令和3年改正「民法のルールの見直し② 共有制度の見直し」(令和5年4月1日施行)

【執筆】弁護士 母壁 明日香(茨城県弁護士会所属)

民法ルールの見直し

所有者不明土地については、調査を尽くしても土地の所有者が特定できず、又は所在が不明な場合には、土地の円滑な利用や管理が困難です。

また、所有者不明土地問題を契機に、現行民法の規律が現代の社会経済情勢にそぐわないことが顕在化してきました。

そこで、民法のルールについて、以下のような見直しがなされました。

2 共有制度の見直し

(1)共有物の利用促進

ア 共有物の変更・管理に関する見直し

現行法では、各共有者は、持分に応じて共有物を使用することができます(現民法249条)が、共有者相互の関係を調整するため、次のルールが定められています。このルールは、相続によって遺産に属する財産が相続人に共有されている場合(遺産共有)にも適用されます。

  • ① 共有物に変更を加える(農地→宅地など)には、共有者全員の同意を要する(現民法251条)
  • ② 管理に関する事項(使用する共有者の決定など)は、各共有者の持分の過半数で決する(現民法252条本文)
  • ③ 保存行為(補修など)は、各共有者が単独ですることができる(現民法252条但書)

他方で、相続未登記状態にある土地について戸籍等を調査した結果、数次相続により相続人が多数に上ることや相続人の一部の所在等が不明となっていることが判明することがあります。そうすると、変更・管理に必要な同意を取り付けることが困難で、土地の利用に支障を来します。このような場合の対処方法として共有関係の解消(共有物分割訴訟など)がありますが、手続上の負担は軽くありませんでした。

また、現行法制定後120年以上の間の社会経済情勢の変化に伴い、共有者が土地の所在地から遠く離れていたり、共有者間の人的関係が希薄化したりして、共有者間で決定を得ることが困難になることもありました。

これらの問題は、相続された土地に限らず、共有物一般に発生し得るため、共有関係を解消しないままであっても、共有物の円滑な利用を可能にすることが重要です。すなわち、民法の共有物の変更・管理の規定を、社会経済情勢の変化に合わせて合理的なものに改正する必要がありました。

そこで、改正法では、

  • 共有物の「管理」の範囲の拡大・明確化(新民法251条、252条)
  • 共有物を使用する共有者がいる場合のルールの明確化・合理化(新民法249条、252条)
  • 賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理に関するルールの合理化(新民法252条2項)
  • 所在等不明共有者がいる場合の変更・管理に関するルールの合理化(新民法251条2項、252条2項)
  • 共有者が選任する共有物の管理者のルールの整備(新民法251条、252条の2)
  • 共有の規定と遺産共有持分に関するルールの整備(新民法898条2項)

がなされました。以下では、各制度を詳しく説明します。

イ 共有物の「管理」の範囲の拡大・明確化

現行法の問題点

現行法上は、共有物に軽微な変更を加える場合であっても、変更行為として共有者全員の同意が必要(現民法251条)と扱わざるを得ず、円滑な利用・管理を阻害していました。

また、賃借権等の使用収益権の設定は、基本的に持分の過半数で決定できますが、長期間の賃借権等については全員同意が必要と解されており、長期間かどうかの判断基準が明確でなく、実務上、慎重を期して全員同意を求めざるを得ないため、円滑な利用を阻害していました。

改正法

1 軽微変更についての規律の整備

共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の過半数で決定することができます(新民法251条1項、252条1項)。

※「形状の変更」とは、その外観、構造等を変更することをいい、「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することをいいます。具体的事案によりますが、例えば、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると考えられます。

【改正法における共有物の変更・管理・保存概念の整理】

管理(最広義)の種類 根拠条文 同意要件
変更(軽微以外) 民法251条1項 共有者全員
管理(広義)

変更(軽微)

