し、最適な解決策を一緒に模索いたします。


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相続人が未成年の場合の注意点や、特別代理人の選任手続き、後見制度との違いなどを動画で解説しています。図解を用いてわかりやすく説明していますので、初めての方でもイメージしやすいでしょう。


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