はじめに
事業承継は、後継者育成や株式移転、相続税・贈与税対策など多角的な課題を含みます。特に親族内承継では遺留分や相続人間の調整が必要であり、外部承継(M&Aなど)では契約や労働法務の面で細かい合意事項が発生。これらを法的視点から整理し、スムーズに進めるのが弁護士の役割です。
本記事では、弁護士を活用した事業承継の進め方を具体的に解説します。計画段階から実行フェーズまで、弁護士がどんな形でサポートできるかを知っていただき、トラブルのリスクを回避しましょう。
Q&A
Q1. 事業承継に弁護士が必要な理由は何ですか?
事業承継には、会社法、相続法、税法、労働法など多くの法律が絡みます。弁護士が全体を俯瞰して法的リスクを洗い出し、株式譲渡契約、遺留分対策、取締役変更登記などの手続きを一貫して支援することで、紛争やミスを未然に防げるからです。
Q2. 具体的にどのような業務を弁護士に依頼できますか?
- 事業承継計画の法的チェック
- 株式譲渡契約や事業承継契約の作成・交渉
- 取締役会や株主総会の手続きサポート
- 遺言書作成や遺留分対応
- M&A時のデューデリジェンス
などが挙げられます。
Q3. 弁護士を使うと費用が高くなりませんか?
確かに弁護士費用は発生しますが、トラブルで裁判になるリスクや、税務面の大きな損失を回避できるメリットを考えると、結果的にコストパフォーマンスが良い場合が多いです。事前に見積もりを取り、費用対効果を検討しましょう。
Q4. 事業承継を弁護士に相談するタイミングは?
できるだけ早い段階が望ましいです。後継者選定の時点から法律面を踏まえた株式移転スキームを考慮すると、計画全体がスムーズに進行します。相続直前や後継者交代直前に駆け込み相談するより、3~5年前から備えるのが理想です。
解説
弁護士が関与する事業承継のステップ
- 現状分析とリスク診断
- 会社の株式構成、経営権、借金や保証、従業員の雇用契約など法的観点で整理
- 承継方法の選択と計画立案
- 親族内承継か外部承継(M&A)か、株式を段階的に譲渡するか一括か、遺言書の必要性などを検討
- 契約書ドラフトと交渉
- 株主間契約、事業承継契約、取引先・金融機関との契約整理など
- 必要に応じて税理士と連携し、納税負担を試算
- 実行サポートとフォローアップ
- 株式譲渡や相続登記、取締役変更登記、従業員・取引先への周知
- 実行後も紛争や誤解が起きないよう継続的にアドバイス
親族内承継での弁護士活用
- 遺言書・遺留分対策
- 後継者に株式を集中させる際、他の相続人が遺留分侵害を主張しないよう、遺言書や代償金を計画
- 株式譲渡・贈与契約
- 税理士と協働で相続税・贈与税を軽減するスキームを構築
- 弁護士が契約書のリーガルチェック、違法・不備の排除
- 家族間の利害調整
- 兄弟姉妹の対立や、先代社長と後継者の意見相違を中立的立場で仲裁
M&A(親族外承継)の場合
- 事業売却・譲渡交渉
買い手との間で秘密保持契約、基本合意書、最終契約書など作成 - デューデリジェンス(DD)
法務DDで会社のリスク(契約違反、労務トラブルなど)を洗い出し、価格や契約条件に反映 - クロージング手続き
株式譲渡契約の締結、対価の受け渡し、代表者変更の登記、従業員の雇用契約引き継ぎ - トラブル対応
表明保証違反や競業避止義務の問題が出た際に弁護士が対処
従業員・取引先への配慮
- 従業員の雇用をどう維持するか
就業規則、役職の配置転換、労働条件などを法的視点で整理 - 取引先との契約変更
代表者変更に伴う再契約が必要か、支払い条件や保証人はどうするか - 金融機関への連絡
代表取締役の変更、連帯保証・担保設定の見直しを速やかに行う
弁護士に相談するメリット
- 複雑な契約整備のサポート
株式譲渡契約、遺言書、株主間契約、労働契約など多種多様な書類を専門知識で作成 - 親族間・株主間の感情的衝突を法的にコントロール
感情論に終始しないよう、中立的かつ論理的に合意形成 - 税理士やコンサルタントと連携した総合的提案
相続税や事業計画の面からもベストなプランを提供 - 紛争時の代理
事業承継後に発生したトラブル(表明保証違反、遺留分請求など)に迅速に対応
まとめ
事業承継を成功させるには、弁護士を中心に税理士やコンサルタントと協力し,以下のプロセスを踏むのが効果的です。
- 現状分析とリスク把握
株式や負債の洗い出し - 承継スキーム決定
親族内かM&Aか、株式譲渡か贈与か - 契約や登記の整備
株主間契約、事業承継契約、役員変更登記など - 従業員や取引先への周知
- 誤解や混乱を防ぎ、信用を維持
- アフターケア
万一の紛争に備えた見直し・調整
弁護士を活用することで、法的リスクの洗い出しや後継者交代の透明化を図り、経営のバトンタッチを円滑に進められます。ぜひ、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
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