遺留分侵害額請求権の時効に関する留意点

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はじめに

相続において、被相続人が特定の相続人や第三者に大部分の財産を贈与した場合、遺留分を持つ相続人が不利益を被ることがあります。この不公平を防ぐために設けられているのが「遺留分」です。しかし、遺留分に関する権利を行使するには、特定の期間内に手続きを行わなければならないため、遺留分侵害額請求権の時効に注意が必要です。本稿では、遺留分侵害額請求権の概要や、期間制限について解説します。

遺留分とは

遺留分とは、法律で定められた相続人が受け取るべき最低限の相続分を意味します。これは、被相続人が遺言によって相続分を自由に決定することができる一方で、法定相続人に対して一定の財産を確保するための制度です。遺留分権利者としては、被相続人の配偶者、子供、直系尊属(親や祖父母)などが含まれますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分の割合は、被相続人が遺した財産の2分の1または3分の1とされており、配偶者や子供が相続人の場合、全体の遺産の2分の1が遺留分として認められます。この制度により、被相続人の意志が遺産の配分に大きく影響を与える場合でも、遺留分権利者が不当に少ない相続分で困ることがないように保護されています。

遺留分侵害額請求権とは

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続で自分の遺留分を侵害された場合に、その不足分を請求する権利です。被相続人が生前に特定の相続人や第三者に多額の贈与を行ったり、遺言によって一部の相続人に過度に有利な内容を残した場合、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があります。その際、遺留分権利者は、遺産のうち自己に相続されるべき額の不足分を、他の相続人や受贈者に対して金銭的に請求することができます。

遺留分侵害額請求権は、法的な請求であり、権利者は請求の際に贈与や遺贈の状況を証明する必要があります。また、この請求権は相続財産の分割に関わる重要な権利であるため、適切な手続きと期間内での行使が求められます。

遺留分侵害額請求権の期間制限

遺留分侵害額請求権を行使するには、民法で定められた期間内に請求をしなければなりません。具体的には、遺留分権利者が相続の開始や、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ってから1年以内に請求を行う必要があります(民法第1048条前段)。また、相続の開始から10年が経過すると、たとえその後に遺留分を侵害している事実を知ったとしても、請求はできなくなります(同条後段)。

この期間制限を超えてしまうと、遺留分侵害額請求権は時効により消滅し、相続財産の分配に異議を唱えることができなくなります。権利を行使するためには、遺産の内容や贈与の履歴を早期に確認し、迅速に対応することが重要です。

遺留分侵害額請求権を行使する場合の留意点

遺留分侵害額請求権を行使する方法は、請求意思を相手方に明確に示すことです。民法には、請求方法についての具体的な規定はありませんが、実務上では、口頭よりも内容証明郵便を用いた請求が一般的です。なぜなら、口頭での請求では「言った・言わない」のトラブルが発生する恐れがあるため、書面で記録を残すことが推奨されます。

内容証明郵便での請求では、請求が行われた事実とその日時が確定されるため、後のトラブルを防ぐことが可能です。請求が確実に行われたことを証明できるため非常に有効な手段です。

弁護士に相談するメリット

遺留分侵害額請求権を正確に行使するためには、法的な知識と専門的な手続きが求められます。弁護士に相談することで、請求に必要な手続きを迅速に行うだけでなく、適切な証拠の収集や請求の内容を明確にすることができます。また、相手方との交渉や法的手続きのサポートも含め、スムーズな解決が期待できます。

特に、時効に関する問題は非常に複雑で、適切なタイミングでの対応が重要です。時効の進行を正確に把握し、請求の機会を逃さないためにも、早期の段階で弁護士に相談することをお勧めします。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、相続や遺留分問題に関する豊富な経験と実績をもとに、最適なアドバイスを提供しています。

まとめ

遺留分侵害額請求権の行使には、相続開始や侵害事実を知ってからの期間制限があるため、迅速かつ適切な対応が必要です。請求の遅れや不正確な手続きは、遺留分権利者の権利を損なうことになります。遺留分に関する権利を守るためにも、弁護士の専門的なサポートを受け、適切な手続きとタイミングで対応することが重要です。


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