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【相続事例】数十年前に離婚し連絡が取れなかった配偶者の父と交渉し、夫が全財産を相続できた事例
相談前の状況
本事例のご相談者は、長年連れ添った配偶者を病気で亡くされた方(以下、「Aさん」といいます)でした。Aさんご夫妻にはお子様がいらっしゃらなかったため、配偶者の相続人はAさんご自身に加えて、配偶者のご両親(母・父)が法定相続人となる可能性がありました。ところが、配偶者の父親(以下、「Xさん」といいます)は数十年前に配偶者の母親と離婚しており、それ以降、音信不通の状態が続いていました。配偶者にとっては実父ですが、長らく交流がなかったため、連絡先がわからないうえ、そもそもXさんがどこで暮らしているのか、生存しているのかも確信が持てない状況でした。
Aさんとしては、悲しみの中で配偶者を失ったばかりという精神的な辛さに加え、相続手続きの進め方がわからないという不安を抱えていました。配偶者の母親(以下、「Yさん」といいます)はAさんと面識があり、関係も良好なため「配偶者の財産はAさんが相続すればいい」と了解してくださっていましたが、それだけでは手続きが完結しません。法定相続人となり得るXさんの存在は無視できず、相続手続きにはXさんの同意や署名捺印が必要になります。
とはいえ、数十年も連絡を取っていないXさんにどうアプローチすればよいのか、Aさんとしては見当もつきません。仮に連絡が取れたとしても、Xさんが財産を取得したいという意思を表明してくれば、遺産分割協議がもつれる可能性がありました。さらには、相続財産の内容によっては面倒な手続きが伴うことも考えられるため、Aさんだけで問題を抱え込むには荷が重い状況でした。
実務的には、戸籍を取り寄せて相続人を確認し、さらに住民票や戸籍の附票などをたどって住所を探すことも考えられますが、それらの作業をAさん一人で進めるのは非常に困難です。また、見ず知らずの相手ではなくとも、長らく会っていない相手に対して、突然に法的な話を持ち掛けることに抵抗感を覚える方は少なくありません。
こうした中でAさんは、当事務所にご相談にいらっしゃいました。最終的には「代理人として、Xさんとの連絡や交渉を代わりに行ってもらえないか」というご要望をいただくことになったのです。
相談後の対応
当事務所では、まずAさんから詳しいお話を伺い、配偶者の戸籍関係書類を取り寄せて法定相続人が誰であるかを正式に確認しました。すでにAさんから聞き取りをしていたとおり、相続人はAさん(夫)とYさん(配偶者の母)、そしてXさん(配偶者の父)の3名であることが判明しました。
Yさんは、娘の遺産はAさんに継承してもらいたいというお気持ちを固めており、実際に「自分に相続分があったとしても、それはAさんにお譲りしたい」という意向を確認できました。書面上の手続きとしては、遺産分割協議書を作成し、Yさんの署名捺印をいただけば問題ありません。しかし、その協議書にはXさんの同意と署名捺印も必要となります。
そこで私たちは、まずXさんの所在を特定するため、戸籍の附票などの公的書類を取得し、情報を洗い出す作業に着手しました。Xさんが長期間にわたって転居を繰り返していなければ、ある程度の住所の履歴がわかる可能性があるためです。調査の結果、Xさんの住所が判明しました。
次のステップは、Xさんに直接アプローチをすることでした。しかし、ただ手紙を送るだけでは「怪しい」「詐欺かもしれない」と敬遠されるリスクがあります。とくに長らく会っていない子の配偶者の代理人を名乗る弁護士が突然連絡をとってくるとなると、Xさんも警戒心を抱きやすい状況です。そこで私たちは、まず挨拶状として弁護士名義で丁寧に手紙を送付し、要件を簡潔にお伝えすることで、可能なら直接お話しする機会を設けたい旨をお伝えしました。
幸いにもXさんにもご理解いただき、Aさんが遺産を取得することにご了承いただきました。
当事務所では、Yさんの意向やAさんの希望を踏まえ、Xさんにも納得いただけるように、遺産分割協議書を作成しました。最終的には、Xさんが「全財産をAさんが取得することに同意する」という形で署名捺印していただけることになり、相続人全員の合意がまとまりました。財産自体は、主に配偶者の名義であった預貯金と動産でしたが、それらについてもXさんを含めた法定相続人全員の署名捺印が入った書類をそろえることで、名義変更や払い戻しの手続きがスムーズに進みました。
通常であれば、長年疎遠であった父親が突如として登場し、「やはり自分も財産を一部取得したい」という主張をするケースも少なくありません。その場合は相続分についての折衝が必要になり、紛争が長引くことがあります。しかし、本事例では、Xさんがそもそも財産の取得を望まず、Aさんと円満に協議できたため、短期間で話がまとまりました。必要最低限のやり取りで書類の作成・回収・提出が完了し、相続手続きは早期に終了となりました。
このように、親族とはいえ長い間まったく連絡を取っていない相手と交渉しなければならない場面においては、専門家が代理人として間に入ることでスムーズな進行が期待できます。本事例でも、もしAさんが独力でXさんを探し出し、直接交渉していた場合、感情的な摩擦が起きたり、必要書類のやり取りに不備が生じたりして、手続きが長引く可能性が高かったと考えられます。今回、当事務所で代理人として丁寧にアプローチを行った結果、比較的早期の解決を実現することができました。
担当弁護士からのコメント
本事例では、相続人であるXさんが「自分には相続する意思がない」という姿勢を示してくださったため、交渉そのものは比較的円滑に進みました。
しかし、もしXさんが財産を受け取りたいと考えていた場合や、連絡自体に難航した場合、解決にはもっと時間と労力がかかった可能性があります。相続問題では、法定相続人が誰なのかを確定させ、全員の合意を得なければならないのが大原則です。たとえ長らく疎遠であっても、離婚して親子関係が希薄になっていても、法律上は相続人としての地位は保持されます。
したがって、「どうせ連絡も取れないし、無視して手続きを進めてしまいたい」という安易な行動はおすすめできません。後になって相続人の存在が判明し、遺産分割協議をやり直さなければならない事態や、追加でトラブルが発生してしまうケースが少なくないからです。現実問題としては、「自分の子ども時代に別れた親の居場所がわからない」「まったく音信不通である」という場面は珍しくありません。そのような場合でも、戸籍をたどることで相続人を確認し、きちんとした手続きに進むことが重要になります。
