遺言書の保管方法と留意点

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はじめに

遺言書は、遺産相続のトラブルを防ぎ、故人の意思を確実に実現するための重要な書類です。しかし、遺言書をただ作成するだけでは不十分であり、その保管方法にも十分な注意が必要です。適切に保管されていなければ、せっかく作成した遺言書が無効になったり、発見されないまま放置されたりすることもあります。本稿では、自筆証書遺言と公正証書遺言の保管方法について、それぞれの留意点を含めて解説します。

遺言書の保管が必要となる場合

遺言書を作成した際、その書類をどこに保管するかが問題となります。なぜなら、遺言書が発見されなければ、その内容が実行されることはありません。また、遺言書が見つかったとしても、改ざんや破棄のリスクがあれば、遺産相続の過程で深刻なトラブルが発生する可能性があります。

特に、自筆証書遺言を作成した場合、その保管場所が非常に重要です。ご自宅の目につきやすい場所に保管してしまうと、家族や他の関係者によって改ざんや破棄が行われるリスクが高まります。また、あまりに分かりづらい場所に隠してしまうと、相続が開始した後で発見されない可能性があります。これにより、せっかくの遺言書が無意味になってしまうことも考えられます。

公正証書遺言の場合は、基本的には公証役場に原本が保管されますが、こちらも保管方法に注意が必要です。次に、それぞれの遺言書の保管方法について具体的に説明します。

自筆証書遺言の保管方法

自筆証書遺言は、自分で書いて作成する遺言書です。作成が比較的簡単な反面、その保管には細心の注意が求められます。特に、改ざんや破棄、紛失のリスクを避けるためには、信頼性の高い方法で保管する必要があります。

自筆証書遺言を保管する最も安全な方法は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することです。この制度を利用すれば、遺言書の紛失や改ざんの心配がなく、また相続が開始した際に遺言書が確実に発見されるという利点があります。加えて、遺言書の内容が外部に漏れることもなく、安心して保管することができます。

一方で、法務局を利用せずに遺言書を保管する場合には、信頼できる人物に預けることが考えられます。この場合、預ける相手を慎重に選ばなければなりません。家族や親戚に預けることも可能ですが、彼らが遺言書を改ざんする、もしくは破棄してしまうリスクが残ります。さらに、預けた相手が遺言者よりも先に亡くなってしまうことも考慮しなければなりません。このようなリスクを避けるために、遺言書の作成を依頼した弁護士など、専門家に預けることが推奨されます。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。自筆証書遺言と異なり、形式的な不備が少なく、法律的に強い効力を持ちます。また、公正証書遺言は作成と同時に公証役場に原本が保管されるため、紛失や改ざんのリスクが大幅に軽減されます。

ただし、相続が開始した際に遺言書の存在がすぐに確認されるかどうかは、遺言書の謄本や正本が適切に保管されているかに依存します。例えば、相続人が公正証書遺言の存在を知らなければ、相続手続が遅延することも考えられます。そのため、遺言書の謄本や正本を信頼できる人物、もしくは弁護士に預けておくことが有効です。

さらに、仮に公正証書遺言の謄本や正本を紛失した場合でも、公証役場で再発行が可能です。しかし、その手続には時間がかかるため、相続手続を迅速に進めるためには、謄本や正本を手元に置いておくことが望ましいでしょう。

弁護士に相談するメリット

遺言書の保管に関して不安がある場合や、最適な保管方法を決めかねている場合には、弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

1.法的アドバイスの提供

弁護士は、遺言書の作成や保管に関する法律的なアドバイスを提供します。遺言書が法律的に有効かどうか、適切に保管されているかを確認することができます。

2.遺言執行者としての役割

遺言書を弁護士に預けることで、その弁護士が遺言執行者として相続手続をスムーズに進めることが可能です。遺言執行者は、遺言の内容に基づいて遺産分割や財産の移転を行いますが、これを専門家に任せることで、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。

3.安全な保管

自筆証書遺言や公正証書遺言のいずれであっても、弁護士が保管を担当することで、紛失や改ざん、破棄のリスクを最小限に抑えることができます。弁護士は、専門的な知識と経験を活かし、遺言書が確実に保護されるよう管理します。

まとめ

遺言書は、遺産相続を円滑に進めるための重要な書類です。しかし、適切に保管されなければ、相続人がその存在を知らずに手続きを進めてしまい、遺言者の意思が反映されない可能性があります。自筆証書遺言の場合は、法務局の保管制度を利用するか、信頼できる専門家に預けることが推奨されます。公正証書遺言であっても、遺言の謄本や正本を確実に保管し、必要に応じて迅速に提出できるように準備しておくことが重要です。

弁護士に相談することで、遺言書の保管方法や相続手続に関するアドバイスを得ることができ、遺言書が適切に保管されるだけでなく、相続が円滑に進むことが期待できます。遺言書の保管に関して不安がある場合は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。


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