はじめに
相続は「大切な家族の財産を分ける」行為であり、本来は家族の絆を保ちつつ協力して進めたいものです。しかし、現実には「感情的な対立」や「不公平感」を感じることで家族間のトラブルに発展するケースが後を絶ちません。長年かけて築いてきた家族関係が相続争いで崩壊することも、決して珍しくありません。
本記事では、家族間トラブルを未然に防ぐための方法をいくつかの観点から解説します。生前からの対策や、相続が始まってからの話し合いの進め方、専門家の活用術など、円満な相続を実現するためのポイントをご紹介します。
Q&A
Q1. 「家族間トラブルを防ぐための方法」とはどんなことが挙げられますか?
代表的には、
- 生前に遺言書を作成しておく
- 定期的に家族会議を開き、財産状況を共有
- 特別受益や寄与分などの観点を事前に調整
- 弁護士を交えた公平な分割案の検討
などが挙げられます。
Q2. 生前に遺言書を書いておけば絶対にトラブルは起きない?
遺言書があれば法定相続分とは異なる分割も可能で、形式不備のおそれが少ない公正証書遺言なら後日の紛争リスクを軽減できます。ただし、遺留分が侵害される場合は遺留分侵害額請求の紛争が起こる可能性は残ります。
Q3. 親が元気なうちに財産情報を聞いておくのは失礼?
日本文化では「縁起でもない」という風潮がありますが、近年は「争続」を避けるために生前の家族会議を推奨するケースが増えています。むしろ、親の意思を尊重しながらオープンな話し合いをしておくほうが、相続人同士の猜疑心を減らす効果的な方法です。
Q4. 何かあったとき、弁護士に相談するタイミングは?
相続が始まる前(生前対策)でも、始まった直後でも構いません。問題が大きくなる前に弁護士へ相談することで、紛争の芽を早期に摘み、スムーズに解決できる可能性が高まります。
解説
生前からの対策
- 遺言書の作成
- 自筆証書遺言は形式不備に要注意だが、遺言書保管制度などを利用すれば紛失リスクを軽減
- 公正証書遺言なら形式不備のリスクがほぼなく、内容に対する信頼性も高い
- 財産目録の共有
- 家族会議やエンディングノートなどでどのくらい財産があるかをオープンにする
- 株式、投資信託、海外資産なども含め、リスト化
- 介護や事業承継の話し合い
- 特定の家族が介護を担う場合、その貢献をどのように評価するか前もって決めておく
- 事業があるなら事業承継計画を作成し、後継者や株式の処理を明確に
相続開始後の対策
- 相続人確定と財産調査
戸籍謄本収集や財産目録作成を迅速に行い、情報を共有 - 家族全員での話し合い
初動が大事。誰が話し合いを主導するかも重要(弁護士や信頼できる親族がファシリテーターとなると良い) - 特別受益や寄与分の確認
生前贈与や介護貢献があれば具体的金額を検討し、公平感を高める - 弁護士を交えた公平な分割案
第三者目線で法的見地を示すことで、感情的対立を解消しやすい
紛争事例と対処法
- 感情的対立(嫉妬や不公平感)
- 特定の相続人だけが生前贈与を受けた、または同居していた子が介護などで優遇されたと感じる
- 対処:特別受益や寄与分の制度を使い、金額や割合を客観的に試算。弁護士や調停委員を通じて合意を目指す
- 行方不明の相続人がいる
不在者財産管理人を選任し、管理人が協議や調停に参加 - 未成年や被後見人がいる
家庭裁判所で特別代理人を選任し、利害相反を回避 - 財産や借金が隠されている疑惑
弁護士が金融機関や債務状況を調査し、隠し財産をあぶり出す
家族間トラブル未然防止の要点
- 情報共有の徹底
財産内容を明確にし、誰が何をどれだけ受け取るのか明瞭化 - 専門家への早期相談
弁護士や税理士、司法書士を交え、法律と税務の両面からリスクを把握 - 柔軟な分割方法(代償分割、換価分割など)
全員が納得できるプランを提示し、固執しすぎない - 定期的な家族会議
親が元気なうちから意思確認し、改まった場を設けておく
弁護士に相談するメリット
- 第三者的視点での調整
家族間のしがらみや感情的な対立を、法律論を踏まえて客観的に調整 - 書類作成や交渉代理
戸籍収集や遺産分割協議書の作成、金融機関との手続きなどを包括的にサポート - 家庭裁判所での手続き対応
話し合いがまとまらず調停・審判に進んだときも、弁護士が代理人として迅速に対応 - 将来の紛争予防
特別受益や寄与分など、法的に認められる考え方を事前に伝え、納得感を高める
まとめ
家族間トラブルを防ぐには、生前からの対策や相続開始後の適切な情報共有・専門家活用が欠かせません。特に、
- 遺言書の作成や家族会議による意見交換
- 弁護士や税理士などの専門家を活用して、公平な評価や法律知識を取り入れる
- 特別受益や寄与分を考慮した分割で納得度を上げる
- 家庭裁判所の調停を視野に入れ、早めに解決策を探る
この4つが大きなポイントとなります。もし家族間で相続に関して不安や対立がある場合、まずは弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。経験豊富な専門家があなたの家族に合った解決策を提案いたします。
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