この点、弁護士が代理人として動くことで、依頼者のご負担は大きく軽減されます。とくに「相続人がどこに住んでいるかわからない」「連絡しても相手が話を聞いてくれるか不安」という場合は、代理人が冷静かつ専門的な立場から事情を説明し、相手の疑問や不安にも丁寧に対応できます。結果的に、直接当事者同士で向き合うよりも、スムーズに話がまとまるケースが少なくありません。
また、本事例のように「相手方が相続財産を望んでいない」「財産の行方には特に興味がない」という場合でも、書面手続きは必須です。相続放棄という制度が使われることもありますし、相続分を譲渡する形をとる場合もあります。手間を惜しんで非公式な話し合いで済ませてしまうと、後から「実は取り決めた内容が法的に無効だった」となるリスクがあるので注意が必要です。
当事務所では、状況に応じて水平思考による多角的なアプローチを心がけています。たとえば、本件では最初の連絡方法を工夫し、突然に「相続放棄をしてほしい」と伝えるのではなく、「まずはお話をうかがい、事実関係を整理したい」という姿勢を示すことで、相手方の不安や疑念を和らげることを重視しました。
水平思考というのは、問題解決の選択肢を広げ、当事者が抱える心理的な負担や葛藤にも目を向ける手法です。
相続問題においては、法律的な視点だけでなく、親族間の感情的なわだかまりや、長年の関係のあり方といった背景事情にも配慮する必要があります。単に「書類上、あなたは相続放棄してください」で終わるのではなく、「なぜそうなるか」「どういう思いがあるのか」を共有することで、合意形成までのハードルが大きく下がることがあります。
本事例のように、疎遠だった相手とやり取りをしなければならない相続問題は、決して特別なケースとはいえません。多くの方が似たような悩みを抱え、そのまま手続きを先延ばしにしていることもあります。しかし、問題を放置すればするほど、相続対象となる財産が複雑化し、さらなるトラブルを呼び寄せることにもつながりかねません。できるだけ早い段階で専門家に相談し、適切な手続きを踏むことが、大切な財産と権利を守るうえで重要だといえます。
当事務所では、戸籍調査や相続人調査、疎遠になった親族との交渉、遺産分割協議書作成のサポートなど、相続に関するさまざまなお悩みに対応しております。「誰に相談すればいいのかわからない」「法律の手続きが難しい」という方も、まずはご相談ください。本事例のように、ご依頼いただければ代理人として交渉を行い、相手方への連絡手段の検討から書類作成まで一貫してサポートいたします。依頼者の方が抱える精神的負担を大きく軽減し、できるだけ早期の問題解決を目指してまいります。
今回のケースは、離婚した実父が協力的だったことで円満に解決できましたが、必ずしもすべての案件が同じように進むわけではありません。
とはいえ、法律と事実関係をしっかりと整理し、当事者全員の意向を丁寧にすり合わせることで、思わぬ早期解決に至る場合もあるのです。相続問題にお悩みの際は、ぜひ専門家へのご相談をご検討いただければと思います。
以上が、本事例の概要と当事務所で行ったサポートの流れです。相続人との連絡が滞っている状況でも、手順を踏んで対処すれば解決への道は十分に開けます。「音信不通の相続人がいて困っている」「遠方に住んでいる親族との交渉に不安がある」という方は、お気軽にご相談ください。私たちは依頼者の皆さまのお気持ちに寄り添い、最善の解決策をともに考え、実行してまいります。
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父の自筆証書遺言で“叔父への全財産遺贈”とされた相続問題に関し、約1000万円の遺留分を回収した解決事例
相談前の状況
Yさん(仮名・30代・男性)は、亡くなった父親の相続に直面していました。父は生前、交流のある兄妹(Yさんにとっては叔父・叔母にあたる人たち)をとても大切にしており、頻繁に手紙や電話で連絡を取っていたそうです。
やがて父が病気になり、叔父・叔母が中心となって父の世話を手伝っていたらしく、Yさんは仕事の合間を縫ってたまに見舞いに行く程度でした。父の入院費や生活費は主として父自身の年金や貯蓄から賄われていたようですが、叔父・叔母も何かとサポートしてくれていたとのことです。その点については、Yさんも感謝の気持ちを持っていました。
しかし、父が亡くなった後に開封された自筆証書遺言には、衝撃的な内容が記されていました。
「私の全財産は、○○(父の兄)および△△(父の妹)に遺贈する」
つまり、父の子どもであるYさんと、Yさんのきょうだい(合計2名の子どもたち)をまったく無視するかたちで、父の財産を兄妹に渡すというものだったのです。
Yさんにとって、父の遺産の内容はある程度想像がつくものでした。父名義の持ち家と敷地、さらに預貯金や株式などの金融資産がそこそこ残っているはずです。もっとも、具体的な額までは把握していませんでした。叔父や叔母が父の面倒を見てくれていたため、父の口座の管理も含めて父の兄妹が主導していた可能性が高い状況でした。
遺言書を発見した時点で、叔父からは
「お前のお父さんは自分が面倒を見てきたようなものだから、この遺言書で全部もらうのは当然だ。異議を唱えるなら裁判でも何でもやればいい」
というような強い口調の言葉をかけられ、Yさんは非常に落ち込みました。同時に、内心では「父は確かに叔父たちの助けを受けていたかもしれないが、私たち子どもに全く相続させないというのはおかしいのでは」と感じずにはいられませんでした。
そこでYさんは相続関係の情報を調べ、子どもには“遺留分”という最低限の取り分が法律上認められていることを知りました。しかし、遺言書がある場合でも本当に遺留分を確保できるのか、叔父・叔母と話し合いができるのか、争いが長引かないかなど、多くの不安がありました。やはり法律の専門家に相談するのが近道だと考え、当事務所に連絡をいただいたのです。
相談後の対応
(1)自筆証書遺言と遺留分の関係を整理
まず、当事務所の弁護士がYさんから事情を詳細に聞き取ったうえで、次のポイントを確認しました。
- 遺言書の形式と有効性
自筆証書遺言が法律上の要件(全文・日付・署名・押印など)を満たしていれば、有効性は原則として認められます。今回の遺言書は一見すると正式なものに見え、要件を欠くとは言い難いものでした。ただし、たとえ有効でも、法定相続人の遺留分を完全に無視できるわけではありません。 - 遺留分の権利者と割合
子ども(直系卑属)には、法定相続分の1/2が遺留分として保障されます。細かい計算は遺産の総額次第ですが、大枠としては父の遺産の1/2程度が2名の子どもたちの遺留分となるイメージになります。 - 叔父・叔母の対応と財産管理
