よくあるトラブルとその解決策

はじめに

遺言書で「特定の相続人に多くの財産を残す」と書かれていたり、生前贈与で一部の相続人だけが大きな利益を得ていた場合、遺留分侵害額請求の問題が起こりやすくなります。しかし、実際に請求を行おうとすると、財産評価の対立や時効の問題、感情的な家族トラブルなど、さまざまな障害が発生しがちです。

本記事では、遺留分侵害額請求にまつわるよくあるトラブルをいくつか取り上げ、その解決策を解説します。請求する側もされる側も、問題をこじらせずに進めるためのポイントをぜひつかんでください。

Q&A

Q1. どんなトラブルが多いのでしょう?

代表的なものとしては、

  1. 不動産の評価額をめぐる争い
  2. 生前贈与(特別受益)の金額が不透明
  3. 時効(1年)の間に交渉がまとまらない
  4. 相手方(受遺者・受贈者)との感情的衝突
    などが挙げられます。

Q2. 不動産の評価で揉めたらどうすれば?

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼して公正な金額を算出するのが一般的です。路線価や固定資産税評価額だけでは意見が分かれることがあるため、鑑定が重要な場合もあります。調停や裁判では、裁判所が鑑定人を選任するケースもあります。

Q3. 特別受益の金額がわからない、証拠もないときは?

口頭で「○○万円もらった」とか「実際は貸付だった」といった主張が錯綜することはよくあります。通帳記録、契約書、領収書などを探すか、弁護士のサポートを得て可能な限り証拠を集めることが大切です。証拠がないと交渉や裁判で不利になる場合があります。

Q4. 相手が話し合いを拒否して取り合ってくれない場合はどうする?

内容証明郵便で請求意思を明確に示し、応じない場合は家庭裁判所の調停民事訴訟を利用するのが一般的です。放置すると時効が来るリスクがあるため、早めに法的手段をとることを考えましょう。

解説

トラブル1:不動産の評価額が対立

【状況】

  • 被相続人の主な財産が不動産で、現金が少ない
  • 遺言書で特定の相続人がその不動産を取得
  • 他の相続人が「不動産評価額を高く見積もって、遺留分を計算するべきだ」と主張し対立

【解決策】

  1. 不動産鑑定士に正式な評価を依頼
  2. 路線価や固定資産税評価額だけでなく、実勢価格との比較検討
  3. 調停委員や弁護士が間に入り、公平に査定結果を扱う

【ポイント】

不動産は時価評価が必ずしも明確でないため、第三者鑑定が有効

トラブル2:生前贈与の事実が曖昧

【状況】

  • 長男が多額の援助(学費・事業資金など)を受けていたと長女が主張
  • 長男は「貸与だった」「贈与じゃない」と言い張り、書面もない

【解決策】

  1. 銀行記録やメールなどを探す
    送金履歴、受領書類などが特別受益の証拠となる
  2. 弁護士が聞き取り調査
    親戚や関係者の証言で補強
  3. 調停での話し合い
    裁判所の調停委員が仲介し、一部贈与として金額を折半する妥協点を提案する場合も

【ポイント】

生前贈与(特別受益)は証拠が重要。ない場合は主張が難航

トラブル3:期限までに交渉がまとまらず時効寸前

【状況】

  • 遺留分侵害を知ったのが遅く、すでに死亡から10カ月以上経過
  • 任意交渉に時間がかかり、1年の時効が迫る

【解決策】

  1. 内容証明郵便で請求
  2. 家庭裁判所の調停を申し立て
  3. 並行して書類準備・財産確認

【ポイント】

1年の短期消滅時効は厳しい。迅速な法的手段をとらないと権利を失う

トラブル4:相手方が一切協議に応じない

【状況】

  • 遺留分を侵害している受遺者や受贈者が話し合いを拒絶
  • 電話も出ない、内容証明郵便にも返事なし

【解決策】

  1. 調停または訴訟を提起
    • 家庭裁判所の調停申立によって呼び出しが行われる
    • 調停不成立の場合には訴訟へ移行する
  2. 代理人(弁護士)同士の交渉
    • 相手方が弁護士を立てれば、プロ同士の話し合いが成立するかも

【ポイント】

協議拒否=請求を無視できるわけではない。裁判所手続が最終手段

弁護士に相談するメリット

  1. トラブルの予防
    曖昧な評価や特別受益の立証不足を事前に整え、交渉段階で優位に立つ
  2. 迅速な時効対策
    内容証明や調停申立で確実に時効を中断し、請求権を守る
  3. 交渉・調停・訴訟の一貫対応
    任意交渉がダメでも、そのまま調停・訴訟へスライドして対応
  4. 適正額の回収
    法的根拠に基づいた請求額で、和解や判決で適正な遺留分を確保する

まとめ

遺留分侵害額請求では、さまざまなトラブルが起こり得ますが、代表的なものとして、

  • 不動産評価の対立
  • 生前贈与(特別受益)の金額不明
  • 時効(1年)に間に合わない
  • 相手が交渉に応じない
    などがあります。それぞれに対して、以下のような解決策が考えられます。
  1. 客観的評価(鑑定士)を用いる
  2. 生前贈与の証拠を丁寧に収集
  3. 時効直前には内容証明郵便や調停申立で中断
  4. 協議拒否されたら家庭裁判所へ

早い段階で弁護士に相談すれば、これらのトラブルを最小化し、スムーズに相続問題を解決できる可能性が高まります。お困りの際は、相続問題に精通した弁護士をぜひご活用ください。

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