民法251条1項
民法252条1項
持分の過半数
管理(狭義) 民法252条1項  
保存 民法252条5項 共有者単独

2 短期賃借権等の設定についての規律の整備

以下の〔 〕内の期間を超えない短期の賃借権等の設定は、持分の過半数で決定することができます(新民法252条4項)。

(1)樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃借権等 〔10年〕
(2)(1)に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 〔5年〕
(3)建物の賃借権等 〔3年〕
(4)動産の賃借権等 〔6か月〕

借地借家法の適用のある賃借権の設定は、約定された期間内での終了が確保されないため、基本的に共有者全員の同意がなければ無効となります。
ただし、一時使用目的(借地借家法25条、40条)や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借(借地借家法38条1項)については、持分の過半数の決定により可能ですが、契約において、更新がないことなど所定の期間内に賃貸借が終了することを明確にする工夫が必要となります。

ウ 共有物を使用する共有者がいる場合のルール

現行法の問題点

現行法では、共有物を使用する共有者がいる場合に、その共有者の同意がなくても、持分の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できるかは明確ではありません。そのため、無断で共有物を使用している共有者がいる場合に、他の共有者が共有物を使用することは事実上困難となっていました。

また、各共有者はその持分に応じて共有物を使用することができますが(現民法249条)、共有物を使用する共有者は、他の共有者との関係でどのような義務を負うのかが明確ではなく、共有者間における無用な紛争を惹起するおそれがありました。

改正法

1 管理に関する事項の決定方法

○ 共有物を使用する共有者がある場合でも、持分の過半数で管理に関する事項を決定することができます(新民法252条1項後段)。

共有者間の定めがないまま共有物を使用する共有者の同意なく、持分の過半数でそれ以外の共有者に使用させる旨を決定することも当然に可能となります。

※ 配偶者居住権が成立している場合には、他の共有者は、持分の過半数により使用者を決定しても、別途消滅の要件を満たさない限り配偶者居住権は存続し(民法1032条4項、1038条3項参照)、配偶者居住権を消滅させることはできません。また、共有者間の決定に基づき第三者に短期の賃借権等を設定している場合に、持分の過半数で当該賃貸借契約等の解約を決定したとしても、別途解除等の消滅の要件を満たさない限り賃借権等は存続します。

○ 管理に関する事項の決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響(※)を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければなりません(新民法252条3項)。

※ 「特別の影響」とは、対象となる共有物の性質に応じて、決定の変更等をする必要性と、その変更等によって共有物を使用する共有者に生ずる不利益とを比較して、共有物を使用する共有者に受任すべき程度を超えて不利益を生じさせることをいい、その有無は、具体的事案に応じて判断されます。

例)A、B及びCが各3分の1の持分で建物を共有している場合において、過半数の決定に基づいてAが当該建物を住居として使用しているが、Aが他に住居を探すのが容易ではなく、Bが他の建物を利用することも可能であるにもかかわらず、B及びCの賛成によって、Bに当該建物を事務所として使用させる旨を決定するケース

2 共有物を使用する共有者の義務

  • 共有物を使用する共有者は、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います。ただし、共有者間で無償と するなどの別段の合意がある場合には、その合意に従うこととなります(新民法249条2項)。
  • 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければなりません(新民法249条3項)。

エ 賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理

現行法の問題点

社会経済活動の広域化、国際化等の社会経済情勢の変化に伴い、共有者が共有物から遠く離れて居住・活動していることや共有者間の人的関係が希薄化することが増加しています。

そのため、共有物の管理に関心を持たず、連絡をとっても明確な返答をしない共有者がいる場合には、共有物の管理が困難になっていました。

改正法

賛否を明らかにしない共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができます(新民法252条2項2号)。

変更行為や賛否を明らかにしない共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)には、利用することができません
※ 賛否を明らかにしない共有者の持分が、他の共有者の持分を超えている場合や、複数の共有者が賛否を明らかにしない場合であっても、利用することができます。

手続きの流れ

① 事前の催告

共有者が、他の共有者(複数でも可)に対し、相当の期間(通常は2週間程度)を定め、決定しようとする管理事項を示した上で、賛否を明らかにすべき旨を催告

※ 催告の方法に法律上制限はないが、裁判で証明する観点から、書面等で行って証拠化しておくことも重要

② 申立て・証拠提出

  • 管轄裁判所:共有物の所在地の地方裁判所
  • 賛否不明の証明:事前催告に対して対象共有者が賛否を明らかにしないことの証明が必要
  • 対象行為の特定:決定しようとする管理事項を特定する必要

