相続における銀行からの借入債務の扱い

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はじめに

相続に関する手続は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれるため、相続人にとって大きな影響を与えます。特に、被相続人(亡くなった方)が銀行からの借入債務を残していた場合、どのように対応すべきか悩まれることが多いです。本稿では、個人事業を営んでいた父親が銀行借入債務を残したまま他界したケースをもとに、相続人がどのように債務を引き継ぐのか、また債務を特定の相続人が引き受ける方法について解説します。

Q&A

Q1.父が銀行からの借入債務を残して他界しました。私は父の事業を引き継ぎたいのですが、借入債務はどのように扱えばよいでしょうか?

A1.相続では、プラスの財産とマイナスの財産の両方が承継されます。借入債務のような可分債務は、法定相続分に応じて相続人全員に自動的に分割承継されるため、遺産分割を行わなくても各相続人がその分を負担することになります。したがって、父の事業を引き継ぐとしても、借入債務を全て引き継ぐことにはならず、他の兄弟姉妹も相続分に応じて債務を負うことになるのが原則です。

Q2.兄弟姉妹には債務を負わせたくないのですが、方法はありますか?

A2.債務を一人の相続人に引き受けさせる場合、まず相続人全員がその債務を承継した上で、その後に債権者(銀行)の同意を得て、債務を一本化することが必要です。銀行が同意しない限り、他の兄弟姉妹も引き続き債務者として扱われることになるため、まずは銀行と交渉を行うことが重要です。

Q3.債権者が同意しなかった場合はどうなりますか?

A3.債権者の同意が得られなければ、債務者である相続人全員が引き続き債務を負うことになります。この場合、債務を負いたくない相続人は相続放棄を検討することも必要です。相続放棄を行うことで、最初から相続人でなかったものとみなされ、債務を免れることができます。

解説

相続において、借入債務などの可分債務は「法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する」とされています(最判昭和34年6月19日民集13巻6号757頁)。これは、被相続人が負っていた借入債務を、遺産分割を経ることなく、相続人全員が分割して承継するという意味です。

具体例として、被相続人が3000万円の借入債務を残して他界した場合、相続人が3人であれば、各相続人は1000万円ずつを自動的に承継することになります。この承継は、遺産分割協議とは別のものですので、事業を引き継ぎたい相続人が全額を引き受けるには、他の相続人からその債務を引き受けた上で、銀行の同意を得る必要があります。

債務の一本化について

債務の一本化は、相続人全員がいったん債務を承継した後に、特定の相続人が全額を引き受けることで実現します。しかし、これは債権者(銀行)にとってもリスクのある変更となるため、銀行が同意するかどうかはケースバイケースです。同意を得られない場合は、相続放棄を検討するのも選択肢の一つです。

相続放棄の検討

債務が大きく、債権者の同意を得られない場合には、相続放棄を行うことも一つの手段です。相続放棄を行うことで、その相続人は最初から相続人ではなかったものとみなされ、債務の負担から免れることができます。ただし、相続放棄は相続開始を知った時から3ヶ月以内に行わなければならないため、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士に相談するメリット

  1. 法律知識を基にしたアドバイスが受けられる
    債務承継の方法や債権者との交渉方法など、法律的に適切なアドバイスを受けられます。
  2. 複雑な手続を代理で行える
    相続放棄や債務の一本化に必要な手続を、弁護士が代理で行うことができるため、スムーズな解決が可能です。
  3. リスク管理ができる
    相続放棄や借入金の引き受けにおいて、どのようなリスクがあるかを把握し、そのリスクを回避する方法を提案してくれます。

まとめ

被相続人が残した借入債務の扱いは、相続人にとって大きな負担となる場合があります。債務を一人の相続人が引き受けたい場合には、まず相続人全員で債務を承継した上で、債権者の同意を得る必要があります。弁護士に相談することで、スムーズかつ適切に問題を解決することが可能ですので、相続手続に不安がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。


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