遺言執行者の選任に関するポイントと注意点

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はじめに

遺言を作成する際に、「遺言執行者」を選任するべきかどうか悩んでいる方は少なくありません。適切な遺言執行者の選任は、遺言の内容を確実に実現し、相続人間の争いを未然に防ぐために重要です。しかし、遺言執行者とは何か、誰を選べばよいのか、また選任の際にどのような点に注意すべきかを理解しておくことは、遺言を円滑に執行するために欠かせません。本記事では、遺言執行者の役割や選任の際の注意点について解説いたします。

遺言執行者に関するQ&A

Q: 遺言執行者を選任するべきかどうか悩んでいますが、選任するメリットは何ですか?

A: 遺言執行者を選任することで、遺言内容が実現されることが期待できます。遺言執行者には、相続財産の管理や相続人への遺産の分配などを行う重要な役割があります。また、遺言の内容が相続人間でトラブルを引き起こす可能性がある場合でも、第三者である遺言執行者が公正に対応することで、円滑な手続きが期待できます。さらに、遺言執行者を弁護士に依頼することで、法的な問題が発生した際にも適切に対応できるというメリットがあります。

遺言執行者とは?

1. 遺言執行者の定義と役割 

遺言執行者とは、遺言書に記載された内容を実現するために指定された者のことを指します。遺言書に明記された場合や、家庭裁判所の選任によって選ばれる場合があります。遺言執行者は、遺言の内容を忠実に実行し、相続財産の管理や分配などの手続きを行う義務があります(民法第1007条)。

具体的には、遺言執行者は相続財産の目録を作成し、それを相続人に交付することから始めます。その後、遺言に基づいて、財産の分配、名義変更、財産の管理、必要な手続きの実行などを行います。これにより、遺言者の意志を確実に反映させることができ、相続人間のトラブルを防ぐ効果が期待されます。

2. 選任するメリット 

遺言書に記載された内容が、相続人の利害と一致しない場合、遺言の実現が困難になることがあります。特に、相続人間で意見が対立し、遺言の内容をめぐって紛争が発生することは珍しくありません。遺言執行者を指定しておくことで、第三者の立場から公平に遺言の内容が実行されるため、相続人間のトラブルを避けることが期待できます。

さらに、遺言執行者として弁護士を選任することで、遺言の執行に関連する法律問題にも迅速に対応できるというメリットがあります。弁護士は法律の専門家として、複雑な相続手続きや紛争の解決に必要な知識と経験を持っているため、遺言の実現がより確実にできることが期待できます。

遺言執行者の選任を検討すべきケース

1. 子の認知を行う場合 

遺言で子を認知する場合、遺言執行者がその内容を実現するために必要です。法律上、母子関係は母が子を産んだ時点で自動的に発生しますが、父子関係は認知が必要です。認知は、遺言により行うことも可能であり(民法第781条)、遺言による認知の効力を発生させるためには、遺言執行者がその届出を行う必要があります(戸籍法第64条)。この手続きを行わなければ、遺言による認知は法律的に効力を持たないため、遺言執行者の選任は必須です。

2. 相続人の廃除または廃除の取消を行う場合 

相続人の廃除とは、被相続人を虐待したり重大な侮辱を加えたりするなど、著しい非行があった相続人について、その相続権を剥奪する手続きを指します(民法第892条)。この手続きは、通常は被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てることで行いますが、遺言において相続人の廃除を定めた場合には、遺言執行者が家庭裁判所に対して手続きを行う必要があります(民法第893条)。また、被相続人が生前に行っていた相続人の廃除を遺言で取り消す場合も、同様に遺言執行者がその手続きを行います(民法第894条)。

相続人の廃除やその取消は、相続人にとって極めて重要な意味を持つため、遺言執行者による確実かつ適正な手続きが求められます。このようなケースでは、特に経験豊富な弁護士を遺言執行者に選任することが望ましいでしょう。