叔父・叔母が父の財産管理を主導していた可能性があるため、不透明な出金や資産の動きがないかを確認しなければなりません。遺産総額が正しく把握できないと、遺留分を計算して請求することも難しくなります。
これらを踏まえ、当事務所では「遺留分侵害額請求」を正式に行うために、まずは遺産の範囲と評価を把握することを最初のステップと位置づけました。
(2)財産調査・財産評価の実施
Yさんは父が持っていた不動産や預貯金、株式などについて、あまり詳しい資料を持っていませんでした。そこで、以下の方法で財産調査と評価を行いました。
- 不動産の情報収集
父名義の土地と建物について登記事項証明書を取り寄せ、固定資産税評価額や近隣の取引事例を調べました。また、必要に応じて不動産会社に依頼して概算の査定額も出し、市場価格の目安を把握しました。 - 預貯金・株式の洗い出し
父が生前利用していた可能性のある金融機関の口座を調べ、戸籍謄本や相続手続に必要な書類を整えたうえで、取引履歴を確認しました。また、父が生前に投資関係の情報誌を購読していた記録があったため、株式や投資信託の有無もチェックしました。 - 叔父・叔母からの情報開示の請求
相手方(叔父・叔母)に対して、父の財産管理状況を開示するよう求めました。具体的には「父の入院中にかかった費用はどの口座から出されていたのか」「生命保険契約の受取人は誰か」など、書面による説明を要求しました。
こうした調査を進めるうちに、父の金融資産は思ったよりも多くはなく、預貯金や株式を合わせても数百万円程度でした。一方、不動産の評価は、固定資産税評価額よりも実勢価格が高めに出る可能性があり、総額としては一定の遺産になることが判明しました。
(3)叔父・叔母への遺留分侵害額請求と交渉
財産の概算額を把握したところで、当事務所は叔父・叔母に対し、書面で正式に「遺留分侵害額請求」を行いました。
もし相手方が遺留分請求を認めずに紛争が拗れるなら、法的手続き(調停・審判・訴訟)に進むことも考えられます。その場合、相手方も大きな負担を強いられることになります。
そこで当事務所の弁護士は、いくつかの「水平思考」に基づく戦略を立てました。従来の相続トラブルでは、「遺留分を確保したい子ども側」と「遺言書を盾に拒否する相手側」が真正面からぶつかり合いがちです。しかし、今回の事例では相手方(叔父・叔母)がすでに高齢であることや、将来にわたって不動産を管理していくのは負担となる可能性がある点などを丁寧に説明し、早期解決のメリットを強調しました。
- 現金化の選択肢
「もし相手方が『全財産をもらう』という意思を貫くなら、不動産を売却して現金化することも一つの方法。しかし、その際には当然Yさんたちの遺留分を考慮した分配が必要になる。長期の売却交渉や法的手続きに費やす労力を考えた場合、今の段階で落としどころを探るほうが得策ではないか。」
(4)約1000万円の遺留分を取得して解決
交渉の末、不動産については相手方(叔父・叔母)が取得する代わりに、Yさんたち子ども側には現金を支払うという案が浮上しました。具体的には、「不動産の評価額をもとに、Yさんたちの遺留分に見合った金額を算定し、相手方が一括で支払う」という内容です。
不動産の査定に関しては、路線価や不動産会社の評価額などを総合し、相手方・子ども側ともに納得できる数字を導き出しました。そして、双方の話し合いを重ねた結果、最終的に約1000万円をYさんが受け取る形で合意となりました。
通常、相続問題が調停・審判・訴訟に進むと、結論が出るまでに長期間を要するうえ、感情的なしこりが残りやすいというデメリットがあります。しかし、今回は交渉段階で落としどころを見つけ、協議により比較的早期に解決できたのが大きなポイントです。
担当弁護士からのコメント
今回の事例は、「自筆証書遺言で全財産を兄妹に遺贈する」と明記されていたため、依頼者のYさんは相談当初、「もう何ももらえないのではないか」と諦めてしまう面もありました。しかし、相続人(子ども)には“遺留分”という最低限の権利が法律で定められています。どんなに偏った遺言書であっても、遺留分まで否定できるわけではありません。さらに遺産の総額を正確に把握し、評価を行うことで、適正な遺留分侵害額を請求することが可能になります。
また、実家や土地など不動産が含まれる遺産は、評価方法によって価値に大きな幅が出る場合があります。路線価や固定資産税評価額だけでなく、市場での実勢価格や将来的な需要も加味する必要があるため、プロの知識や視点が欠かせません。今回のケースでも「不動産の評価」を行うことで、相手方(叔父・叔母)に対し説得力のある数字を提示できました。
さらに、当事務所が重視しているのは「水平思考」に基づいた問題解決です。遺留分トラブルでは、どうしても「遺言書vs.遺留分」の構図に固執してしまいがちですが、実際には相手方の心理状態や費用対効果、将来にわたる不動産管理の負担など、さまざまな視点からアプローチして交渉の糸口を探ることができます。
- 相手方にとっての不利益を具体化
不動産を所有しても維持管理費がかかることや、使い道がなければ売却先を探す手間が発生することなどを丁寧に伝える。 - 訴訟リスクの提示
使途不明金や財産管理の不透明な部分がある場合、法的手続きに移行した際に相手方が不利になるリスクを示唆する。 - 依頼者の感情面への配慮
依頼者が「やはり血のつながった親の遺産だから最低限は受け取る権利がある」と強く思う場合、その気持ちを尊重した交渉ゴールを設定する。
こうした柔軟な発想と交渉戦略を組み合わせた結果、短期間で約1000万円の遺留分を確保することができました。また、相手方にとっても「問題が長期化せず、不動産を法的にすっきりと引き継げた」という利点がありました。
相続問題は、親族間の関係が微妙に影響し合い、思いもよらない方向に複雑化することが多々あります。「遺留分はよく分からない」「自筆証書遺言が絶対的に有利だと聞いて諦めていた」という方でも、ぜひ一度専門家にご相談ください。法律的に保証された権利を諦める必要はありませんし、解決策の選択肢は想像以上に多いものです。
当事務所では、依頼者の方の想いや将来の生活設計を大切にしながら、法的側面と交渉戦略を組み合わせて最適な着地点を模索いたします。自筆証書遺言の真偽や有効性で悩んでいる方、遺留分を請求したいけど相手と対立したくない方など、どんな状態でも諦めずにまずはご相談ください。今回の解決事例が、同じようなお悩みを抱える皆様の参考になれば幸いです。
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公正証書遺言で全財産を遺贈された相続トラブルを、実家取得につなげた早期解決事例
