不動産の相続

不動産の相続

不動産の相続においては、相続の流れやその方法、登記手続き等、不動産の相続手続きについて理解しておく必要があります。

なお、登記は登記名義人について行わなければなりませんので、例えば、亡くなられた方(被相続人)の親が登記名義人になっている場合には、まずその親からの相続登記を行う必要があります。何世代も相続登記をしていない場合(数次相続の場合)は、相続人も増え、多くの書類が必要となります。

不動産の相続については、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

不動産の相続手続きの流れ

遺言書を確認する

被相続人が亡くなって相続が発生した場合には、まず被相続人が遺言を遺しているかどうかを確認する必要があります。

被相続人が遺言書を遺していることを、周囲の方に伝えていないこともありますので、お手元にない場合であっても、まずは一度探してみていただけるでしょうか。

遺言書は、相続人以外の第三者(親しい知人や弁護士等の専門家、金融機関等)に預けられていることもあります。銀行の貸金庫に預けられていることもあります。

なお、公正証書遺言であれば、当該遺言に利害関係を持つ方の求めがあれば、公証人役場から検索することが可能です。

また、令和2年7月10日から施行された自筆証書遺言書保管制度により、法務局に自筆証書遺言が保管されている可能性もあります(令和2年7月10日以前に作成された遺言書も、所定の様式を満たしていれば、保管することができます)。法務局に遺言書保管事実証明書の交付の請求をすることにより、ご家族やお知り合い等が作成した遺言書で、自分を相続人や受遺者等・遺言執行者等とする遺言書が遺言書保管所(法務局)へ預けられているかどうかを確認することができます。

公正証書遺言がある場合
公証役場で公正証書遺言を確認し、それを元に不動産登記の登記移転手続きを行うことになります。
自筆証書遺言がある場合
家庭裁判所での検認をしてもらう必要があります。
その後、検認の手続がされている自筆証書遺言を元に不動産の登記移転手続を行います。 自筆証書遺言書保管制度を用いた自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所の検認手続きは不要です。

関連ページ
遺言書の作成
法務局における自筆証書遺言書保管制度の創設

相続人を確定させる

遺言書の有無を確認しながら、できるだけ早期に相続人も確定させます。誰が相続人かを調べるためには、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本を取り寄せて調べなければなりません。新たな相続人が後から発覚した場合、基本的には遺産分割協議のやり直しが必要になってしまうため、慎重に調べるようにしましょう。

「相続人」の範囲については、こちらをご参照ください。

関連ページ
相続人

財産を特定して財産目録を作成する

相続人を確定させる作業とともに、被相続人の財産を特定して財産目録を作成します。

相続財産に不動産があるかどうかは、市区町村から届く固定資産税の納税通知書を確認しましょう。さらに、納税通知書を発行した市区町村の役所にて「名寄帳」の写しを取得すれば、その市区町村で被相続人が所有する不動産の情報を一覧で確認できます。納税通知書がなければ、所有する不動産があると思われる市区町村で名寄帳を調べることになります。

また、令和8年4月までに施行される改正不動産登記法の所有不動産記録証明制度により、登記官において、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産(そのような不動産がない場合には、その旨。)を一覧的にリスト化し、証明してもらうことができます。

関連ページ
不動産登記制度の見直し

遺産分割協議を行う

遺言書があれば原則として遺言書の内容に従って相続しますが、遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議で分割内容の合意が得られたら、不動産をはじめとする財産を誰がどのように相続するかを記載する遺産分割協議書を作成します。

関連ページ
遺産分割協議書の書式・見本等

相続財産の名義変更(不動産の相続登記)

不動産を相続する際には、相続登記をすることで被相続人から相続人に名義が変更されます。

相続登記には、登記事項証明書など書類がいくつか必要になりますので、事前に準備しておきましょう。

遺産分割協議で分割を行なった場合の主な必要書類は以下となります。

被相続人の出生から死亡までの戸籍
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
相続人の戸籍
相続人の住民票
遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
固定資産税評価証明書

また、令和6年4月に施行される改正不動産登記法により、相続登記の申請が義務化され、原則として、相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされます。遺産分割の話し合いがまとまった場合には、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請しなければならないこととされます。

関連ページ
不動産登記制度の見直し

相続税の申告・納付

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内となっています。期限内に申告・納付できなければ、相続税に関する特例が適用できなかったり、延滞税などがかかったりしてしまいますので、注意しましょう。

関連ページ
相続税の計算

不動産の分割方法

不動産の分割方法は、大きく分けて4つあります。

不動産しか遺産がない場合や、遺産である不動産に相続人の一人が居住している場合は、特に遺産分割方法について争いになることがあります。

そこで、以下では、不動産の4つの分割方法についてご紹介いたします。

不動産の分割方法としてどの方法が一番適しているかは、個別具体的に判断する必要がありますので、まずは弁護士にご相談されることをお勧めします。

現物分割

現物分割とは、遺産をあるがままの姿で分割する方法で、例えば、以下のような分割方法になります。

「甲にはA土地を、乙にはB土地を、丙にはC土地を取得させる。」
「甲には土地を、乙には株式を、丙には現金を取得させる。」
「本件土地は、甲乙丙が各自3分の1の持分をもって共有取得する。」