遺言執行者に選任できる者と留意点

1. 選任可能な者 

遺言執行者には、未成年者や破産者を除き、誰でもなることができます(民法第1009条)。法定相続人や受遺者も遺言執行者に選任可能であり、自然人だけでなく法人も遺言執行者になることができます。たとえば、信託銀行などは業務として遺言執行者になることが認められており、弁護士もまた遺言執行者として選任されることがあります。

遺言執行者を選任する際には、信頼性と適切な知識を持った人物や法人を選ぶことが重要です。特に、相続に関連する法律問題が予想される場合には、法律の専門家である弁護士を遺言執行者として選任することもご検討ください。

2. 選任を辞退される可能性 

遺言執行者として指定された者が、その任務を辞退することも可能です。遺言執行者が選任を辞退する理由としては、相続人間の対立が深刻であったり、相続財産の状況が複雑である場合などが考えられます。たとえば、相続財産が多数の不動産や有価証券を含んでおり、それらの管理や名義変更が困難である場合、または相続人同士の関係が悪化しており、執行業務が紛争に発展する可能性が高い場合などです。

遺言執行者が辞退を希望した場合、遺言書に別の遺言執行者が指定されていない場合には、家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てる必要があります(民法第1010条)。この手続きは、相続人や利害関係人が行うことができます。

遺言執行者の指定・選任手続き

1. 指定方法と流れ 

遺言執行者は、遺言書に明記することで指定できます。被相続人が生前に遺言執行者として指定したい人物と相談し、その同意を得たうえで遺言書に記載することが一般的です。ただ

し、同意を得ていない場合でも、遺言書に遺言執行者として記載することは可能です。

遺言執行者の指定を第三者に委託することもできます。この場合、遺言書で指定された第三者は、遅滞なく遺言執行者を選任するか、選任を辞退するかを決定し、その結果を相続人に通知する必要があります(民法第1006条)。

2. 選任を辞退された場合の対応 

遺言執行者として指定された者が辞退した場合や、遺言書に遺言執行者が指定されていない場合、または選任された遺言執行者が執行中に死亡した場合などには、新たに遺言執行者を選任する必要があります。このような場合、相続人や受遺者などの利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます(民法第1010条)。この手続きを行うことで、適切な遺言執行者が選任され、遺言の内容が実現されることが確保されます。

3. 遺言執行者への報酬の定め方 

遺言執行者への報酬は、遺言書に記載されている場合、その定めに従います。遺言書に報酬の定めがない場合は、遺言執行者が家庭裁判所に対して報酬付与の審判を申し立てることができます(民法第1018条)。家庭裁判所が報酬を決定し、遺言執行者に支払われることになります。

また、遺言執行に要した費用は相続財産の負担になります(民法第1021条)。そのため、費用は遺留分を侵害しない範囲で相続財産から支払われることが一般的です。遺言執行者が報酬を請求できるのは、遺言執行が終了した後となります。

弁護士に相談するメリット

遺言執行者として弁護士を選任することには多くのメリットがあります。まず、弁護士は法律の専門家であり、相続手続きに関する豊富な知識と経験を持っています。これにより、遺言の内容を法的に適切かつ確実に実現することが期待できます。

さらに、相続に関連する法律問題や争いが発生した場合にも、弁護士であれば迅速かつ適切に対応することができます。例えば、遺産分割や遺留分に関するトラブルが生じた場合、弁護士が遺言執行者であれば、その場で法的なアドバイスを提供し、解決に導くことが可能です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、遺言執行者の選任だけでなく、相続全般に関する相談やサポートを提供しています。遺言書の作成から相続手続きの進行、さらには相続に関する紛争の解決まで、幅広い分野でのサポートが可能です。相続に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

遺言執行者の選任は、遺言内容の実現において重要です。適切な遺言執行者を選任することで、相続人間の争いを防ぎ、遺言書に記載された遺志を確実に実現することができます。特に、相続に関する法律問題が発生する可能性がある場合や、遺言の内容が複雑な場合には、弁護士を遺言執行者に選任することもご検討ください。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、遺言執行者に関するご相談や手続きのサポートを行っております。相続に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。


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