相続財産を生命保険にするリスクと対策

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はじめに

相続対策として、生命保険を活用することは広く行われていますが、相続財産の大半を生命保険にする場合には、いくつかのリスクが伴います。生命保険は、相続財産の分割をスムーズに行うための有効な手段ですが、特別受益や遺留分の問題が発生することがあり、これにより相続人間でのトラブルが生じる可能性もあります。

本記事では、企業経営者や個人事業主の方々からよく寄せられる質問に基づき、生命保険を相続財産として活用する際のリスクと、それに対する対策について、弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説します。

Q&A

Q: 会社を経営していますが、相続対策として財産の大半を生命保険にすることを検討しています。これにはどのようなリスクが考えられますか?

A: 生命保険を活用することで、相続財産を特定の相続人に効率的に渡すことができるため、遺産分割のトラブルを避けることが期待されます。

しかし、相続財産の大半を生命保険にする場合、いくつかの法的リスクが伴います。例えば、生命保険金が特別受益として扱われる可能性があり、これが他の相続人との間で不公平を生じさせることがあります。

また、遺産分割協議が不要な場合でも、遺留分に関する問題が発生することがあります。こうしたリスクを回避するためには、事前に慎重な計画を立て、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

1.生命保険金が特別受益として扱われるリスク

生命保険金の特別受益としての扱い

生命保険契約において、特定の相続人を受取人に指定することは、相続財産を確実にその者に渡す手段として有効です。この方法は、遺産分割を避けたいという被相続人の意向を実現する上で有効です。受取人に指定された相続人は、保険金請求権を独自の権利として取得するため、この保険金は通常、遺産分割の対象にはなりません。

しかし、最高裁判所の判例によれば、保険金受取人と他の相続人との間に不公平が生じ、その不公平が「民法第903条(特別受益に関する規定)の趣旨に照らして到底是認できないほど著しい」と評価される特段の事情が存在する場合、保険金は特別受益に準じて扱われ、遺産分割における持戻しの対象となる可能性があります。この特段の事情の判断には、保険金の金額、遺産総額に対するその比率、被相続人と受取人との関係、その他の相続人の生活実態など、多くの要素が考慮されます。

実際のケースにおけるリスク

たとえば、相続財産の大部分が生命保険金で構成されている場合、他の相続人が「不公平だ」と感じる可能性が高くなります。特に、他の相続人が生活面で依存している場合や、被相続人の介護などに貢献していた場合、保険金の受取人だけが利益を受ける形になると、遺産分割の場で紛争が生じるリスクが高まります。このような場合、受取人に指定された相続人が、最終的に予期しない相続結果に直面する可能性があるため、相続財産の大半を生命保険にする際には慎重な判断が必要です。

2.遺産分割協議が不要でも生じるリスク

遺留分の算定と特別受益

遺産分割協議が不要な場合でも、生命保険金が相続におけるトラブルの原因となることがあります。遺留分は、被相続人が遺言によって自由に処分できる財産の限度を定めるものであり、相続人には遺留分を侵害されない権利があります。民法第903条に基づき、特別受益は遺留分の算定の基礎となるため、遺産分割協議が不要な場合であっても、生命保険金が遺留分の算定に含まれることがあります。

たとえば、遺言書に基づいて遺産分割が行われ、生命保険金の受取人がその保険金を独占する形になった場合、他の相続人が遺留分を請求し、その保険金が遺留分侵害額の一部として扱われる可能性があります。このようなケースでは、生命保険金の受取人は、自らの受け取った金額から他の相続人に補償しなければならないこともあります。

遺留分侵害額請求のリスク

遺留分侵害額請求は、特定の相続人が他の相続人に対して遺留分を請求することができる制度です。この制度に基づき、生命保険金を受け取った相続人が、他の相続人に対して補償を行わなければならない場合があります。このリスクを軽減するためには、相続財産を生命保険にする際に、受取人以外の相続人の権利も考慮する必要があります。

3.相続財産を生命保険にする場合の相談

生命保険のメリット

相続財産を生命保険にすることには多くのメリットがあります。まず、生命保険金は相続税の非課税枠があるため、相続税の負担を軽減することができます。また、保険金は現金で支払われるため、相続税の納税資金として利用することが容易です。このため、相続人が納税資金の準備に困ることを避けることができます。

さらに、生命保険を利用することで、特定の相続人に財産を集中して渡すことができるため、被相続人の意向を反映させることができます。これにより、特定の相続人が被相続人の介護などで特別に貢献していた場合、その相続人に対して適切な報酬を与えることが可能です。

リスクの回避と対策

しかし、生命保険を相続財産として利用する際には、上記のようなリスクも存在するため、事前に適切な対策を講じることが重要です。たとえば、受取人を複数指定することで、不公平感を軽減することができます。また、遺言書を作成する際には、他の相続人との関係や遺留分の問題を十分に考慮し、専門家のアドバイスを受けながら適切な内容にすることが望ましいです。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続財産の構成や生命保険の活用方法について、個別のケースに応じたアドバイスを提供しています。特に、相続財産の大半を生命保険にすることを検討している場合には、リスクとメリットを十分に理解した上で、慎重に計画を進めることが重要です。

4.弁護士に相談するメリット

専門的なアドバイスの提供

相続問題においては、法律の専門知識が必要不可欠です。弁護士に相談することで、生命保険を相続財産として利用する際のリスクや、相続税対策、遺言書の作成方法などについて、専門的なアドバイスを受けることができます。弁護士は、相続人間でのトラブルを未然に防ぐための最適なアプローチを提案し、スムーズな相続手続きをサポートします。

トラブルの予防と解決

相続問題では、感情的な対立が生じることが少なくありません。弁護士に相談することで、相続人間の対立を避けるための調整が行われ、公平かつ適正な相続が実現します。また、万が一トラブルが発生した場合でも、弁護士が間に入り、迅速かつ適切に問題を解決することが可能です。

法律に基づく適切な手続きの実行

相続に関する手続きは複雑で、法律に基づいた適切な手続きを踏む必要があります。弁護士に相談することで、相続税申告や遺言書の執行、遺産分割協議など、法的手続きを確実に行うことができます。また、遺留分侵害額請求や特別受益に関する問題にも対応し、相続人の権利を保護します。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続に関するご相談を承っております。初回相談は無料で対応いたしますので、ぜひご利用ください。

まとめ

相続財産を生命保険にすることは、多くのメリットをもたらす一方で、特別受益や遺留分に関するリスクが伴います。これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることで、相続におけるトラブルを未然に防ぐことができます。

特に、相続財産の大半を生命保険にすることを検討している方は、事前に弁護士に相談し、最適な方法を選択することが重要です。相続対策についてお悩みの方は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。


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