非嫡出子の相続権に関する法律改正

Home » コラム » 非嫡出子の相続権に関する法律改正

はじめに

相続において、かつては「婚姻関係にない両親から生まれた子(非嫡出子)」と「婚姻関係にある両親から生まれた子(嫡出子)」とで、相続分に差があったことをご存じでしょうか。以前は非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分の2分の1とされており、社会問題ともなっていました。

しかし、最高裁判所の違憲判決を受けて、民法が改正され、現在では非嫡出子の相続分も嫡出子と同等と認められています。本記事では、この法律改正の経緯と内容、そして実務上のポイントを解説します。「非嫡出子にどのような相続権があるのか」を整理するためのご参考となれば幸いです。

Q&A

Q1. 非嫡出子とはどのような子どもを指しますか?

非嫡出子とは、法律上有効な婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。俗に「婚外子」とも呼ばれます。一方で、正式に婚姻している夫婦から生まれた子は「嫡出子」とされます。

Q2. 非嫡出子の相続分は現在どうなっていますか?

2013年の法改正以来、嫡出子と同等の相続分が与えられています。かつては嫡出子の1/2に制限されていましたが、最高裁で違憲と判断され、民法改正によって解消されました。

Q3. 非嫡出子が相続人となるためには、父親から認知される必要がありますか?

はい、父子関係を法的に確立するには「認知」が必要です。父親が生前に任意で認知する場合もあれば、裁判所で認知を求める場合(強制認知)もあります。認知されれば、父親の相続において嫡出子と同じ相続分を主張できます。

Q4. すでに発生した相続でも、過去にさかのぼって非嫡出子の相続分が修正されるのでしょうか?

非嫡出子の相続分が修正された改正法の適用は、平成13年7月1日から同25年9月4日までに相続が開始した事案について、①平成25年9月5日以降に遺産の分割等がされる場合は適用される一方、②平成25年9月4日以前に遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係には影響しない、と整理されます。ただし、個別の案件で協議がまとまる場合や、解決金として調整するケースはあり得ますので、状況に応じて専門家と相談する必要があります。

    解説

    法改正の経緯

    1. 旧民法の規定
      かつての民法では、非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2と定められていました。これは「婚姻関係を重視する」という立法趣旨が背景にありましたが、一方で子ども本人には責任がないのに不平等ではないかという批判が強まっていました。
    2. 最高裁の違憲判決(2013年)
      2013年9月に最高裁判所は、非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とする規定が憲法14条(法の下の平等)に違反すると判断。その後、民法改正が行われ、非嫡出子も嫡出子と同等の相続分を有することになりました。
    3. 改正民法の施行
      改正法は2013年12月5日に施行され、それ以降に開始した相続については、非嫡出子も嫡出子と同じ権利が認められています。

    実務への影響

    • 認知の重要性
      非嫡出子が父親(被相続人)の相続に参加するためには、まず法的に親子関係があることを証明しなければなりません。生前の任意認知があればスムーズですが、亡くなる直前や死後に認知を求める裁判が起きることもあります。
    • 戸籍調査の複雑化
      非嫡出子がいるかどうかの判断は、被相続人の戸籍を出生から死亡までさかのぼって調べる必要があります。転籍や改姓などが重なると複数の役所に請求を出すことになるため、手間がかかります。
    • 相続人間の調整が必要
      非嫡出子が突然現れた場合、他の相続人との間で合意が難しくなることがあります。遺産分割協議が難航したら、調停や審判に持ち込まれることも珍しくありません。

    過去の相続への影響

    非嫡出子の相続分が修正された改正法の適用は、平成13年7月1日から同25年9月4日までに相続が開始した事案について、①平成25年9月5日以降に遺産の分割等がされる場合は適用される一方、②平成25年9月4日以前に遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係には影響しない、と整理されます。

    上記のとおり、遺産分割協議がまだ未了である場合や、相続人同士の合意が得られれば、新基準での分割を行うことも可能です。

    弁護士に相談するメリット

    1. 認知手続き・裁判対応
      非嫡出子が認知を求める場合や、逆に他の相続人が「その子は本当に実子なのか」と争う場合、弁護士は戸籍の精査やDNA鑑定の準備、裁判手続きの進行などをサポートできます。
    2. 相続人間の調整・遺産分割協議
      非嫡出子が相続人として加わると、他の相続人との間で意見対立が生じやすいです。弁護士は法律面から妥当な分割案を提示し、必要に応じて調停・審判の代理人も務めることができます。
    3. 過去の相続の再検討
      遺産分割が終わっているように見えても、非嫡出子の存在が後から判明するケースもあります。弁護士の関与で、和解や追加分配など柔軟な解決策を検討可能です。
    4. 相続税申告や税務リスクの軽減
      遺産分割協議のやり直しや新たな相続人の追加で、相続税の申告内容に修正が必要になる場合があります。弁護士と税理士が連携してスムーズに対応すれば、追加で課される税金やペナルティのリスクを低減できます。

    まとめ

    非嫡出子の相続分を嫡出子と同等に認める法律改正は、社会的にも大きな意味を持ちました。「生まれの違いによって子どもに差別をしてはならない」という考え方が法的にも明確化されたのです。

    • 2013年の最高裁判決とその後の民法改正により、非嫡出子の相続分は嫡出子と同等
    • 非嫡出子が相続に参加するには、認知(または強制認知)が必要

    もし「非嫡出子として相続を主張したい」「亡くなった親が認知してくれなかった」といった場合や、逆に「突如、非嫡出子を名乗る人が現れた」というケースに直面したら、まずは一度弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談ください。法律の視点から的確にサポートいたします。


    リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル

    各相続問題について、動画でも分かりやすく解説しています。文字情報だけではイメージしにくい方も、映像と図解で理解が深まりますので、ぜひご覧ください。


    長瀬総合のメールマガジン

    当事務所では、セミナーのご案内や事務所からのお知らせなどを配信するメールマガジンを運営しています。登録は無料で、配信停止もいつでも可能です。


    初回無料|お問い合わせはお気軽に


    相続問題のその他のコラムはこちら

    keyboard_arrow_up

    0298756812 LINEで予約 問い合わせ