事案を一部抽象化・修正しています
相談前の状況
Xさん(仮名・男性)の母が亡くなった後、母が残した公正証書遺言が提示されました。
公正証書遺言には、「すべての財産を長男(Xさんの兄であるAさん)に遺贈する」という内容が記載されていました。相続人は子2名で、XさんとAさんの2人です。しかし、遺言書の内容は「全財産をAさんに譲る」というものでした。
母は生前、Aさんに対しては「あなたには色々と面倒を見てもらったから、きちんとお礼がしたい」「公正証書遺言の方が安心だから作成しておく」と話していたそうです。一方でXさんは、「母は昔から兄に対して甘い面があったが、自分に相続分がまったくない内容の遺言を作成するとは想像していなかった」と憤りを隠せませんでした。
さらに問題だったのは、Xさんが母と同居し、長年にわたって実家を維持管理してきたという事実です。母の介護が必要になってからは、特にXさんの負担が大きくなりました。兄のAさんは結婚し別の場所で暮らしており、正月やお盆などに顔を出す程度だったそうです。Xさんとしては、
- 自分は母の介護を引き受けてきたのに、遺言書では何の配慮もない。
- 亡母が暮らしていた家は、生活の基盤であると同時に自分の思い出の詰まった場所。どうしても手放したくない。
- 今後もこの実家に住み続けたいし、できれば自分が取得したい。
という切実な思いがありました。しかし、公正証書遺言という形式で「全財産をAさんに遺贈する」と書かれている以上、法律上は遺言書の効力が優先されます。仮にXさんが無視して実家に住み続けようとしても、Aさんから「立ち退いてほしい」と請求される可能性があります。
そこでXさんは、「遺留分」を主張することを検討しました。遺留分とは、相続人に保証されている最低限の取り分のことを指し、仮に公正証書遺言であっても、他の相続人の遺留分を侵害する内容は無条件にそのまま有効になるとは限らないのです。
とはいえ、Xさんには法律の専門知識がなく、遺留分侵害額を具体的にどのように算定すればよいのかも分かりません。また、Aさんとの関係はもともとそれほど良好とはいえず、今回の遺言書の内容をめぐって一触即発の状態でした。Xさん自身も精神的な負担を感じており、「弁護士に相談したうえで、自分に何ができるかを知りたい」と考え、当法律事務所に相談に来られました。
3 相談後の対応
(1)方針決定:遺留分侵害額請求と財産全体の把握
当事務所の弁護士がXさんの話を詳しくうかがったところ、以下のような問題点が見えてきました。
- 公正証書遺言の効力
公正証書遺言は法律上の要件を満たして作成されているため、基本的に有効性が高い。ただし、遺留分をゼロにしてよいわけではなく、遺留分を侵害している場合は、その侵害部分について金銭請求(遺留分侵害額請求)が可能である。 - 遺産構成の把握
実家の土地と建物は母名義のまま。母には預貯金がそこまで多くはなかったが、使途不明金が存在する可能性も否定できない。Aさんが母の口座からどの程度のお金を引き出していたのかも要確認。 - Xさんの希望
とにかく「住み慣れた実家を手放したくない」という強い希望がある。将来にわたってもこの家に住み続けたいという意向がある。
これらの情報を踏まえ、弁護士はまず「遺留分侵害額請求」を正式に行う方針を固めました。その際に重要なのは、遺産全体の範囲と評価を正確に把握することです。特に、不動産の価値がどの程度なのかによっては、Xさんが遺留分を取得するだけでは実家を確保するのが難しい可能性があります。そこで、財産調査や不動産評価を専門家と連携して早急に実施することにしました。
(2)財産調査と評価:使途不明金の指摘
母の銀行口座の取引履歴を取り寄せたり、登記情報を精査したりして財産状況を把握したところ、いくつかの不審な入出金が確認されました。
- 高額な引き出し:母が亡くなる数年前から、ある時期にまとまった金額(数百万単位)が複数回引き出されていた。
- 振込先が不明:引き出したお金の振込先がはっきりしないケースがあり、兄のAさんがどのように管理していたのか不明。
Xさん自身も、「母は晩年、そこまで大きな買い物をしていた様子はない」と話していました。使途不明金が相続財産から差し引かれている可能性がある以上、これがそのまま遺留分の計算に大きく影響するおそれがありました。そのため、当事務所ではAさん側に対して「母の財産管理状況の開示」を強く求めました。
もし、母がAさんに対して生前贈与を行っていたのであれば、その一部は「特別受益」に該当する可能性があります。特別受益として考慮されると、Aさんが先に多く受け取った分を差し引いたうえで遺産総額を算定し、さらに遺留分を計算することになるため、結果的にはXさんの取り分が増えるかもしれません。こうした法律上のしくみを活用し、可能な限りXさんに有利な主張を展開するべく財産調査を行いました。
(3)不動産評価と交渉の展開
次に、不動産の評価については、固定資産税評価額や路線価だけでなく、実際の市場価格に近い査定書も参考にしました。一般的に、不動産の価値は一律の指標だけで判断するのではなく、実勢価格や地域の将来性、建物の状態など多角的に評価されます。
- Aさんの主張
交渉の初期段階でAさん(兄)は「公正証書遺言に書かれている以上、遺言どおりに従うべきだ。実家は私のものだ」と主張しました。しかし、弁護士が「遺留分を侵害している場合、その侵害額に相当する金銭を支払う義務がある」と説明し、さらに使途不明金の可能性や特別受益について言及すると、Aさん側も態度を軟化させ始めました。
ここで活きてきたのが「水平思考」に基づく交渉戦略です。通常であれば、
- Xさんが遺留分だけは確保し、実家の所有権はAさんのまま
- 金銭的に折り合いをつけて不動産を売却し、その売却代金を分配
といった解決策が考えられます。しかし、Xさんは「実家そのもの」を強く希望しており、Aさん側には「不動産を取得してもリフォーム費用や固定資産税などの負担がかかる」というデメリットもあります。そこで、当事務所の弁護士は、以下のような発想で交渉を進めました。
- 使途不明金の疑念を追及
もしこのまま協議が長引いて裁判になれば、Aさん側は使途不明金の説明責任を問われる可能性が高い。公正証書遺言の効力は強いが、遺留分問題や特別受益の問題で泥沼化することもあり得る。
このように、従来の相続トラブルであれば「遺留分に見合った金銭を受け取って終わり」というパターンが多いなか、Xさんの希望(実家を確保)とAさんの希望(母の遺言どおりに自分が多めに相続したいという気持ち)とを再度見直し、「Xさんに実家を渡す代わりに、多少多めの金銭をAさんに支払う」という方向へ交渉を展開していきました。