現物分割は、当事者の意向を踏まえた上での分割方法であり、基本的な分割方法であるとされています。もっとも、不動産の取得に関心がない相続人ばかりである場合には、現物分割によることは現実的ではないといえます。

また、現物分割の場合には、遺産の評価が必要になり、不動産鑑定士等の鑑定評価が必要となることもあります。

さらに、最近の都市部において問題となる事例として、借地権の現物分割があります。 借地権を1人の相続人に帰属させる、あるいは数人で準共有の関係をもって取得する場合には問題ありませんが、数人で借地を細分化することは地主の不利益になることから地主の承諾なしには許されないと考えられています。

代償分割

代償分割とは、遺産の現物を共同相続人のうち特定の1人または数人に取得させ、その取得者に、現物を取得しなかった他の共同相続人に対する債務を負担させる分割方法です。

実務上、遺産が居住用の土地建物のみで、現にそこに共同相続人のうちの特定の者が生活しており、その者の生活関係の安定を考慮しなければならない場合や、農地、営業用資産など、細分化を避ける必要性が高いとか、換価しにくいなどの特殊性のある遺産の場合に、代償分割がなされることが多いといえます。

代償分割は、現物分割ができないときに、一番合理的な解決が期待できる方法であるといえますが、遺産を多く受け取った相続人が代償金を準備できないときは使うことができません。

また、代償分割では、債務の分割払いや一定期間の支払猶予などの形をとる場合もあり、分割終了後にも、相続人間に長期にわたって債権債務関係が残る煩わしさや、債務の履行確保をどうするか等の問題も伴います。

換価分割

換価分割とは、遺産を売却して金銭に換価し、その価値を分割する方法です。

相続人の誰もが不動産の取得を希望せず、現物分割が不可能な場合や、現物分割では著しく価値を損ずるような場合にとられることが多い方法といえます。

また、相続分の比率を調整する目的で、遺産の一部を現物分割し、残りの一部を分割しやすい金銭に変え、現物分割で生じた相続分の過不足を修正するということも行われています。

共有分割

相続財産の全部または一部を、相続人中の数人ないし全員の共有とする分割方法です。

共有分割は、分割を段階的・漸次に行う必要のある場合や、共同相続人がいくつかのグループに分かれて争っているものの、各グループ内部では対立がなくまとまっているような場合に採用されることが多い方法といえます。

4 不動産の評価方法

不動産を相続する際には、不動産の評価額を知る必要があります。

不動産の評価額については、実勢価格、固定資産評価額、公示価格、路線価(相続税評価額)、地価調査価格などがありますが、このうち遺産分割においては 実際の不動産の価格である実勢価格を基準とすることになります。実勢価格といっても、簡単にこれが明らかになるわけではなく、最終的には不動産鑑定士による鑑定評価額によるといわざるを得ません。

もっとも、鑑定には費用と時間を要することから、まずは、その不動産の所在地域に精通した不動産業者などからの聴取りによる方法と、これによって得られた価格と公示価格などを比較検討することになります。

他方で、相続税申告の不動産評価額の基準となるのは、土地であれば路線価で、家屋であれば固定資産税評価額です。

土地の評価方法

土地の評価額は、基本的には路線価を基準とする路線価方式で評価しますが、路線価がない地域は倍率方式で評価します。

路線価方式

路線価とは、土地が面する道路ごとに設定された土地の価格で、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べることが可能です。この路線価を基準に評価額を算出する方法を路線価方式といいます。

路線価は、1平方メートルあたりの価格が千円単位で表記されており、「200A」と記載されていれば、1平方メートルの価格は20万円です。これに、面積や道路からの奥行きによって価格を補正する奥行価格補正率などを掛けることで、その土地の評価額が決まります。

なお、借地権の評価額は、その土地の評価額に借地権割合を掛けて算出します。借地権割合は、路線価の数字の後ろにあるアルファベットで表されており、借地権割合90%のAから借地権割合30%のGまで、10%刻みで設定されているものです。

倍率方式

倍率方式は、路線価が設定されていない土地の評価額を算出する方法です。固定資産税評価額を基準に、その土地に設定された倍率を掛けて評価額を算出します。倍率も、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べることが可能です。

関連ページ
国税庁|財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

家屋の評価方法

家屋は、固定資産税評価額がそのまま相続時の不動産評価額になります。固定資産税評価額は、毎年送られてくる納税通知書に記載されていますが、手元に納税通知書がない場合は市区町村役場の窓口等で確認しましょう。

相続登記にかかる費用

不動産を相続する際には、相続税以外にも相続登記に関する費用がかかります。

登録免許税

相続登記には、登録免許税を支払う必要があります。相続登記での登録免許税額は、固定資産税評価額の下3桁を切り捨て、それに税率の0.4%を掛けて算出した金額です。算出した金額の下2桁は切り捨てます。

登記事項証明書などに関する費用

相続登記には、登記事項証明書や戸籍謄本、住民票などの書類を取得する費用や、書類を法務局へ送付するための郵送費なども必要です。

登記事項証明書を法務局の窓口にて書面で交付請求する際の手数料は、不動産1件につき600円です。

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