平成30年改正「法務局における自筆証書遺言書保管制度の創設」(令和2年7月10日施行)

平成30年改正「法務局における自筆証書遺言書保管制度の創設」(令和2年7月10日施行)

【執筆】弁護士 母壁 明日香(茨城県弁護士会所属)

Point!
全国 300か所以上の法務局(本局・支局)で、自筆証書遺言を保管できるようになりました。遺言書保管所で保管された遺言書については、家庭裁判所での検認が不要となります。

遺言について

遺言とは、自分が死亡したときに財産をどのように分配するか等について、自己の最終意思を明らかにするものです。遺言がある場合には、原則として、遺言者の意思に従った遺産の分配がされます。

また、遺言がないと相続人に対して財産が承継されることになりますが、遺言の中で、日頃からお世話になった方に一定の財産を与える旨(遺贈)を書いておけば、相続人以外の方に対しても財産を取得させることができます。

このように、遺言は、被相続人の最終意思を実現するものですが、これにより相続をめぐる紛争を事前に防止することができるというメリットもあります。また、家族の在り方が多様化する中で、遺言が果たす役割はますます重要になってきています。

我が国においては、遺言の作成率が諸外国に比べて低いといわれていますが、今回の改正により、自筆証書遺言の方式を緩和し、また、 法務局における保管制度を設けるなどされ、自筆証書遺言が使いやすくなりました。

遺言の方式

遺言の方式には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、軽易な方式の遺言であり、自書能力さえ備わっていれば他人の力を借りることなく、いつでも自らの意思に従って作成することができ、手軽かつ自由度の高い制度です。今回の改正により、財産目録については自書しなくてもよくなり、 また、法務局における保管制度も創設され、自筆証書遺言が更に利用しやすくなりました。

公正証書遺言

公正証書遺言は、法律専門家である公証人の関与の下で、二人以上の証人が立ち会うなど厳格な方式に従って作成され、公証人がその原本を厳重に保管するという信頼性の高い制度です。また、遺言者は、遺言の内容について公証人の助言を受けながら、 最善の遺言を作成することができます。また、遺言能力の確認なども行われます。

法務局における自筆証書遺言書保管制度

制度のメリット

自筆証書遺言が法務局において適正に管理・保管される

遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。

また、遺言書は、原本に加え、画像データとしても長期間適正に管理されます(原本:遺言者死亡後50年間、画像データ:同150年間)。

そのため、

  • 遺言書の紛失・亡失のおそれがありません。
  • 相続人等の利害関係者による遺言書の破棄、隠匿、改ざん等を防ぐことができます。

イ 相続開始後、家庭裁判所における検認が不要となる

ウ 相続開始後、相続人等は法務局において遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付が受けられる

遺言書をデータでも管理しているため、遺言書の原本が保管されている遺言書保管所にかかわらず、全国どこの法務局においても、データによる遺言書の閲覧や、遺言書情報証明書の交付が受けられます(遺言書の原本は、原本を保管している遺言書保管所においてしか閲覧できません。)。

エ 通知が届く

  • 関係遺言書保管通知

相続人の一人が、遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けたりした場合、その他の相続人全員に対して、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨の通知が届きます。

  • 死亡時通知

遺言者があらかじめこの通知を希望している場合、その通知対象となった者(遺言者1名につき、一人のみ)に対しては、遺言書保管所において、法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に、相続人等の閲覧等を待たずに、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨の通知が届きます。

法務省HP
自筆証書遺言書保管制度|10 通知

注意事項

  • 自筆証書遺言を法務局で保管するためには、遺言者本人が法務局へ行く必要があります。そのため、遺言者が施設に入所している、病院に入院しているなどの場合には、法務局に行くことができないため、法務局での保管申請をすることはできません(このような場合には、公正証書遺言の作成を検討しましょう。)。
  • 法務局では遺言の内容についての相談はできません。不明な点等がある場合は、弁護士などの専門家に相談いただくことをお勧めいたします。
  • 本制度は、自筆証書遺言の客観的要件(日付、押印など)は確認してくれますが、遺言書の内容や遺言能力の有無(遺言の内容を理解し、遺言の結果を認識する能力)については、確認してくれません。すなわち、本制度は、保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。
    そのため、自筆証書遺言の保管制度を利用したい場合には、弁護士等などの専門家に相談をした上で、内容に問題がないか確認をすることをお勧めいたします。

遺言者の手続き

遺言者は、以下の手続きをすることができます。

ア 遺言書の保管の申請

遺言書保管所(法務局)へ自身で作成した自筆証書遺言に係る遺言書を預けることができます。

イ 遺言書の閲覧(モニター/原本)の請求

預けた遺言書を見ることができます。

ウ 遺言書の保管の申請の撤回

預けた遺言書を返還してもらうことができます。

エ 変更の届出

遺言書を預けた時点以降に生じた自身の住所・氏名その他事項の変更を遺言書保管所(法務局)に届け出ることができます。

法務省HP
自筆証書遺言書保管制度|02 遺言者の手続
自筆証書遺言書保管制度|03 遺言書の様式等についての注意事項
自筆証書遺言書保管制度|09 手数料

相続人等の手続き

相続人等は主に以下の3つの手続きをすることができます。

ア 遺言書保管事実証明書の交付の請求

ご家族やお知り合い等が作成した遺言書で、自分を相続人や受遺者等・遺言執行者等とする遺言書が遺言書保管所(法務局)へ預けられているかどうかを確認することができます。

イ 遺言書情報証明書の交付の請求

相続人等に関係する遺言書の内容の証明書を取得することができます。

ウ 遺言書の閲覧(モニター/原本)の請求

相続人等に関係する遺言書を見ることができます。

法務省HP
自筆証書遺言書保管制度|04 相続人等の手続き
自筆証書遺言書保管制度|09 手数料

遺言書保管所の管轄

遺言書の保管の申請は、次の3つのいずれかを担当する遺言書保管所に行います。

  1. 遺言者の住所地
  2. 遺言者の本籍地
  3. 遺言者の所有する不動産の所在地

※ 上記のいずれかの遺言書保管所に、遺言書の保管の申請を行い遺言書が保管されると、遺言書原本は、その遺言書保管所に保管されているので、遺言書原本の閲覧や遺言書の保管の申請の撤回をする場合、必ずその遺言書保管所で行うこととなります。

※2通目以降、追加で遺言書の保管の申請をする場合も、同じ遺言書保管所に対して申請しなければなりません。

法務省HP
07 管轄/遺言書保管所一覧|全国の遺言書保管所の一覧及びその管轄

施行日

本制度は、令和2年7月10日から施行されましたが、それ以前に作成された遺言書も、所定の様式を満たしていれば、保管することができます。なお、平成31年1月12日以前に作成された遺言書の財産目録は、自書で作成されている必要があります。

法務省HP
自筆証書遺言書保管制度|よくあるご質問

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