(4)早期の合意と実家取得の実現
こうした戦略のもと、弁護士は双方の落としどころを探り続けました。結果的に、
- Xさんが実家の土地と建物を単独で相続する
- Aさんに対しては金銭請求をしない
という形で合意がまとまりました。
また、Aさん側から「母が残した投資信託の一部を自分が引き継ぎたい」という希望が出たため、Xさんが応じる代わりに、使途不明金についてはこれ以上追及しないこととするという条件も加わりました。もちろん、完全にクリアになったわけではありませんが、Xさんとしては「裁判で争うよりも早期に実家を確保できる」というメリットを優先しました。
この結果、紛争は裁判には至らず、協議による早期解決となりました。Xさんは最終的に「遺留分を超過する形で実家を取得できた」と、大変満足されていました。
4 担当弁護士からのコメント
今回の事例では、公正証書遺言という強い証拠力を持つ遺言があり、なおかつ「全財産を長男に遺贈する」という偏った内容だったため、依頼者のXさんは初め、「本当に自分が相続できるのだろうか」という大きな不安を抱えていました。しかし、民法上は一定の相続人に対して「遺留分」が認められており、遺言の内容がどれだけ偏っていても遺留分を無視して良いわけではありません。今回のように、きちんと法的手段を踏めば、最低限の取り分以上の利益を確保できる可能性もあります。
特に印象的だったのは、水平思考が功を奏した点です。相続紛争では、「遺留分をいくら認めるか」という狭い争点に終始しがちですが、当事者の本当の希望は必ずしも金銭だけではありません。Xさんのように「実家に住み続けたい」という気持ちが強い場合には、通常の「遺留分計算」から一歩踏み出して、不動産の取得を最優先とする解決策を模索することが大切です。その上で、「兄(Aさん)にどれだけ金銭的なメリットを提供できれば、Aさんも納得するのか」を逆算し、交渉の着地点を見出しました。
もう一つ、今回の和解においては、使途不明金の存在や特別受益の可能性が交渉上の大きなカードになりました。仮に裁判となった場合、Aさん側も詳細に説明を求められますし、時間も費用もかさむリスクを負います。こうしたリスクを提示することで、相手方としても「長引く裁判を避け、少しでも早く解決する方が得策だ」と考えるようになるのです。結果として、「実家はXさんが単独取得し、その代わりにAさんには遺留分を超えた金銭を払う」という形で合意が成立しました。
紛争が拗れると、裁判に突入してしまい、感情的なしこりも大きくなりがちです。遺産分割調停や審判など、公的な手続きを通して解決する方法ももちろんありますが、依頼者が本当に望む「現実的な解決」を見据えたとき、早期の段階でお互いの利害を調整し、和解に持ち込むメリットは非常に大きいといえます。
当事務所では、遺留分侵害額請求が絡む複雑な相続問題においても、依頼者の方が望む着地点を最優先に考えます。そのためには、法的な論点だけでなく、相手の心理や将来的な費用対効果、相続人同士の長期的な関係など、あらゆる要素を多角的に検討する(水平思考)姿勢が欠かせません。今回も、そのアプローチが功を奏し、Xさんにとっては何よりも大切な実家を確保しつつ、Aさんとの裁判リスクも回避できました。
相続問題は、ともすれば家族の縁が切れてしまうほど感情的になりやすい分野です。もし「遺言書の内容が不公平だ」「遺留分をきちんと主張したい」「ただ争いたいわけではなく、実家や形見を守りたい」といったお悩みがあれば、ぜひお早めにご相談ください。法的な手段や手続だけでなく、当事者同士の希望に寄り添いながら、双方にメリットのある解決策を探すことを心がけております。今回の解決事例が、同じようなお悩みを抱える方の参考になれば幸いです。
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遺留分減殺請求により適切な解決金を得た事例
相談前の状況
ご相談者Aさんは、父親が亡くなった後、相続に関する問題に直面しました。Aさんには兄弟が2人おりました。父親は生前、特に長男に対して強い信頼を寄せており、父親が遺した自筆証書遺言には「全財産を長男に相続させる」と明記されていました。この遺言の発見により、Aさんともう1人の弟は一切の財産を相続できないことが明らかとなり、大きな不安と不満を抱くことになりました。
Aさんは父親との関係が悪かったわけではなく、遺言の内容には驚きを隠せませんでした。特に、兄弟の間で公平な分配を期待していたため、遺言の内容に大きな違和感を覚えたのです。遺産には、父親が所有していた不動産や預貯金などが含まれており、かなりの金額に上るものでした。
遺留分に関しての知識がなかったAさんは、「遺留分減殺請求」という手段があることを知り、何とか自分の正当な権利を主張したいと考え、当法律事務所に相談に来ました。
相談後の対応
相談を受けた当事務所では、Aさんの遺留分について詳しく説明を行いました。遺留分とは、相続人が最低限受け取る権利が保障される部分であり、兄弟姉妹以外の相続人には認められています。Aさんの場合、父親が残した遺産の一定割合について、Aさんと弟が遺留分として請求できる権利がありました。
私たちはまず、Aさんの立場に立ち、長男に対して遺留分減殺請求を行う方針を決定しました。初めに、長男に対して内容証明郵便を用いて遺留分減殺請求を正式に通知しました。しかし、遺留分の評価額を巡って争いが続きました。
そこで、家庭裁判所での調停手続きに移行しました。調停では、Aさんと長男との間で、遺産の分配方法について話し合いが行われました。長男としても、調停という法的手続きを経ることで、冷静に状況を再評価し始めたようでした。調停委員が間に入り、双方の主張を聞いた上で、現実的な解決策を模索しました。
最終的には、Aさんと弟が遺留分相当額に近い金額を解決金として受け取る形で、双方が納得する形の合意が成立しました。この合意により、Aさんは法的に認められた権利を守ることができ、かつ長男との関係も悪化させずに解決することができました。
担当弁護士からのコメント
今回の事例では、遺留分減殺請求という手続きを適切に活用することで、依頼者が自身の権利を守り、納得のいく解決を得ることができました。遺言が発見された場合、相続人はその内容に従わなければならないと考えがちですが、遺留分という制度によって最低限の保障を受けることができます。特に、相続に関しては感情的な対立が生じやすいため、冷静に法的な権利を行使することが重要です。