③ 1ヶ月以上の賛否明示期間・通知

  • 裁判所が対象共有者に対して賛否明示期間内に賛否を明らかにすべき旨を通知
  • 賛否を明らかにした共有者がいる場合には、裁判所は、その共有者については認容決定ができない(後の共有者間の決定においてその共有者を排除することができない)

④ 他の共有者の同意で管理をすることができる旨の決定

⑤ 共有者間での決定

例)A、B、C、D、E共有(持分各5分の1) の砂利道につき、A・Bがアスファルト舗装をすること(軽微変更=管理)について他の共有者に事前催告をしたが、D・Eは賛否を明らかにせず、Cは反対した場合には、裁判所の決定を得た上で、AとBは、アスファルト舗装をすることができる(A、B、Cの持分の過半数である3分の2の決定)。

※ 賛否を明らかにしない共有者に加えて所在等不明共有者がいるときは、この手続と併せて別の手続もとることで、それ以外の共有者の決定で管理をすることが可能

オ 所在等不明共有者がいる場合の変更・管理

現行法の問題点

所在等不明共有者(必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明な共有者)がいる場合には、その所在等不明共有者の同意を得ることができず、共有物に変更を加えることについて、共有者全員の同意を得ることができません。

また、管理に関する事項についても、所在等不明共有者以外の共有者の持分が過半数に及ばないケースなどでは、決定ができませんでした。

改正法

所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、

  • 所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加えることができます(新民法251条2項)。
  • 所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができます(新民法252条2項1号)。

※ 所在等不明共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)には、利用することができません

※ 所在等不明共有者の持分が、所在等不明共有者以外の共有者の持分を超えている場合や、複数の共有者が所在不明の場合であっても、利用可能です。

手続きの流れ

① 申立て・証拠提出

  • 管轄裁判所:共有物の所在地の地方裁判所
  • 所在等不明の証明:例えば、不動産の場合には、裁判所に対し、登記簿上共有者の氏名等や所在が不明であるだけではなく、住民票調査など必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明であることを証明することが必要
  • 対象行為の特定:加えようとしている変更や、決定しようとする管理事項を特定 して申立てをする必要

② 1ヶ月以上の異議届出期間・公告の実施

③ 他の共有者の同意で変更・管理をすることができる旨の決定

④ 共有者間での意思決定

例1)A、B、C、D、E共有の土地につき、必要な調査を尽くしてもC、D、Eの所在が不明である場合には、裁判所の決定を得た上で、AとBは、第三者に対し、建物所有目的で土地を賃貸すること(変更)ができる(A・Bの全員同意)。 例2 A、B、C、D、E共有(持分各5分の1)の建物につき、必要な調査を尽くしてもD、Eの所在が不明である場合には、裁判所の決定を得た上で、AとBは、第三者に対し、賃借期間3年以下の定期建物賃貸借をすること(管理)ができる(A、B、Cの持分の過半数である3分の2の決定)。

カ 共有物の管理者/共有の規定と遺産共有持分

共有物の管理者

共有物に管理者を選任し、管理を委ねることができれば、共有物の円滑な管理の観点から有用です。もっとも、現行法には管理者に関する明文規定がないため、選任の要件や権限の内容が判然としませんでした。

そこで、改正法では、

  • ① 管理者の選任・解任は、共有物の管理のルールに従い、共有者の持分の過半数で決定できることとなりました(新民法252条1項)。共有者以外を管理者とすることも可能です。
  • ② また、管理者は、管理に関する行為(軽微変更を含む)をすることができます。軽微でない変更を加えるには、共有者全員の同意を得なければなりません(新民法252条の2第1項)。

