生前贈与後のトラブル事例と解決策

はじめに

「生前に財産を渡したのに、あとから家族が揉め出した…」――生前贈与は上手に活用すれば相続税対策や家族への支援となりますが、やり方を誤ると後から思わぬトラブルを引き起こすこともあります。たとえば、他の相続人が「自分だけ少ない」と不満を持ったり、受贈者が「勝手に贈与されたと思っていない」と主張したりといったケースが少なくありません。

本記事では、生前贈与後に実際に起こりがちなトラブル事例と、その解決策を解説します。親族間の紛争を回避し、財産を有効に活かすためにも、適切な手順と書面化、専門家の活用が重要です。

Q&A

Q1. 生前贈与でどんなトラブルがよくありますか?

  1. 特別受益問題
    1人だけ多額の生前贈与を受けたことで、他の相続人が遺留分侵害額請求
  2. 連年贈与トラブル
    税務署から「毎年110万円贈与は実質的にまとめての贈与では?」と指摘
  3. 契約書の未整備
    後から「本当に贈与したのか」「貸し付けでは?」と家族間で争う
  4. 受贈者が財産を乱費
    親の意図とは異なる使い方をして不満が高まる

Q2. 特別受益問題とは?

生前贈与などで特定の相続人が多額の援助を受けた場合、それを「特別受益」としてみなし、相続時に遺産に加算して遺留分を計算する仕組みです。他の相続人は「不公平だ」として、遺留分侵害額請求を起こす可能性があります。

Q3. 連年贈与で税務署から指摘されるとどうなる?

一定の意図(数年にわたって毎年110万円ギリギリで贈与する)が認められると、実質的にまとまった贈与と判断され、まとめて贈与税が課税されるリスクがあります。結果的に、予定外の高額課税追徴課税が発生する可能性があります。

Q4. トラブルを防ぐ解決策はありますか?

  • 贈与契約書の作成(公正証書化が望ましい)
  • 遺言書と併用し、特別受益や遺留分への対処を明記
  • 家族会議で贈与の目的や金額を透明化
  • 弁護士・税理士への早期相談

解説

トラブル事例1:兄だけに多額の住宅資金を贈与

【状況】
父が長男に3,000万円を生前贈与して住宅を購入させたが、次男と長女には何も贈与なし。相続発生後、次男・長女が「兄は特別受益だから、遺留分を多くよこせ」と要求し紛争化。

【原因】

  • 父が契約書や遺言書を整備せず、ほかの子へは何も説明なし
  • 特別受益として認定され、遺留分侵害額請求される結果に

【解決策】

  • 事前に家族へ事情を説明し、「贈与は特別受益として扱う」遺言書を作成
  • 必要に応じて代償分割(兄が他の兄弟へ金銭を支払う)で公平感を保つ

トラブル事例2:毎年110万円の贈与で連年贈与疑惑

【状況】
祖父が孫に毎年110万円ずつ10年間渡し続けたが、実質は1,100万円の贈与を10年に分割したと税務署から指摘され、まとめて課税されそうに。

【原因】

  • 毎年同じ日に同額を振り込むなど、形式的に連年贈与と判断される要素が多い
  • 贈与契約書がなく、孫が単に口座を受け取っただけで何も明確な合意が書面化されていない

【解決策】

  • 毎年の贈与について、贈与契約書受贈の意思表示を明確化
  • 金額や振込時期を多少変えるなど、連年贈与と見なされない工夫

トラブル事例3:受贈者が乱費し、残額がなくなる

【状況】
父から長男に2,000万円の生前贈与を行ったが、長男が浪費して財産を失ってしまう。父が後悔しても、すでに贈与は完了しており、取り戻せない。

【原因】

  • 贈与の目的や使途を全く限定しなかった
  • 監督条項や返還義務条項もなし

【解決策】

  • 目的別に贈与(教育資金や住宅資金で特例適用)
  • 民事信託負担付贈与にして、用途を制限する
  • 金銭の管理を専門家が監視する仕組み(信託)

共通の解決策

  • 贈与契約書作成
    契約日時や金額、目的、受領方法を明示し、可能なら公正証書に
  • 遺言書とリンク
    特別受益を明示し、他の相続人の遺留分をどう調整するか書く
  • 家族への説明・同意
    贈与内容を家族みんなで共有し、不公平感を低減

弁護士に相談するメリット

  1. 契約書・遺言書の整合性確保
    生前贈与分を特別受益としてどう扱うか、遺言書と併せて設計
  2. 税理士との連携で連年贈与や特例適用を検討
    税務的にも合法かつ最適な方法を提案
  3. 家族会議のファシリテート
    弁護士が中立な立場で家族の意見をまとめ、紛争発生リスクを低減
  4. 紛争時の代理人
    万が一、遺留分侵害額請求などトラブルが起きても弁護士が交渉・裁判を対応

まとめ

生前贈与後のトラブルとしては、特別受益問題連年贈与疑惑家族への不十分な説明が原因で紛争が生じるケースが多いです。以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. 契約書作成(公正証書推奨)で贈与の事実を明確化
  2. 3年以内の贈与加算など税制を考慮し、早めかつ計画的に贈与
  3. 遺言書で特別受益を考慮する形にし、遺留分対策を行う
  4. 家族会議で贈与額や目的を事前説明し、不満を最小限に
  5. 弁護士・税理士と相談し、総合的な対策を立てる

こうした注意点を踏まえれば、円満な贈与と相続が期待できます。具体的にどう進めるかお悩みの方は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にぜひご相談ください。

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