【相続・遺産分割】家庭裁判所の関与が必要なケース

はじめに

相続の手続きでは、遺産分割協議などを相続人同士だけで完了できるケースが大半です。しかし、利害対立が深刻であったり、相続人の一部が未成年や行方不明であったり、あるいはそもそも話し合いが成り立たない場合には、家庭裁判所が関与して解決を図る必要があります。

家庭裁判所には、相続に関して調停や審判、不在者財産管理人の選任など、さまざまな制度が用意されています。本記事では、相続手続において家庭裁判所の助けが必要になる典型的なケースを整理し、利用される手続きの流れを解説します。相続人同士の話し合いで解決できない場合に備えて、ぜひ参考にしてください。

Q&A

Q1. 家庭裁判所を使うのはどんなときですか?

相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合や、相続人の一部が行方不明、未成年が絡む場合に家庭裁判所が関与します。具体的には、調停や審判、不在者財産管理人の選任、特別代理人の選任などが代表的手続きです。

Q2. 遺産分割調停とは何ですか?

遺産分割協議が当事者間だけではまとまらないときに、家庭裁判所の調停委員が間に入り、話し合いを進める制度です。あくまで合意形成を目指す場であり、全員が納得できれば調停成立となります。もし不成立なら審判へ進むことになります。

Q3. 未成年の相続人がいるとき、家庭裁判所はどう関与するのですか?

親権者との利益相反を防ぐために、未成年者のために特別代理人を選任する手続きが家庭裁判所にあります。特別代理人が、未成年者の代わりに遺産分割協議などに参加することで、公平な扱いを実現します。

Q4. 行方不明の相続人がいる場合はどうすればいい?

行方不明者が相続人だと、遺産分割協議が成立しません。そのような場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい、手続きを進める必要があります。さらに、行方不明の期間が長く「失踪宣告」の要件を満たす場合は、別途失踪宣告手続きも検討されます。

解説

遺産分割調停・審判

  1. 遺産分割調停
    • 調停委員が当事者それぞれの主張や証拠を聴き取り、合意点を探る
    • 個別に話を聞く「斡旋方式」や、全員を同席させて話すケースがある
    • 調停が成立すれば、調停調書が作成され、これは遺産分割協議書と同じ効力を持つ
  2. 遺産分割審判
    • 調停が不成立となった場合や、特別な理由で調停を経ずに審判になる場合
    • 裁判官が双方の主張・証拠をもとに強制的な判断を下す
    • 不服があれば即時抗告できるが、限られた範囲内での争いとなる

特別代理人の選任

  • 目的
    未成年者や成年被後見人などの立場を守るため、利害相反を避ける
  • 申立先
    未成年者や被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 手続き例
    父が亡くなり、母と未成年の子が相続人となった→母は子の代理人になれない(利益相反)→特別代理人を選任して協議に参加させる

不在者財産管理人の選任

  1. 行方不明の相続人がいる場合
    • 遺産分割協議に参加できないため協議が成立しない
    • 家庭裁判所に申立をし、不在者財産管理人を選任してもらう
  2. 管理人の役割
    • 行方不明者の財産を保護し、代理人として遺産分割協議などに参加
    • 家庭裁判所の許可を得て、遺産分割を成立させる場合も

失踪宣告

  • 要件
    • 普通失踪: 7年間消息不明
    • 特別失踪: 戦争や災害など生命危険が及んだ事実があるときは1年間
  • 効果
    裁判所が失踪宣告を下すと、失踪者は法的に死亡とみなされ、相続が開始される
  • 実務上の注意点
    失踪宣告後に戻ってきた場合や誤認が判明した場合、法的に複雑な問題が生じる

弁護士に相談するメリット

  1. 適切な手続き選択
    行方不明や未成年者、相続人の強い対立など、多様な状況に応じてどの家庭裁判所手続きを使うべきか、弁護士が正しく判断
  2. 書類作成・証拠収集のサポート
    調停申立書や審判移行時の書類、特別代理人選任申立書など、専門的な書式が多いため弁護士が代行
  3. 調停・審判での代理人
    弁護士が代理人として家庭裁判所で意見を述べ、あなたの立場を最大限に守る
  4. 総合的な相続アドバイス
    税務や不動産問題とも関連付けて検討し、最適な解決策を提示

まとめ

相続手続において、家庭裁判所の関与が必要なケースは以下のように整理できます。

  1. 遺産分割協議がまとまらない → 調停・審判
  2. 未成年者・被後見人との利害相反 → 特別代理人の選任
  3. 相続人が行方不明 → 不在者財産管理人の選任、失踪宣告

家庭裁判所の制度を活用することで、困難な状況でも法的に妥当な解決を得られる可能性が高まります。もっとも、これらの手続きは書類や手続きが複雑で、相続人間の感情的対立も絡むため、専門家である弁護士の支援を得るのがスムーズです。

もし相続人同士で話し合いが進まず行き詰まっている、未成年者や不在者がいるといった問題を抱えている場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。状況を詳しくお伺いし、適切な家庭裁判所手続きを提案しながら、円満な相続の実現をサポートいたします。

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