今回のケースでは、調停手続きが円滑に進み、早期に解決することができましたが、相続問題はケースによっては非常に複雑になることもあります。そのため、早めに専門家に相談することもご検討ください。
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多額の預貯金引き出しが発覚したものの、遺産分割協議によって円満に解決した事例
相談前の状況
依頼者は、3人の兄弟姉妹のうちの1人として、母親が亡くなったことをきっかけに相続手続きを進めることとなりました。相続人は依頼者を含めた3人の子供であり、特に遺言書は存在しなかったため、通常の遺産分割協議によって財産の分配を進める予定でした。
ところが、遺産の内容を確認していく中で、母親が生前に管理していた多額の預貯金が一部引き出されていることが判明しました。調査の結果、相続人のうちの1人が被相続人(母)の死亡前にこの預貯金を引き出していたことが確認されました。引き出された金額はかなりの額に上り、その扱いを巡って相続人間で大きな対立が生じました。
依頼者としては、この引き出された預貯金を相続財産に含めるべきだと主張していましたが、引き出した姉妹は「母親の生活費として使用していた」などと反論し、双方の意見が対立して話し合いが難航する状況でした。このままでは相続手続きが遅延し、家族間の関係も悪化することが懸念されたため、依頼者は当事務所に遺産分割協議の代理人として対応を依頼しました。
相談後の対応
当事務所では、まず依頼者からのヒアリングを基に、相続人全員の意見や感情を整理しました。そして、被相続人の生前に預貯金が引き出された経緯やその使用目的について、できる限り事実関係を確認するため、各相続人との協議を進めました。
特に問題となったのは、引き出された預貯金の扱いです。法的には、被相続人が生前に管理していた預貯金が相続財産に含まれるかどうかは、使用目的や引き出しの時期によって異なるため、慎重な対応が求められました。
我々は、依頼者の意向を尊重しつつ、他の相続人との関係が破綻しないように調整を図りました。最終的に、引き出された預貯金の一部を相続財産として扱い、その分を加味した遺産分割協議を進めることを提案しました。
具体的には、既に引き出されている金額が全額相続財産に戻ることは困難であるものの、現時点で存在する他の相続財産を依頼者が多めに取得するという内容で遺産分割協議を進めました。この提案は、全ての相続人が納得する形であり、相続争いを長期化させることなく、早期に解決することができました。
結果として、依頼者は他の相続人に対して無理な要求をすることなく、公平な分配を実現する形で問題を解決することができました。また、家族関係の破綻も避けることができ、相続手続きは無事に完了しました。
担当弁護士からのコメント
本件は、相続人の1人が被相続人の生前に多額の預貯金を引き出していたことが発端となり、相続人間で争いが生じた事例でした。このような状況では、感情的な対立が激化し、相続手続きが進まなくなることが少なくありません。しかし、今回のケースでは、相続人全員が冷静に話し合いに応じ、法的な観点だけでなく、家族としての関係も重視した解決策を取ることができました。
特に、相続問題は感情が絡みやすく、長引くと家族関係に大きな影響を及ぼすことがあります。遺産分割協議を進める際には、法律の範囲内で各相続人の立場や感情を考慮し、適切な調整を行うことが重要です。
今回のケースのように、弁護士が仲介することで、相続人間の関係を守りながら円満に解決できることがあります。相続に関する問題でお悩みの方は、ぜひ早めに専門家にご相談いただくこともご検討ください。
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成年後見人就任後に遺産分割協議を成立させた事例
相談前の状況
この事例の成年被後見人は、70代の女性Aさんでした。Aさんは認知症が進行し、日常生活に支障をきたすようになり、財産管理や契約の判断能力も失われていました。Aさんの夫が亡くなった後、相続が発生し、遺産分割を行う必要が生じましたが、Aさん自身はその遺産分割協議に参加することができませんでした。
Aさんには長男Bさんがいましたが、Bさんは母親の財産管理を代行できる立場にはなく、遺産分割協議が進められないまま時間が経過していました。Bさんはこの状況に不安を感じ、どうすれば適切に対応できるかを悩んでいました。
相談後の対応
Bさんは成年後見制度の利用を検討し、成年後見申立てを行なったところ、家庭裁判所の審判により、当事務所の弁護士がAさんの成年後見人に選任されました。
成年後見人に就任した後、最初に行ったのはAさんの財産状況の把握です。銀行口座、不動産、株式など、Aさん名義の財産を詳細に調査し、その内容を整理しました。これにより、遺産分割協議に必要な情報が整い、他の相続人と話し合いを始める準備が整いました。
遺産分割協議の場では、成年後見人としてAさんの権利と利益を守ることが最も重要な任務でした。Aさん自身は判断能力がないため、成年後見人としてAさんに代わって協議に参加し、他の相続人との話し合いを進めました。遺産分割にあたっては、各相続人の意向や家庭裁判所の指導も踏まえながら、全員が納得できる形での合意を目指しました。
遺産分割協議が無事に成立した後は、相続財産の整理を行いました。成年後見人として、Aさんにとって最も適切な財産の管理方法を考慮し、相続によって得た財産をAさんの今後の生活費や介護費用に充てるための計画を立てました。
担当弁護士からのコメント
この事例は、成年後見制度の重要性がよくわかるケースでした。成年被後見人が認知症などで判断能力を失った場合、財産管理や契約行為が難しくなり、相続手続きも円滑に進まないことがあります。成年後見人が選任されることで、被後見人に代わって法的手続きを進め、適切な財産管理が行われるようになります。
遺産分割協議においても、成年後見人は被後見人の権利と利益を最大限に守ることが求められます。今回の事例では、Aさんの財産状況を正確に把握し、他の相続人との調整を慎重に行うことで、スムーズな遺産分割を実現することができました。また、相続手続き後もAさんが安心して生活できるよう、財産管理のプランニングを行ったことも重要なポイントでした。
成年後見制度を利用することで、被後見人の財産や権利が守られるとともに、家族にとっても安心できるサポートが提供されます。もし同様の問題を抱えている方がいれば、ぜひご相談ください。適切な手続きとサポートによって、最善の解決策を一緒に見つけていきたいと思います。
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遺産分割調停により希望する不動産を取得したケース
