遺言書の有効性を争いたい

遺言とは

遺言とは、一定の方式で示された個人の意思に、その者の死後、それに即した法的効果を与えるものであり、遺言者が生涯をかけて築き、かつ、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う意思表示です(なお、遺言には、非嫡出子を認知するなどの身分上の事項に関する遺言もありますが、ここでは、財産上の事項に関する遺言について説明することとします。)。遺言がないために、相続をめぐり、親族間で争いの起こることは少なくありません。しかし、今まで仲の良かった者が、相続をめぐって骨肉の争いを起こすことほど、悲しいことはありません。遺言は、上記のような悲劇を防止するため、遺言者自らが、自分の残した財産の帰属を決め、相続をめぐる争いを防止しようとする目的があります。また、大切な遺族に対して「最期のメッセージを遺す」という意味もあります。

遺言は、遺言者の死亡後に、その意思を確実に実現させる必要があるため、民法に定められた方式に従わなければなりません(民法960条)。その方式に従わない遺言は、全て無効となります。「あの人は、生前にこう言っていた」などといっても、また、録音テープやビデオで録音や録画をしておいても、それらは、遺言として、法律上の効力がありません。

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遺言が無効となる場合

遺言には、① 公正証書遺言、② 自筆証書遺言、③ 秘密証書遺言の3種類があります。

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このうち、遺言の無効が問題となるのは、② 自筆証書遺言が圧倒的に多いといえます。そこで、自筆証書遺言について、どのような場合に無効となるかをご紹介します。

まず、自筆証書遺言に関する民法の重要な条文をみておきましょう。

(遺言能力)
961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。
963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

(共同遺言の禁止)
975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

これらの条文に違反する具体的な例としては、以下のような場合が挙げられます。

  1. 遺言能力がない者の遺言
  2. 遺言者以外の者が書いている
  3. パソコンで作成している(相続財産目録を除く)
  4. 日付が書いていない
  5. 遺言者の署名がない
  6. 遺言書に押印がない
  7. 遺言書の内容が意味不明である
  8. 二人以上が共同で書いている

また、上記の条文のとおり、遺言内容を訂正する場合にも、その方法は明確に定められていますので、この方式が守られていない場合、変更後の遺言が一部無効となる可能性があります。

遺言の有効性判断のポイント

 上記具体例のうち、判断が難しく、実際によく問題となるのは、次の2つのケースです。

  • ①遺言能力がない者の遺言
  • ②遺言者以外の者が書いている

遺言能力がない者の遺言

遺言能力について民法上明確な定義は存在しませんが、抽象的には「遺言当時、遺言内容を理解し遺言の結果を弁識し得るに足る能力」等といわれています。簡単に言えば、「遺言の内容を理解し、判断する能力」です。

前記条文のとおり、民法は、「15歳に達した者は、遺言をすることができる」と規定していますので、15歳未満の者の遺言は当然に無効となります。

実際によく問題となるのは、高齢の方などで、認知症がある場合です。もっとも、高齢だからと言って、直ちに遺言能力がないとはいえませんし、認知症と一口に言ってもその程度は様々です。

そこで、裁判実務においては、医学的要素のみならず、以下のような要素を総合考慮して遺言能力の有無が判断されています。

  • ①遺言者の年齢
  • ②病状を含めた心身の状況及び健康状態とその推移
  • ③発病時と遺言時との時間的関係(論理的思考の有無、異常行動の存否等)
  • ④遺言時及びその前後の言動
  • ⑤日頃の遺言についての意向
  • ⑥遺言者と受贈者との関係
  • ⑦遺言の内容(単純か複雑か、合理性の有無等)

遺言者以外の者が書いている

自筆証書遺言は遺言者本人が自書しなければならないものですが、この自書性が争われる事例でもっとも多いのが「偽造」です。

「偽造」とは、平たく言えば、権限がないのに他人名義の文書を作成することであり、押印のある遺言書を無断で作成すれば、その遺言書は当然自書ではないので無効となります。さらに、かかる行為は私文書偽造罪(刑法159条1項)にも該当し得る極めて重大な違法行為であるといえます。

なお、遺言書を偽造した者は、相続人となることができません(民法891条5号)。

遺言者以外の者が書いたかどうかを判断するポイントとしては、以下のような要素が挙げられます。

  • ①遺言者本人の自書能力の有無・程度
  • ②遺言者本人の筆跡との相違の程度
  • ③遺言の内容(不自然・不合理でないか、特定の者に有利でないか等)
  • ④遺言の動機 ⑤遺言書の保管状況

以上が遺言の有効性判断のポイントです。もっとも、実際にこれらを適切に判断することは非常に難しいことですので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

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