知っておきたい遺言書の撤回方法:適切な手続きとポイント
Q: 以前作成した遺言書の内容を変えたいのですが、どうやって撤回すればよいのでしょうか?
A: 遺言書は、人生の変化に伴って見直しが必要になることがあります。例えば、家族関係の変化や財産状況の変動などで、以前の遺言書が現状に合わなくなる場合があるでしょう。このような場合、遺言書を撤回することができますが、撤回には適切な手続きが求められます。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの形式があり、それぞれの形式に従った撤回方法があります。本稿では、それぞれの形式に基づく撤回方法と注意点について解説し、遺言書を撤回する際に考慮すべきポイントもご紹介します。
遺言書の撤回方法とは?
自筆証書遺言の撤回方法
自筆証書遺言とは、遺言者が全て自分の手で書き上げた遺言書です。この形式の遺言書を撤回するには、同じく自筆で「○○年○○月○○日付の自筆証書遺言を撤回する」と記載し、署名と印を押した書面を作成する必要があります。また、自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言や秘密証書遺言の形式で撤回することも可能です。自筆証書遺言の一部だけを変更することもできますが、その際には変更箇所を手書きで修正し、修正箇所に署名と印を付ける必要があります。変更が加えられた部分は明確に記録されなければならないため、「○○頁○○行目○○字削除、○○字加筆」といった具合に詳細を記載しなければなりません。
公正証書遺言の撤回方法
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意向を聞き取って作成し、公証役場で保管される信頼性の高い遺言書です。この形式の遺言書を撤回するには、新たな公正証書遺言を作成するか、他の形式の遺言書を作成することで撤回できます。ただし、公正証書遺言の撤回には注意が必要です。公証役場に保管されている原本を破棄することはできないため、新たに作成した遺言書を提出することが重要です。また、内容を変更したい場合も、新たな遺言書を作成し直す必要があります。
秘密証書遺言の撤回方法
秘密証書遺言とは、遺言書の内容を秘密にしたまま遺言の存在だけを公証人に確認してもらう形式です。この遺言書の撤回は、他の形式での撤回も可能ですが、封印されている遺言書を変更することはできません。そのため、内容を変えたい場合は、新たに遺言書を作成する必要があります。
撤回が推定される場合とは?
特定の状況下では、遺言書をわざわざ撤回する手続きを行わなくても、撤回されたとみなされる場合があります。例えば、異なる内容の遺言書を新たに作成した場合、後から作成された遺言書の内容が優先され、前の遺言書は撤回されたと見なされることがあります。これにより、前の遺言書の効力はなくなり、新しい遺言書のみが有効となります。また、遺言内容に関わる財産を処分した場合、その処分により遺言の内容と矛盾することになり、遺言が撤回されたと見なされることがあります。
遺言書を破棄した場合の影響は?
遺言者が遺言書を意図的に破棄した場合、破棄された部分に関しては、その遺言が撤回されたとみなされます。遺言書を破棄する方法は、遺言書の形式によって異なります。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、シュレッダーにかけたり燃やしたりするなど、完全に破棄することが求められます。特に、自筆証書遺言に関しては、法務局での保管が可能であり、保管された遺言書を撤回するには法務局への出頭が必要です。この際、保管を撤回した遺言書は遺言者に返還されるため、確実に廃棄することが重要です。
一方、公正証書遺言の場合、遺言書の原本は公証役場に保管されているため、手元にある謄本を破棄しても遺言の効力に影響はありません。公正証書遺言を撤回する場合は、新たな遺言書を作成し、古い遺言書の謄本を処分することで、誤解を避けることができます。なお、遺言書の原本は一定期間公証役場に保存されるため、削除を依頼することはできません。
違う遺言形式への変更は可能か?
遺言書を撤回する際、異なる形式の遺言書を作成することは可能です。例えば、自筆証書遺言を撤回し、新たに公正証書遺言を作成することができます。このような変更は、遺言書の内容をより適切に反映させるために行われます。ただし、形式を変更する際には、新たな遺言書が法律の要件を満たしていることを確認する必要があります。要件を満たさない遺言書は無効となり、前の遺言書が有効なままとなる可能性があります。そのため、遺言書を変更する際は、専門家の助言を受けることが望ましいといえます。
弁護士に相談することの重要性
遺言書の撤回や新たな作成にあたっては、法的な要件を満たすことが極めて重要です。形式を誤ると、せっかく作成した遺言書が無効になってしまうリスクがあります。弁護士に相談することで、遺言書が法律的に有効であるかどうかを確認し、確実に遺言者の意思を反映させることができます。さらに、遺言書を作成する際には、財産の評価や相続人間の調整も必要となりますが、これらの業務を弁護士に依頼することも可能です。弁護士のサポートを受けることで、相続に関するトラブルを未然に防ぐことができ、遺言者の意思を尊重した円滑な相続が実現します。
まとめ
遺言書の撤回は、法律に定められた形式に従って行う必要があります。不適切な撤回は、遺言書が無効になるリスクを生じさせ、遺言者の意思が反映されない可能性があります。遺言書を確実に撤回し、新たな遺言を有効に作成するためには、専門家のサポートを受けることもご検討ください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、遺言書の作成や撤回に関するご相談を受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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