相談前の状況
相談者は、母親が亡くなったことにより発生した相続問題を抱えていました。母親の財産には、多数の不動産が含まれており、それらをどのように分割するかが主な問題でした。相続人は、相談者を含む2名の子供と、代襲相続にあたる2名の孫でした。特に、相談者はある特定の不動産を取得したいと強く希望していましたが、他の相続人との間で意見が対立しており、話し合いによる解決が難しい状況にありました。
相続財産の中には、住宅用地や農地、賃貸物件など様々な種類の不動産があり、それぞれの価値や将来の利用目的が異なるため、誰がどの不動産を取得するかについての調整が難航しました。また、不動産の評価額にも相続人間で意見の相違があり、相続分の公平な分配がさらに複雑な問題となっていました。
相談者は、特定の土地を取得することを希望していましたが、他の相続人の中にはその不動産を売却し、現金での分配を望む者もおり、相続人間での交渉が行き詰まっている状況でした。このままでは遺産分割がまとまらず、相続問題が長引く可能性が高いと感じた相談者は、専門家の助けを借りることを決意し、当事務所に相談に来られました。
相談後の対応
相談を受けた当事務所では、まず遺産の全体像を正確に把握するために、相続財産の調査を行いました。特に不動産に関しては、評価額の再確認や、利用価値、将来的な収益性なども考慮し、相続人全員が納得できるような分割案の作成に注力しました。
次に、相続人同士での話し合いが難航していることから、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることを提案しました。調停では、第三者である調停委員のもと、相続人全員が公平に話し合う場が提供されます。これにより、感情的な対立を避け、冷静かつ合理的な解決策を模索することが可能となります。
調停の過程では、相談者が強く希望していた土地について、他の相続人に対してその取得を希望する理由を丁寧に説明しました。また、他の不動産に関しても、公平な分配が行われるように調整し、代償金の支払いなどの提案も行いました。
他の相続人も、最初は自宅の売却による現金分割を主張していましたが、調停委員の仲介もあり、最終的には相談者が希望する不動産を取得し、他の不動産を含めた分配案で合意に達することができました。相談者は、代償金を支払うことで他の相続人との調整を図り、自身が希望していた不動産を取得することができました。この結果、調停が成立し、相続問題が円満に解決しました。
担当弁護士からのコメント
今回のケースでは、多数の不動産が遺産に含まれていたため、それぞれの価値や利用方法に基づいた適切な分割案を策定することが非常に重要でした。また、相続人間で意見の相違がありましたが、遺産分割調停を活用することで、公平かつ冷静に話し合いが進められました。
特に、相談者の方が強く希望されていた土地を取得することができたことは、感情的な面でも大きな成果でした。遺産分割においては、単に金銭的な価値だけでなく、相続人それぞれの思い入れや今後の生活設計を考慮することが重要です。そのため、今回の調停では、各相続人の意向をしっかりと聞き取り、それに基づいて調整を行いました。
遺産分割問題は非常にデリケートであり、感情的な対立が生じやすいものです。しかし、第三者の介入による調停という手続きを利用することで、冷静かつ合理的な解決が可能となるケースが多いです。今回の結果は、相談者にとっても他の相続人にとっても満足のいくものであり、迅速な解決を図ることができた点でも非常に良かったと思います。
もし、相続に関する問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談ください。専門家の視点から、最適な解決策をご提案いたします。
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高齢男性の財産管理と療養看護を成年後見人として適切にサポートした事例
相談前の状況
この事例は、高齢の男性Aさんに関するものです。Aさんは認知機能に支障があり、介護施設で療養を続けていました。しかし、家族との関係が疎遠であり、財産管理や療養の状況が適切に行われているか不安が残る状況でした。Aさんには不動産や預金などの資産がありましたが、自分で管理することは困難でした。そのため、親族がAさんの今後を心配し、裁判所に成年後見人を選任するよう申し立てを行いました。
相談後の対応
裁判所から成年後見人に選任された後、まずAさんの財産調査を行いました。預金通帳、不動産の所有状況、保険契約など、すべての資産を確認し、どのように管理するかを検討しました。また、Aさんが療養している介護施設にも足を運び、施設職員からAさんの健康状態や療養看護の状況について確認しました。
Aさんの財産が適切に管理されるように、預金を定期的に確認し、必要な場合には介護施設の費用の支払いなどを滞りなく行うようにしました。また、Aさんがより快適に生活できるように、介護施設に必要な改善提案を行い、看護が行き届いているかチェックしました。
さらに、Aさんの親族とも連絡を取り合い、Aさんの健康状態や財産管理についての進捗を報告しました。これにより、親族の不安を和らげ、安心してAさんを見守ることができるよう努めました。
担当弁護士からのコメント
成年後見人として、財産管理のみならず、成年被後見人の療養看護の状況にも責任を持つことが重要です。この事例では、Aさんの財産調査を行い、適切に管理するだけでなく、介護施設との密な連携を図ることで、Aさんの健康状態や生活環境が改善されるように努めました。また、親族ともコミュニケーションを取ることで、家族の安心感を得られるように配慮しました。成年後見人の役割は多岐にわたりますが、被後見人の生活全体を見守ることが重要であると感じました。
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複雑な相続関係を調査し、代襲相続人として相続放棄を行った事例
相談前の状況
相談者であるAさんは、祖父が亡くなった後、何らかの形で遺産相続に関わることになりそうだという漠然とした不安を抱えていました。しかし、祖父とは長い間疎遠であり、遺産に対する直接的な利害関係もないと感じていたため、積極的に相続手続きに関わりたくないという気持ちが強かったそうです。さらに、祖父が生前にどのような財産や負債を抱えていたのかが全くわからず、相続を受け入れるべきかどうかも判断できない状態でした。
