はじめに
事業承継をスムーズに進めるためには、単に株式を引き継ぐだけでは不十分です。会社の経営権、役員構成、取引先との契約関係、ノウハウや知的財産など、多角的な視点で契約を整理し、明文化しておく必要があります。特に、会社契約や事業承継契約を活用することで、当事者間の権利義務を明確にし、後からの紛争を防止する効果が期待できます。
本記事では、会社契約と事業承継契約の重要性を取り上げ、事業承継で押さえるべき契約のポイントやメリットを解説します。会社規模を問わず、大切な事業の未来を守るためにぜひご一読ください。
Q&A
Q1. 会社契約とは何ですか?
会社の内部ルールや外部取引について、契約書で明文化したものを指します。定款だけでなく、株主間契約、経営者間契約、取引先との契約など、企業運営に必要な法律関係を整理した各種契約書が広義の「会社契約」と言えます。
Q2. 事業承継契約はどのような内容ですか?
後継者が経営権を引き継ぐ際、株式譲渡や役員交代、競業避止義務、ノウハウ移転などをまとめた契約を「事業承継契約」と呼ぶことがあります。法的には複数の契約要素(売買、贈与、業務委託など)が複合的に含まれる場合が多いです。
Q3. なぜ契約書が重要なのでしょう?
口頭の約束では後から解釈が違うなどトラブルが起こりやすいです。契約書で明確な条項を定めておけば、当事者間の認識差を最小化し、紛争や訴訟を未然に防ぎやすくなります。特に事業承継は利害関係が複雑なので、契約書による予防法務が不可欠です。
Q4. 弁護士に依頼すると何がメリットですか?
弁護士は、会社法・民法・労働法など多岐にわたる法律を踏まえ、漏れのない契約書を作成できます。トラブルリスクを洗い出し、具体的な条項で対策し、後継者や株主、従業員が安心して次のフェーズに進める契約を整備してくれる点がメリットです。
解説
会社契約で整備すべき項目
- 定款の見直し
- 事業目的、株式の譲渡制限、取締役会の有無などを現実の事業実態に合わせる
- 株主間契約
- 大株主同士で議決権行使や株式売買の条件、競業避止を定める
- 事業承継で後継者に株を集中させるための優先交渉権や売却価格のルール
- 取引先との基本契約
- 主要な取引先や仕入先との契約書を見直し、後継者交代に伴う影響を明確化
事業承継契約の主要ポイント
- 株式譲渡・贈与の条件
- 譲渡価格、支払い方法、代償金の有無など
- 相続税や贈与税の対策も考慮
- 経営権と役員構成
- 代表取締役を後継者に変更する時期、取締役辞任のタイミング、株主総会決議などの手順
- ノウハウ・知的財産の移転
- 商標権や特許権、秘密情報の保護をどう扱うか
- 競業避止義務を設定し、先代が退任後に競合となるリスクを防ぐ
- 従業員の継続雇用・待遇
- 後継者交代で労働条件を維持する契約を社員と結ぶかどうか
契約締結の流れ
- 事前相談・合意形成
- オーナー経営者と後継者(親族内 or 外部)で大筋の合意
- 弁護士や税理士が財務・法務面のリスクをチェック
- ドラフト作成
- 弁護士が事業承継契約や株主間契約の案文を起案
- 当事者間で修正交渉
- 契約締結・署名捺印
- 定款変更や役員変更が必要な場合は、株主総会決議・登記申請を行う
- 事業承継の実行
- 株式譲渡・譲渡対価の支払い、ノウハウ移転のスケジュールなどを順次実施
トラブル防止のための注意点
- 家族間の口約束を避ける
特に親族承継の場合、口頭合意だけでは後継者周りや兄弟の遺留分問題で紛争化する - 株式売買価格や支払い方法を明記
後継者に資金がない場合は分割払い、代償金など契約で明確化 - 経営者保証の解除・切り替え
銀行の保証人が前代表のままだとリスクが残るため、後継者との交渉が必要 - 秘密保持条項
自社のノウハウや顧客情報が外部に漏れないよう、退任者に対する秘密保持・競業避止を契約で定める
弁護士に相談するメリット
- 抜け漏れのない契約書作成
会社法や商法、税法などの専門知識をフル活用し、万全な内容に - 利害調整と説得力
オーナーと後継者、株主、従業員など多数の当事者を説得する際、法的根拠に基づき公平感を示せる - 紛争予防
曖昧な取り決めを排除し、将来の争点をあらかじめ契約に盛り込む - 専門家ネットワーク
税理士や社会保険労務士とも連携し、ワンストップで対応
まとめ
事業承継を円滑にするうえで、会社契約や事業承継契約を整備することは重要です。以下のポイントを意識しましょう。
- 定款や株主間契約など会社内部ルールを最新化し、経営権移行を明確に
- 事業承継契約で株式譲渡、競業避止、ノウハウ継承など具体的条件を定める
- 従業員・取引先への周知や、相続税対策も含めた総合的アプローチ
- 弁護士を活用し、法的リスクを未然に防止
オーナー経営者がスムーズにバトンを渡すためにも、弁護士法人長瀬総合法律事務所へお気軽にご相談ください。各専門家とも連携しながら、会社の未来を支える最適な契約スキームを構築いたします。
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