※ 所在等不明共有者がいる場合には、管理者の申立てにより裁判所の決定を得た上で、所在等不明共有者以外の共有者の同意を得て、変更を加えることが可能です。

  • ③ 管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決定した場合には、これに従ってその職務を行わなければなりません(新民法252条の2第3項)。

※ 違反すると共有者に対して効力を生じませんが、善意(決定に反することを知らない)の第三者には無効を対抗することができません。

(活用例)
共有物の使用者が決定していないケースで、管理者が第三者に賃貸したりするなどして使用方法を決定 共有者が使用する共有者を決定していたのに、管理者が決定に反して第三者に賃貸した場合には、前記③※により善意者を保護

共有の規定と遺産共有持分

現行法では、共有に関する規定は、持分の割合に応じたルールを定めていますが、相続により発生した遺産共有では、法定相続分・指定相続分と、具体的相続分のいずれが基準となるのか不明確でした。

そこで、改正法では、遺産共有状態にある共有物に共有に関する規定を適用するときは、法定相続分(相続分の指定があるケースは、指定相続分)により算定した持分を基準とすることが明記されました(新民法898条2項)。

(例)遺産として土地があり、A、B、Cが相続人(法定相続分各3分の1)であるケースでは、土地の管理に関する事項は、具体的相続分の割合に関係なく、A・Bの同意により決定することが可能

(2)共有関係の解消促進

ア 裁判による共有物分割

現行法の問題点

現物分割
共有物を共有持分割合に応じて物理的に分ける方法 競売分割:共有物を競売により第三者に売却し、売却代金を共有持分割合に応じて共有者で分ける方法 賠償分割:共有物を共有者の一人(又は複数)の所有にし、共有物を取得した者が他の共有者に代償金を支払う方法

現行法上、裁判による共有物の分割方法として、現物分割と競売分割が挙げられており、裁判所はまず現物分割の可否について検討した上で、現物分割が困難な場合に競売分割を命ずることができるとされています(現民法258条2項)。

判例では、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を金銭で支払わせる、いわゆる賠償分割(全面的価格賠償)をすることも許容されています(最判平成8年10月31日民集50巻9号2563頁)。

もっとも、賠償分割についての明文の規定がないため、分割方法の検討順序に関する当事者の予測可能性が確保されていません。また、賠償分割を行う際には、実務上、現物取得者の支払を確保するために、裁判所が現物取得者に対して取得持分に相当する金銭の支払を命ずるなどの措置が講じられていますが、明文の根拠規定がなく運用の安定性を欠いていました。

改正法

① 賠償分割に関する規律の整備

裁判による共有物分割の方法として、賠償分割(「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」)が可能であることが明文化されました(新民法258条2項)。

また、①現物分割・賠償分割のいずれもできない場合、又は②分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがある場合(現物分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがあり、賠償分割もできない場合)に、競売分割を行うこととして、検討順序が明確化されました(新民法258条3項)

② 給付命令に関する規律の整備

裁判所が、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができることが明文化されました(新民法258条4項)。

※ 賠償金取得者が同時履行の抗弁を主張しない場合であっても、共有物分割訴訟の非訟事件的性格(形式的形成訴訟)から、裁判所の裁量で引換給付を命ずることも可能です。

※ この他に、共有物の分割について共有者間で協議をすることができない場合(例:共有者の一部が不特定・所在不明である場合)においても、裁判による共有物分割をすることができることが明確化されました(新民法258条1項)。

イ 所在等不明共有者の不動産の持分の取得

現行法の問題点

【現行法で共有者が他の共有者の持分を取得する方法】
① 裁判所の判決による共有物分割
② 共有者全員の協議(合意)による共有物分割
③ 他の共有者から任意で持分の譲渡を受ける

現行法上、共有者が所在不明のケースでは、①判決による共有物分割は可能ですが、全ての共有者を当事者として訴えを提起しなければならないなど、手続上の負担は小さくありませんでした。

また、②合意による共有物分割、③任意譲渡は、不在者財産管理人等の選任を経ない限り不可能で、管理人の報酬等に要する費用負担が問題となっていました。

さらに、共有者の氏名等が不特定のケースは、現行法では対応ができませんでした。

改正法

共有者は、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者(氏名等不特定を含む) の不動産の持分を取得することができます(新民法262条の2)。

