1 遺留分権利者の確認
(1) 遺留分権利者の確認
遺留分権利者は,兄弟姉妹を除く法定相続人です(民法1028条)。言い換えれば,被相続人の配偶者,子,直系尊属が遺留分権利者となります。
また,胎児も生まれれば子としての遺留分が認められます(民法886条)。
なお,遺留分は相続人に与えられる権利であるため,相続欠格,相続廃除,相続放棄をした者は遺留分がありません。但し,相続欠格,相続廃除の場合,代襲者が相続人となり,その者が遺留分権利者となります。
(2) 遺留分の割合
遺留分の割合は,総体的遺留分(遺留分権利者が相続財産全体に対して有する割合)と個別的遺留分(遺留分権利者が2人以上いる場合に各遺留分権利者が相続財産に対して有する割合)の2つがあります。
総体的遺留分は,直系尊属のみが相続人である場合には相続財産の3分の1であり,その他の場合には2分の1となります。
個別的遺留分は,遺留分権利者が数人いる場合,総体的遺留分が法定相続分に従って配分されることになります。
例えば,配偶者と子3人が相続人の場合における個別的遺留分は,配偶者:1/2×1/2=1/4 ,子1名:1/2×1/2×1/3=1/12となります。
2 遺留分侵害額の算定
(1) 基礎となる被相続人の財産の算定
遺留分の算定のためには,前提として,基礎となる被相続人の財産を確定する必要があります。
基礎となる被相続人の財産の算定方法は以下のとおりです。
基礎財産=相続開始時の相続財産 + 贈与した財産の額 – 相続債務 |
(2) 遺留分侵害額の算定
次に,遺留分の侵害額の算定方法は以下のとおりです。
遺留分侵害額=遺留分額 – 純相続分額 遺留分額=基礎となる被相続人の財産 × 個別的遺留分 純相続分額=(相続開始時の相続財産 − 相続債務) × 法定相続分 |
3 遺留分減殺請求の行使
(1) 遺留分減殺対象
遺留分減殺請求の対象が複数ある場合には,減殺請求の順序・割合が問題となります。遺留分減殺請求の順序・割合は民法1033条以下で規定されています。
- 減殺対象が複数ある場合
遺留分減殺請求の対象が複数ある場合には,遺贈→贈与の順序で減殺されます(民法1033条)。 - 遺贈が複数ある場合
遺留分減殺請求の対象となる遺贈が複数ある場合,「その目的の価額の割合に応じて」減殺されます。もっとも,「遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う」とされます(民法1034条本文・但書)。 - 贈与が複数ある場合
贈与が複数ある場合には,「後の贈与から順次前の贈与に対して」減殺されます(民法1035条)。
(2) 遺留分減殺請求の行使
遺留分減殺請求が行使されると,受贈者は,現物及び減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければならないことになります(民法1036条)。
もっとも,受贈者は,「減殺を受けるべき限度において,贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる」(民法1041条1項)ため,実務上は価額弁償を選択されることが多いといえます。