Aさんは祖父の財産が少ない可能性がある一方で、借金が残されているという噂も耳にしており、「もしも相続してしまった場合、負債を引き継いでしまうのではないか」という不安がありました。しかし、相続に関する知識がないため、自分がどのような立場にあるのか、そして実際に相続にどのように関わるのかも分かっていませんでした。
そんな状況の中、Aさんは相続の専門家に相談することが必要だと感じ、当事務所に相談に訪れました。
相談後の対応
当事務所では、まずAさんがどのような立場で相続に関わるのかを明確にするため、相続関係の調査を行うことにしました。この調査により、Aさんが代襲相続人に該当することが判明しました。
代襲相続とは、相続人となるべき人が既に亡くなっている場合に、その子供(孫)が代わりに相続権を引き継ぐ制度です。Aさんの場合、Aさんの父親が既に亡くなっていたため、祖父の相続においてAさんが代襲相続人として法定相続人の一人になることがわかりました。
また、祖父の財産状況についても詳しく調査した結果、祖父は借金を抱えていたことが確認されました。これにより、相続を放棄することが最もリスクを避ける手段であることが明確になりました。
Aさんに対しては、代襲相続人としての権利と義務、そして相続放棄の方法について詳しく説明しました。相続放棄は、家庭裁判所に申立てを行うことで、相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きを進める必要があります。この期限を過ぎてしまうと、相続を受け入れる形になってしまうため、早急に対応することが求められました。
当事務所では、Aさんの意向を尊重し、相続放棄の手続きを迅速に進めました。家庭裁判所への提出書類の準備や必要な証拠書類の収集も全面的にサポートし、無事に相続放棄が認められる結果となりました。
担当弁護士からのコメント
この事例は、一見すると相続に無関係に思える相談者が、実際には代襲相続人として法定相続人の一人であることが判明したケースです。相続関係が複雑になることは少なくなく、特に代襲相続や遠い親族との相続手続きが絡むと、自分がどのような立場にあるのか分かりにくいことがよくあります。
今回のAさんのように、相続放棄を行うことで不要な負債の引き継ぎを避けることができる場合もありますので、相続の際には早めに専門家に相談し、自分の立場を確認することが重要です。また、相続放棄には期限がありますので、迷っている間にその期間を過ぎてしまわないよう、早めの判断が求められます。
当事務所では、複雑な相続関係や代襲相続に関する問題についても専門的なサポートを提供しております。相続に関して不安や疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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自筆証書遺言作成のサポートと遺留分対策で、祭祀承継の不安を解消
相談前の状況
相談者は高齢の女性、Aさん。彼には複数の相続人となる子どもたちがいるものの、子どもたちとは疎遠な関係が続いていました。Aさんは、死後の自身の祭祀(お墓の管理や供養)を孫が引き継ぐことを望んでいたものの、他の相続人たちがこの役割を担うことに反対するのではないかと心配していました。また、Aさんは、相続財産の分割についても懸念を抱いていました。
特にAさんが気にしていたのは、相続人間で遺留分(相続人が法的に補償されている最低限の財産分与)の問題が発生することです。もし遺言を作成しないまま亡くなった場合、遺産分割の際に相続人たちの間でトラブルが生じる可能性があると考えていました。こうした相続争いを避けるためにも、遺言を作成し、具体的な遺産分割の方法を明確にしておきたいと考えましたが、どのように進めるべきかが分からず、弁護士に相談することにしました。
相談後の対応
Aさんの相談を受け、当事務所の弁護士はまず、Aさんが望んでいる「祭祀承継者」の明確化と、相続人間の争いを避けるための具体的な遺言作成のサポートを行いました。Aさんが希望する通り、孫が祭祀承継者となることを自筆証書遺言に明記しました。祭祀承継者は法的な相続権とは別に、死後の供養やお墓の管理を担う重要な役割であり、これを明確にすることでAさんの不安を解消することができました。
次に、相続財産の分割案についても話し合いを進めました。Aさんは、孫が祭祀承継者であることを考慮し、彼に多くの不動産を遺贈したいと考えていましたが、他の子どもたちが遺留分を主張することで争いが起こる可能性を懸念していました。そこで弁護士は、遺留分に配慮した遺産分割案を提案しました。この案では、遺留分を侵害しない範囲で財産を配分し、他の相続人に対しても一定の財産を分配する内容となっていました。これにより、遺留分による紛争を予防しつつ、Aさんの希望に沿った形で遺産分割を行うことが可能となりました。
さらに、Aさんの遺言には特定の条項を設けることで、相続人間の無用な争いを避けるための対策も盛り込みました。具体的には、万が一遺留分の請求があった場合でも、話し合いによる解決を図ることを推奨する条項や、仲裁人を指定する条項を追加しました。これにより、将来の相続争いを未然に防ぐための法的な手続きが整備されました。
最終的に、Aさんの自筆証書遺言は法的に有効な形で完成しました。Aさんは、自身の希望が具体的な形で遺言に反映されたことで、安心感を得ることができました。また、祭祀承継や相続争いについての不安も軽減されました。
担当弁護士からのコメント
今回のケースでは、相談者であるAさんが抱いていた「死後の祭祀承継」と「相続人間での遺留分争い」という二つの懸念に対して、遺言の作成を通じて適切な対応を行いました。祭祀承継者の指定は、相続において見落とされがちですが、非常に重要なポイントです。特に、相続人間の関係が疎遠な場合や、特定の相続人に祭祀を託したい場合は、遺言書で明確にしておくことが重要です。
また、遺留分に関しても、あらかじめ相続人全員に一定の財産を配分することで、紛争を未然に防ぐことができます。遺言を作成する際には、相談者の希望に基づきつつ、法律の範囲内で最も適切な分割方法を提案することが弁護士の役割です。今回のように、しっかりとした遺言書を作成することで、相続に関する不安や争いを大幅に減らすことが可能です。
遺言書の作成は、早めに取り組むことが重要です。相続に関する不安を抱えている方は、一度ご相談いただくことで、将来のトラブルを未然に防ぐための適切なアドバイスが得られるかと思います。
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