所在不明共有者は、持分を取得した共有者に対する時価相当額請求権を取得します(実際には、供託金から支払を受けることとなります。差額がある場合は、別途訴訟を提起するなどして請求することが可能です)。

なお、遺産共有のケースでは、相続開始から10年を経過しなければ、利用することができません(新民法262条の2第3項)。

手続きの流れ

① 申立て・証拠提出

  • 管轄裁判所:不動産の所在地の地方裁判所

② 異議届出期間等の公告・登記簿上の共有者への通知

  • 所在等不明共有者の異議:所在等不明共有者が異議の届出をして所在等が判明すれば、裁判の申立ては却下。異議届出期間経過後であっても裁判前であれば届出が可能
  • 申立人以外の共有者の異議:異議届出期間満了前に、共有物分割の訴えが提起され、かつ、異議の届出があれば、その訴訟が優先し、持分取得の裁判の申立ては却下

③ 3ヶ月以上の異議届出期間等の経過

  • 供託命令:具体的な金額は裁判所が決定
  • 供託金に関する消滅時効:申立人が持分を取得し、所在等不明共有者が現れないまま供託金還付請求権が消滅時効にかかった場合には、供託金は確定的に国庫に帰属

④ 時価相当額の金銭の供託

⑤ 取得の裁判

  • 持分の取得時期:申立人が持分を取得するのは、裁判の確定時

ウ 所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡

現行法の問題点

不動産の共有持分を売却して得る代金よりも、不動産全体を売却し、持分に応じて受け取る代金の方が高額になりやすいのですが、所在等不明共有者(必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明な共有者)がいる場合、不動産全体を売却することは不可能でした。

共有物分割や持分取得制度により、所在等不明共有者の持分を他の共有者に移転し、共有物全体を売却することができますが、売却した上で代金を按分することを予定しているのに、共有者に持分を一旦移転するのは迂遠であり、手間や費用を要することとなっていました。

改正法

裁判所の決定によって、申立てをした共有者に、所在等不明共有者の不動産の持分を譲渡する権限を付与する制度が創設されました(新民法262条の3)。

譲渡権限は、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を譲渡することを停止条件とするものであり、不動産全体を特定の第三者に譲渡するケースでのみ行使可能です(一部の共有者が持分の譲渡を拒む場合には、条件が成就せず、譲渡をすることができません)。

所在等不明共有者の持分は、直接、譲渡の相手方に移転します(申立てをした共有者がいったん取得するものではありません)。

所在不明共有者は、譲渡権限を行使した共有者に対する不動産の時価相当額のうち持分に応じた額の支払請求権を取得します(実際には供託金から支払を受けることとなります。実際の時価に応じた額が供託金より高額である場合には、別途訴訟を提起するなどして請求することが可能です)。

なお、遺産共有のケースでは、相続開始から10年を経過しなければ、利用することができません(新民法262条の3第2項)。

また、不動産の譲渡には、裁判を得た上で、別途、裁判外での売買契約等の譲渡行為が必要となります。譲渡行為は、裁判の効力発生時(即時抗告期間の経過などにより裁判が確定した時)から原則2か月以内(裁判所が伸長することは可能です)にしなければなりません。

手続きの流れ

(例)土地の共有者A、B、CのうちCが所在不明である場合に、Aの申立てにより土地全体を第三者に売却するケース

① Aによる申立て・証拠提出

  • 管轄裁判所:不動産の所在地の地方裁判所
  • 所在等不明の証明が必要

② 3ヶ月以上の異議届出期間・公告の実施

③ 時価相当額を持分に応じて按分した額の供託

  • 時価の算定にあたっては、第三者に売却する際に見込まれる売却額等を考慮

④ C持分の譲渡権限をAに付与する裁判

⑤ A・B→第三者 土地全体を売却

  • 誰に、いくらで譲渡するかは、所在等不明共有者以外の共有者の判断による

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