株式の相続と分割方法

はじめに

被相続人が自社株式や上場株式を保有していた場合、相続が始まるとその株式を誰がどのように承継するかが大きな争点となります。特に非上場会社の株式は評価額が不透明で、相続税も含めて複雑な問題を引き起こしがちです。そこで本記事では、株式の相続分割方法について、上場・非上場株式の違いや相続税評価の基本、分割パターンなどを解説します。

Q&A

Q1. 上場株式と非上場株式の相続で何が違うの?

上場株式は相続開始時の時価(終値など)を基に評価しやすく、分割もしやすい傾向にあります。非上場株式は市場価値がなく、株式の評価方法(類似業種比準方式など)が複雑で、経営権の問題なども絡むため、相続争いが起こりやすいです。

Q2. 非上場株式はどのように評価しますか?

税務上の評価方法として、原則「類似業種比準方式」や「純資産方式」などが使われます。会社の規模や事業内容によって細かな計算式があり、税理士や弁護士と連携しながら行うことが多いです。

Q3. 株式を分割する際の方法は?

一般的には、

  1. 現物分割
    株式をそのまま相続人に配分
  2. 換価分割
    株式を売却して現金化し、分配
  3. 代償分割
    ある相続人が株式を取得し、他の相続人に代償金を支払う

などが考えられます。非上場株式の場合、売却が困難なため代償分割が多用されることが多いです。

Q4. 事業承継に絡む株式相続は特別な問題がありますか?

事業承継の場合、会社の経営権を誰が握るかが大きな問題です。また、非上場会社だと自社株評価が高額になると相続税負担が大きくなり、事業継続が危うくなることがあります。そのため、事前に株式の移転計画相続税対策を行うことが重要です。

解説

株式相続の基本

  1. 相続税評価
    • 上場株式:相続開始日(死亡日)の終値や一定期間の平均株価などで評価
    • 非上場株式:類似業種比準方式、純資産方式などを駆使して算出
  2. 相続税申告
    • 株式を含む遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えれば相続税申告が必要
  3. 法定相続分と遺言書の有無
    • 遺言書があればその指定が優先。ただし遺留分に注意

分割方法とポイント

  1. 現物分割
    • 相続人ごとに株数を割り振る
    • 非上場株式で議決権が分散すると、経営方針が不明確になるリスク
  2. 換価分割
    • 株式を売却し、現金化したうえで分配
    • 上場株式は売却が容易だが、非上場だと売却先を探すのが難しく時間がかかる
  3. 代償分割
    • 後継者が株式を全取得し、他の相続人に代償金を払う
    • 事業承継で多用される手法だが、代償金を用意するために資金調達が必要になる

事業承継を含む非上場株式の対応

  1. 後継者への株式集約
    • 経営権を安定させるため、後継者が過半数以上の株式を取得するのが一般的
  2. 株式評価額の軽減対策
    • 中小企業向け事業承継税制の特例など、納税猶予や免除制度を活用
    • 贈与税・相続税の負担を抑えるスキームを検討
  3. 遺留分対策
    • 親族が多い場合、子どもたちの遺留分が発生し、後継者に株式を集中しにくい
    • 遺言書で公平感を保ち、代償金を支払う仕組みを整える

手続きの注意点

  • 名義変更・証券会社手続き
    上場株式は証券会社での相続手続きが必要(戸籍、遺産分割協議書などが要る)
  • 非上場株式の議決権行使
    相続手続き完了まで、誰が株主として決議に参加するのか問題となる場合がある
  • 相続税申告と納税
    申告は死亡から10カ月以内、分割が未定なら未分割申告+後日更正の請求

弁護士に相談するメリット

  1. 株式評価と分割方法の提案
    税理士や公認会計士とも連携し、上場・非上場株式の評価額を確定。最適な分割案を示唆
  2. 遺言書や遺留分対策
    事前に遺言書を作成し、後継者に株式を集中させる際の法律面でのサポート
  3. 株主間の紛争回避
    兄弟姉妹が株を巡って争う場合、弁護士が調整役となり、代償分割や譲渡契約を円滑に
  4. 相続税対策
    事業承継税制の特例利用をはじめ、税理士と協力して納税負担を軽減するプランを構築

まとめ

株式の相続では、上場株式か非上場株式かで対応が大きく異なります。特に事業承継が絡む非上場株式は、経営権や相続税負担、遺留分問題などが複雑に絡み合うため、早期から専門家と計画を立てるのがベストです。以下のポイントを押さえましょう。

  1. 株式の種類(上場・非上場)や評価方法を把握
  2. 遺産分割方法:現物分割・換価分割・代償分割などを検討
  3. 事業承継:後継者へ株式を集中させる場合、遺留分や納税対策が必須
  4. 弁護士に相談:法務・税務・経営の視点から総合サポート

株式相続や事業承継でお悩みの方は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。税理士や会計士と連携し、円滑な株式移転と紛争予防をサポートいたします。

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