【執筆】弁護士 母壁 明日香(茨城県弁護士会所属)
Point!
遺言により、法定相続分より多い額を相続した場合、登記などの対抗要件を備えないと、所有権について第三者に対抗できなくなりました。
<改正前>
相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記なくして第三者に対抗することができるとされていました。
そのため、遺言の内容を知り得ない相続債権者等の利益を害することとなっていました。
①の処分の類型 | 遺産分割 | 遺贈 | 相続させる旨の遺言 ※相続させる旨の遺言による権利の承継は、登記なくして第三者に対抗することができる(判例)。 |
①と②の優劣 | 登記の先後 | 登記の先後 | 常に①が優先 |
上記の結論は、
- 遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益を害する。
- 登記制度や強制執行制度の信頼を害するおそれがある。
<改正後>
相続させる旨の遺言についても、法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を具備しなければ、所有権について債務者・第三者に対抗することができないこととなりました(民法899条の2第1項)。
①の処分の類型 | 遺産分割 | 遺贈 | 相続させる旨の遺言 |
①と②の優劣 | 登記の先後 | 登記の先後 | 登記の先後 |
これにより、遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益や第三者の取引の安全を確保するとともに、登記制度や強制執行制度の信頼を確保することにもなります。