はじめに
相続人の中に未成年者が含まれる場合、借金などのマイナス財産があるなら相続放棄を検討したい状況もあり得ます。しかし、未成年者には法律上行為能力に制限があるため、親権者や特別代理人を通じて手続きを行う必要があるなど、通常の相続放棄とは異なる注意点があります。
本記事では、未成年者の相続放棄について、どのように手続きを進め、どこに気を付けるべきかを詳しく解説します。未成年のお子さんが相続人となっている場合に備え、正しい知識を身につけてください。
Q&A
Q1. なぜ未成年者だと親権者が代わりに手続きできるの?
民法上、未成年者は法定代理人(親権者)による代理行為が必要です。相続放棄のような重要な法律行為も、親権者が子の代わりに申述するか、特別代理人が選任されるかして進めます。
Q2. 親権者が借金を負う場合、利害相反になりませんか?
たとえば、親と子が共同相続人で、親は相続を継続し、子は放棄したいというとき、利害相反の恐れがあります。その場合、裁判所に特別代理人を選任してもらい、未成年者の相続放棄手続きを行う必要があります。
Q3. 手続き期限(3カ月)は同じですか?
はい、未成年者であっても、相続の開始を知った時から3カ月という熟慮期間は同じです。ただし、親や特別代理人が手続きを把握していないと過ぎてしまう危険があるので注意が必要です。
Q4. 特別代理人ってどうやって選任されるの?
家庭裁判所に特別代理人選任の申立を行い、裁判所が客観的に見て適切な代理人を選任します(親族や弁護士など)。利害相反の状況があるときに用いられる方法です。
解説
未成年者の相続放棄における基本フロー
- 相続開始後、親権者が財産を調査
借金や保証債務の有無を確認 - 親権者が代理で相続放棄申立
原則として、親が子の代理人となり、家庭裁判所へ申述 - 利害相反があれば特別代理人を選任
親や法定代理人が相続を希望し、子どもには放棄をさせたいなどの状況が典型 - 家庭裁判所の審理
不備がなければ受理通知書が発行され、未成年者も相続放棄が成立
利害相反の具体例
- 親は相続の継続を希望、子は放棄したい
借金とプラス財産が入り混じり、親が単純承認をする一方で子には負債を負わせたくない場合 - 相続財産を巡る意見の違い
子どもの取り分が少ないまたは借金のみといった状態で、親の意思と衝突 - 親が債権者
親が故人に金銭を貸していたなどの状況で、子が相続人になると利害がぶつかる
手続きで注意すべきポイント
- 法定単純承認のリスク
子が放棄を選ぶ場合でも、親や代理人が財産を処分すると、放棄が無効になる - 期限管理(3カ月)
親や代理人がうっかり遅れると、未成年者も放棄できなくなる - 書類の正確性
未成年者の戸籍、親権者の戸籍や住民票、利害相反状況を示す書類など - 特別代理人選任が必要かどうか
親が同時に相続人となっており、相続方法が異なる場合に注意
実務上の流れ(例)
- 親権者が子の代理で相続放棄を申述
特に利害相反がなければ、これで手続き可 - 利害相反の恐れがある場合
裁判所に特別代理人を選任してもらい、その代理人が子の相続放棄を申述 - 申述受理
照会書が届けば回答し、問題なければ受理通知書が交付 - 放棄後の財産使用に注意
子がいる家庭であっても、放棄した財産の処分はNG
弁護士に相談するメリット
- 利害相反の有無判断
親が代理できるか、特別代理人が必要か、弁護士が法的に判定 - 書類整備と短期決着
未成年者の戸籍関係、家庭裁判所申立書などを迅速に作成 - 相続人全体の状況把握
親を含めた家族全員の相続状況を整理し、トラブルを避ける - 財産調査と法定単純承認の回避
不要な処分行為を防ぐアドバイスで、子の放棄を確実に成立
まとめ
未成年者が相続放棄を行う場合は、親権者または特別代理人が手続きを進め、家庭裁判所の許可を得る必要があります。特に留意すべき点は以下のとおりです。
- 利害相反の確認
親が単純承認を選ぶ一方で子が放棄を希望するなど矛盾があれば、特別代理人を選任 - 3カ月の熟慮期間
未成年者であっても期限は同じ。親や代理人がしっかり管理 - 処分行為の禁止
放棄前後に故人の財産を積極的に使うと放棄が無効 - 弁護士のサポート
書類作成から利害相反の判断、財産調査などをトータルにサポート
もし未成年の子が相続人として借金を背負う可能性があるなら、早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所などの専門家へご相談ください。家族全体の状況を踏まえ、最適な相続方法をご提案いたします。
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